情報と秩序:原子から経済までを動かす根本原理を求めて

  • 早川書房
3.96
  • (10)
  • (5)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 160
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096838

作品紹介・あらすじ

経済成長を情報成長ととらえ、経済学にネットワーク科学を組み合わせたアプローチの、「経済複雑性指標」なる予測力の高い手法で注目された、WIRED誌「世界を変える50人」に数えられた気鋭の研究者が説く、斬新な切り口で「成長」を理解するための科学解説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • MITの「メディアラボらしい」本でした。仮にこの本の著者がわからず読んでも、「メディアラボ」の人が書いたのでは?と思わせるような臭いを発していました。本書は通常の経済成長・経済発展理論の本とは全く異なり、経済学、物理学、情報学のような複数の分野にまたがる非常に興味深い視野を提供してくれています。あえて経済学との関係で言えば、ヒダルゴ氏も述べているように、産業連関表を確立した経済学者ワシリー・レオンチェフのエッセンスを持っていると言えるかもしれません。経済発展理論の正統派(ソロー、ローマー、ルーカスの流れ)は、マクロの集計値(GDP等)を使って経済成長を説明しようとしますが、レオンチェフの産業連関表は一国経済の産業の多様性に着目し、その連関の強弱こそが違いを生み出している(経済波及効果の乗数の大小を決める)という点を強調します。その意味でヒダルゴ氏の「経済複雑性指標」も一国経済内の製品の多様性、そして各製品の普遍性に着目しているという点で、レオンチェフと思考の根っこではつながっているという印象を受けました。

    本書を読んで心に浮かんだ疑問は、現在進行中のデジタル革命は、この複雑性指標にどんな影響を及ぼしているのだろうか、というものです。テスラ社による電気自動車は、自動車のもつ複雑性をガラッと変えてしまいました(おそらく複雑性を低めたし、関係する業界、専門性をガラッと一変してしまった)。ヒダルゴ氏のフレームワークで言うと、自動車の複雑性が低下しているのであれば、自動車が「普遍性」を高めているだけであって、今後は別の製品・サービスがより複雑な製品の地位を引き継ぐだけである、ということなのかもしれません。本書、書かれていることが正しいのかどうかは脇に置いておいても、いろいろと考えさせてくれるという意味で大変気に入りました。

  • ケビンケリーのテクニウムの話と通じるところがあると感じた。物質が持つ、計算能力。情報とは秩序。最後の章がまとめになっていて、理解の一助となった。

  • 本来、情報は物理的なものだ。ボルツマンの原子やその運動エネルギーと同じくらい、物理的な意味を持つのだ。確かに、情報は触れない。固体でも液体でもない。情報の粒子があるわけでもない。それでも、同じく固有の粒子を持たない運動や温度と同じくらい物理的なものだ。情報は実体を持たないが、いつでも物理的に具象化されている。情報はモノではない。むしろ、物理的なモノの「配列」、つまり物理的秩序といえる。p19

    経済とは、人々が知識やノウハウを蓄積して物理的秩序(つまり製品)を生み出し、知識やノウハウ、ひいては情報をいっそう蓄積していく能力を増強するためのシステムなのである。p35

    人間はコミュニケーションのためだけではなく、お互いの能力を増強するために情報を具象化する。そのために、モノを通じて、知識、ノウハウ、想像力の実用的用途を利用できるようにするわけだ。p108

    知識やノウハウの広がりは、国家のモノ作り能力の差につながる。そしてモノ作り能力の差とは、実際には情報を成長させる能力の差のことなのだ。p172

    21世紀を迎えた時点で、私たちは5つの要素で経済成長を理解するようになったー物的資本、人的資本、社会関係資本(これには社会制度も含まれる)、土地(鉱物資源、気候、海洋アクセスなどの地理的要因も含まれる)、労働(つまり人々)である。p198

    ひとりが具象化できる知識やノウハウんの最大量のことを1パーソンバイトと呼んだ。
    パーソンバイト理論は、ある経済活動の複雑さと、その経済活動の実行に必要な社会的ネットワークや職業的ネットワークの規模とのあいだに関係があることを示している。より多くの知識やノウハウが必要な活動を実行するには、それだけ巨大なネットワークが必要になる。この関係から、地球上の産業の構造と発展が説明できる。パーソンバイト理論は、次のことを示唆している。①単純な経済活動ほど多くの場所で見られる。②複雑な経済活動を実行できるのは多様化した経済だけである。③国々は関連する製品へと多様化していく。④長期的に見ると、ある地域の所得水準はその経済の複雑性の度合いへと近づいていく。経済複雑性は、ある地域が生産し輸出する製品の構成を調べることで近似できる。製品やその地域に知識やノウハウが存在することを物語るからだ。p231

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23646359

  • こういう、世界をどう定義するかというテーマの本を読むと、新たな視点が手に入ると思い読了。世の中のもの全てを「情報」という定義で捉え、その本質や将来を見極めようというもの。知識やノウハウも情報であり、「もの」もそれに付随する情報で判断される。産業クラスターなども、いわば情報が低コストで流通するから出来上がるものと解釈できる。本書はとにかく難解だったが、考え続けよう。

  • #科学道100冊2022

    毎年恒例の企画展示「科学道100冊」に、今年新たに加わった本。

    金沢大学附属図書館所在情報
    ▼▼▼▼▼
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB23646359

  • 【由来】
    ・ハヤカワのfacebookで

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】
    ・まずはサラリと読んだ。シュレディンガーなんかも出てきて、おお!と思うが、やはり超斜め読みだから、著者のドメインは見えてきていない。

    【目次】

  • 前半は特に難しかった。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file6/naiyou24401.html

  • 物理と情報理論から経済社会構造の枠組みを探るアイディア。
    エントロピーが増大していく中で、なぜ経済や社会が発展しているのか。それは物理的に安定した個体ができる環境で、個体が非平衡的運動を様々に生じさせるような温度環境(地球のような)がある。そこに情報が蓄えられ、さらに様々な個体が生じる。そしてそれらを促すような計算が出来る主体(分子、生物)が生じることが前提条件。
    さらに経済社会を生み出すには人、社会のネットワークが情報をより多く保持し、計算していかないと複雑な個体を生み出すこと8できない。車を生み出すには多くに人のネットワークとそこに蓄積されるノウハウが必要。これは人を集めたからといって生じるわけではなく、各人のノウハウと社会としてのノウハウの蓄積が必要である。これを図るのが経済複雑性で、より多くの製品を作ることができているか、という観点で図る。

全10件中 1 - 10件を表示

セザー・ヒダルゴの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×