オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5009)
- 早川書房 (2013年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350090
作品紹介・あらすじ
〈ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞受賞〉第二次大戦中のイギリスでの現地調査に派遣されたオックスフォード大の史学生三人は、未来にぶじ帰還できるのか……好評の『ブラックアウト』続篇
感想・レビュー・書評
-
「ブラックアウト」の続編。
合わせて、数多くの賞を受賞しています。
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞をタイムトラベルもののシリーズでほとんど総なめ!
2060年の未来。
イギリスのオックスフォード大学史学部では、学生が歴史的な体験をレポートするためのタイムトラベルが行われている。
ダンワージー教授がなぜか次々に予定を変更する騒ぎの中、第二次大戦下のロンドンに送り込まれた3人の学生。
ポリーは、ロンドンのデパートの店員に。
メロピーは、アイリーンと名乗って、田舎の屋敷のメイドに。
マイクはアメリカ人記者として、ダンケルクに。
3人とも自分のゲートがなぜか開かずに帰還できなくなり、少しずれてロンドンにいるはずの仲間を探す。
やっと出会いはしたが、ロンドンはドイツ軍による激しい空襲のさなか‥
というところから、「オール・クリア」は始まります。
「オール・クリア」は空襲解除の意。
過去に足止めされたまま、何が起きたのかわからない3人。
自分達が歴史を改変してしまったのではないかと恐れながら、目の前で起きていることにも手を貸さずにはいられない。
他にも来ている学生がいたはずだが、その場所を思い出せず、手がかりを探して右往左往します。
面白おかしい様子も含みつつ、現地の人々の勇気ある奮闘ぶりを具体的に書き込んであり、それぞれが生き生きしている様子に驚嘆。
作者夫妻が当時体験した人たちに直に取材した効果もあるようです。
ダンワージー先生がやっと事態に気づき、急ぎやってくるのですが‥?!
まだまだ謎は深まるばかり!
いや、後半がすごく、いいんですよ~!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『ブラックアウト』に続き『オールクリア1』500ページ二段読了!
前作より更に「迷子の不安」はエスカレート
これから起こることがわかって、回避しなければならない「焦り」に、わかっていたはずの未来が変わってしまうことで、何も知らない状態になることへの「不安」が交錯する。
誰にも話せない「不安」
閉じ込められる「不安」
誰にも知られず
死んでしまうかもしれない「不安」
第二次大戦のロンドン大空襲は、日本ではあまり知られておらず、映画「空軍大戦略」が思いつく程度。
破壊された都市の風景と、その中で必死に日常を守ろうと格闘する心情は、その時代に生きる人しかわからない。
テンポよくリズムよく描かれて、読み進めるのにストレスは少ない。
さあ、完結編『オールクリア2』へ突入! -
うー、くどいよ。でもこのくどさがコニー・ウィリスの一つの持ち味。じりじりしながらも、来たるべき怒濤の展開に胸を高鳴らせる。
ダンワージー先生が大変なことに! ってことは「ブラックアウト」の最後のほうで登場した「彼」はあの子か?やっぱり彼がまたもやみんなを救うのだろうか?
あーもう、2の発売が六月だなんて、待ちきれない! -
ぐんぐん引き込まれる
-
『ブラックアウト』の続編。
-
オール・クリア 1(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
-
前作を読み終わったとき、何故これをすぐに借りておかなかったのか後悔した。
また、いいとこで終わる!
