さあ、見張りを立てよ

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制作 : Harper Lee  上岡 伸雄 
  • 早川書房 (2016年12月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096609

さあ、見張りを立てよの感想・レビュー・書評

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  • 「偏見というと汚い言葉だし、信仰というときれいな言葉だが、これらには共通点がある。どちらも理性が終わったところで始まるんだよ」

    「アラバマ物語」の続編。
    「アラバマ物語」を読んだのは数年前で、黒人差別との戦いを描いており、良い小説だとは思うものの、結局虐げられた黒人達は「善き白人男性」の引き立て役じゃない?という気持ちが拭えなかったし、今もアメリカで愛されているというのも、もちろん差別を許さないというところが大きいのだろうけど、読み手はいい気分になれるよね…とも思った(私が最も優れていると思うのは、主人公の魅力的な子供時代の描き方だ)。
    続編であるこちらを読み終え、実は半世紀過ぎて新たに書いたのではなくて「アラバマ物語」と同時に書かれていたが、売れないからとカットされたという解説で色々なことが腑に落ちた気がする。
    主人公は大人になり、ニューヨークで暮らしているが、実家に帰省して町も周囲の人々も、敬愛する父までも、自分が思っていたのとは異なる面を持っていると気づく。
    描かれているのは、強固な拠り所の喪失だ。
    主人公は父と神と生まれた町を失う。
    それは世界がひっくり返るようなことだ。
    しかし、それは多かれ少なかれ誰にも訪れる(べき)もので、それを経てようやく自分の足で歩き出すことが出来るのだ。
    ようやくこの作品が世に出たというのは、ある点では進歩だが、また違った混迷の時代である証でもある。
    しかし読者も拠り所に頼らず自ら踏み出すことが出来ると、きっと作者は信じて送り出したのだと思った。

    「アラバマ物語」は実はカポーティが好きだから読んだのだけど(作者がカポーティの幼馴染みで、カポーティをモデルにした少年ディルが登場する)、こちらにも回想でちょこちょこディルが出て来てくれる+カポーティ本人のエピソードも一つ入っていて嬉しい。

  • 最後の展開は何?

  • ニューヨークで暮らす主人公が、南部の田舎町に帰省してくる。
    故郷の町では昔と変わらず人が暮らしており、人種差別的な匂いもしている。
    ただ、違いは主人公を取り巻く人たちが、歳をとったということ。

    南部の田舎町を描いた作品には似たような匂いがする作品が多い。でもそのなか本書にはなぜか既視感が強かった。
    その時頭に浮かんでいたのは、アラバマ物語という名前。
    そして、あとがきをよんで疑問が氷解。アラバマ物語の20年後を描いた作品と書いてあった。よく見れば、表紙カバーの折り返しにも...

    人種隔離政策が制度として廃止されていく中、南部人たちが心情的にどのように考え、また、それに対しニューヨークで暮らしていた主人公がどのように感じたか。
    そして、登場人物たちが、どのようにその感情の溝を乗り越えようとしているかといったことが伝わってくるような気がした。

    ちなみにこの作品はもともとアラバマ物語の20年後を描くという構想から書かれた作品ではなく、アラバマ物語を推敲する際に放棄された原稿をまとめた失われた物語であるということ。
    頭の中にアラバマ物語が浮かんだのも、当然の話であった。

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さあ、見張りを立てよの作品紹介

アラバマ州メイコムに帰省したジーン・ルイーズは、生まれ育った町と愛する家族の苦い事実を知るのだった。全米を大論争に巻き込んだ、アメリカ文学の最高傑作『アラバマ物語』著者の未発表長篇

さあ、見張りを立てよのKindle版

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