次はもう手元にある。
解決編、いくぞ。 -
「ブラックアウト」の続き。続篇の「オールクリア2」まででひとつの物語になる。本書は物語の途中なので、中弛みを感じてしまうが、第二次世界大戦中の英国で3人が元の時代に戻れなくて奮闘するのに興奮してしまう。3人が予定通りのタイムトラベルができなかった理由は徐々に明らかにされていく。もしかしたらどんでん返しがあるのかもしれないが、ラストに向けて怒濤の展開を期待せざるをえない。そもそも時空で迷子になった3人は元に戻れるのだろうか。戦時中の一般市民の情景をリアルに表現したこの物語は、長いけれどそれほど無駄はないストーリーだ。これからどのようにまとめられるのか楽しみである。
-
2060年のオックスフォード大学史学部、タイムマシンを使って、学生が過去の時代に旅行してフィールドワークをしているという設定のシリーズ、『ブラックアウト』の続編であるが、長くなってしまったのでひとつの長編を『ブラックアウト』『オールクリア』、すなわち第二次大戦中のロンドンの灯火管制とその解除をタイトルに2分冊にしたもの。日本語訳ではさらに『オールクリア』も2分冊になってしまった。
評者も最近、フランケンシュタイン産業のロンドン、裏ロンドン、クラーケン神のロンドンなど結構ロンドンに行っているのだが、オックスフォードの航時史学生もたくさんロンドンに行っている。第二次大戦下のロンドンに。
そのうちの3人。
マイクは史上最大の救出作戦ダンケルク撤収を遠目に観察する予定が、もろそれに巻き込まれてしまい、負傷し入院、降下点に行けなくなる。アイリーンを名乗るメロピーはロンドン郊外で疎開児童を観察するが、帰還予定日直前、はしかの流行で隔離されてしまう。ポリーはデパート店員となってロンドン空襲下の市民生活を観察するが、帰還予定となっても降下点が開かないことに気づく。
過去に旅立つ前、オックスフォード大学史学部では、ダンワージー教授が渡航スケジュールを大幅に変えさせていて、てんやわんやしていたが、「向こう」で何かあったのか、それとも、自分が歴史を変えてしまったせいではないのか。3人は不安になりながらロンドンで落ち合う。はい、これが『ブラックアウト』のあらすじであります。
『オールクリア1』の表紙は欧州戦勝記念日のロンドンの光景なのだが、それがなぜここにあるかといえば、本館冒頭でメロピーはすでにこの日にロンドンに来ていることが明かされているからである。このことはあとで重要な問題となってくる。
1人だけ1940年に取り残されたのではなく3人がまとまったのはよかったが、今度は、2060年に戻る活動のために別行動をせざるを得なくなると、このケータイのない時代、連絡がつかないと仲間の安否がたとえようもなく心配になる。読者もいっそ1人のほうが楽だという気分になるくらいだ。
『ブラックアウト』では3人それぞれが降下先で様々な困難に遭い、さらに降下点が開かないことに気付き、という展開で、話の進みはいささか散漫だったが、本館では3人で協力して2060年に戻ろうとするプロットに集約してきて、俄然面白くなってくる。
史学生が戻ってこないと来るはずの回収チームが来ないのはタイムトラベルに何か不具合が起きた可能性がある。ただ、同時代に他にもロンドン周辺に来ている史学生がいるはずで、うろ覚えの記憶を頼りにその史学生ジェラルドを探し出し、一緒に帰ろうというのが当面の目論見である。何しろうろ覚えなので、ジェラルドがどこに行くと言っていたのか思い出せない。地名を思い出すために地図を手に入れねばならないが、戦時下ロンドンではドイツのスパイに情報を与えないために、地図も手に入りにくい。地図を持っているのは、悪戯のかぎりでアイリーンを苦しめた疎開児童ホドビン姉弟だ!
そうこうするうち、2060年では異常に気づいたダンワージー先生が自ら1940年ロンドンに降下する。しかし──
『オールクリア1』の終盤にかけて、3人の決死の脱出劇は、ロンドン空襲の激化とともに大いに盛り上がる。ホドビン姉弟大活躍。もちろんまだ「2」があるから、オックスフォードに戻れないことはわかっているんだけど。
あ、それからミステリ・ファンのみなさん、アガサ・クリスティーが出てきますよ。 -
空襲の場面は少し怖かった。先の見えない中を無我夢中で生きている、頼る者も無く‥‥ それにしてもポリーはなぜあんなにいろんな事を内緒にしようと思うのだろうか?