夢幻諸島から (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 早川書房
3.53
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本棚登録 : 359
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350113

作品紹介・あらすじ

〈英国SF協会賞/ジョン・W・キャンベル記念賞受賞〉死と狂気に彩られた無数の島々〈夢幻諸島〉には、それぞれに美しくも儚い物語がある……。語り/騙りの達人プリーストが紡ぐ眩惑の連作集

感想・レビュー・書評

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  • 夢幻諸島の島々の解説本という体裁。始めのうちは「興味ない場所のガイドブックを読んだってつまんない」と集中するのに苦労したけれど、100ページくらい読んだあたりで夢幻諸島が脳内に突然立体的に現出してたいへん興奮した。こういう面白さは初めてだし上手く説明できない。世の本読みさんにはぜひ読んでもらって「おお!」となってほしいし、SF者のひとにはぜひこの本がどうすごいのか解説してもらいたい。

    時間勾配のため正確な地図が作れない世界という設定なのだけれど、地図以外にも、時系列だったり登場人物の人格だったり作者の後出しだったり、もういろいろ歪んでいる。その歪み、解決編のない多様なエピソードに幻惑された。とても贅沢な一冊だった。

  • 最初は掴みどころが少なく読み進めるのに苦労。途中から何度か登場する人達の人物像や各々の相関関係が見えてきたり、諸島にまつわる謎や出来事が繋がり始めたりして、驚かされたり更なる謎が浮かんだりして、俄然猛烈に面白くなった。全ての謎が最後に収束するわけではないが、だからこそ読後にフワフワ&クラクラした心地良い余韻が残り、かつ何度も読み返したくなった。

    例えば今度読む時は、繰り返し登場する人物がどの島の話の時に登場するのか対応表を作り、各人物毎に登場箇所だけを一気読みしてみると、最初読んだ時とは違ったその人物に関する何かが見えて面白いかもと妄想している。
    または、不明な個所も多いけど、島ごとの気候や位置、産業、脱走兵や難民の扱い、通貨等を一覧表にまとめて、「何か発見できるかなあ」とニヤニヤしながら眺めたり、それをもとに地図をでっち上げる遊びなんかも出来そう。
    まあ、表を作ったからといって謎が消えることは無いけど、自分なりに整理したくなる魅力がこの小説にはある。色んな読み方楽しみ方が出来る小説だと思う。

    後、繰り返し登場する人物はみんな相当クセがある。その中でもトンネル堀りアーティストのヨーや画家のバーサーストは、人騒がせな芸術家だけどどこか憎めない魅力があり、名前が出てくる度に「今度は何をやらかしたのだろう」とニヤニヤしながら先を読んだ。

    夢幻諸島物の『The Adjacent』も是非是非翻訳して欲しい!

  •  プリーストの作品は訳者に恵まれ、多いとはいえないものの定期的に邦訳が出て、しかも傑作ばかりとあって、今回もいやが上にも期待が高まる刊行であったがその期待は全く裏切られず、それどころか予想を上回る超弩級の逸品であった。
     時空が歪み正確な地図の作成出来ない世界。南北の大陸に挟まれたミッドウェー海に浮かぶ<夢幻諸島>。不思議な島々の風土、文化、産業、人々などなどが様々な形式でガイドされる連作長篇。
     序盤は各島のガイドブック形式で始まり全篇を通じ基本的なフォーマットは変わらないものの、すぐにおぞましいハディマ・スライムのエピソード(本書に収められていないこのシリーズの関連短篇『限りなき夏』収録の「火葬」にも出てくる)、殺人事件の裁判記録(これが全体の伏線となる)と次第に話は佳境に入り、多彩な登場人物が巧みに結びついて、幻想的でエキゾチックそして不気味な<夢幻諸島>の観光に誘ってくれる。
     序文に<トークイルズ><トーキーズ><トークインズ>とほとんど名前の違わないが別な群島に関する記述がある。別であるようだが、言語表記による揺らぎもありうる、とはぐらかされる上に書き手は行ったことが無いという。さらに本文では<トークインズ>の<デリル>という島、<トーキンズ>の同名の島についてのこれまた紛らわしいガイドが出てくる。何せ時空が歪んで正確な地図が書けないのだから。それにしても何と魅力的な設定だろう。<夢幻諸島>には名前の無い島が無数にあって、それぞれに伝承やエピソードがあるに違いない。それこそ<無限>の世界が広がっているのだ。
     これまでプリーストは語りの巧みさによりぶれた写真のように実像と虚像のずれにより幻惑する長篇で我々を魅了してきたが、今回はモザイク状にエピソードをちりばめる形式で美しい幻影の世界を作り上げた。プリーストの技巧の幅は怖ろしいほどだ。
     個人的にはニューウェーヴSFでよくみられた断章形式をその影響下にあるプリーストがものの見事に流麗な語り口に深化させたことに驚かされた。さすがである。

  • 北と南に大きな大陸があり、その中間に広がる無数の島々から成る夢幻諸島。そのガイドブックという形を取った連作短篇集でありながら、長篇としての作品。半分は夢幻諸島に点在する島々の紹介であるが、それがこの作品の下地となって物語を引き立たせる。6~7人くらいの主要な人物が、時折挟まれる中編の物語に登場し、互いにリンクし影響を与え合いこの夢幻諸島に様々な痕跡を残す。超凶悪昆虫スライムとカムストン&カウラー、そして最後のヨーとオイの物語が強く印象に残った。

  • すっかり作者が作り出した世界に引き込まれてしまった。地図が作れない島々には、それぞれ個性がありまるで島自体が生きているかのよう。ホラーじみた話も切ない恋の話もどこか曖昧ではっきりしないことが多く、夢の話のように終わってしまう。そこがいい。「双生児」を読んだ時はピンとこなかったが、これは面白い。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どこか曖昧ではっきりしない」
      プリーストって、いつも煙に巻く感じですよね、、、
      「どこか曖昧ではっきりしない」
      プリーストって、いつも煙に巻く感じですよね、、、
      2014/04/17
  • 時間勾配によって生じる歪みが原因で精密地図の作成が不可能な世界に点在する〈夢幻諸島〉のガイドブック。

    難解。
    ってか、よく咀嚼しないといけないのに掻き込んでしまった…。
    作者の意図通り幻惑された。
    それだけは間違ない。
    もうすこし事象を整理しながら再読する予定。
    しかし、ガイドブックならもっとそれらしくてもよかったんじゃね?と思わなくもない。

  • 夢幻諸島-ドリーム・アーキペラゴ-何とまあ魅惑的な名前であることよ。その名の通り夢まぼろしのような島々をめぐるお話。

    ガイドブックの形を借りて語られる章と、物語風の章とが混在して、独特の雰囲気をかもし出している。複数の人物が何度も登場するけれど、まとまったお話に行き着くわけではない。その意味で、翻訳の古沢さんが言うように、これは長編ではないだろう。でも、一つ一つの章はかなり断片的なので、連作短篇とも言いにくい。まったくユニークだ。

    プリーストといえば、「語り」すなわち「騙り」。最初に読んだときより二度目三度目の方が格段に面白い。どこから読んでもいいつくりなので、気が向いたら適当にパラパラ読み返す楽しみがある。初読では、インパクトのあるスライム発見譚がお気に入り。

  • 超短編連作集

     想像の諸島を舞台に紡がれるさまざまな物語。最初とても退屈であるが、殺人昆虫物語から少しばかりペースアップする。しかし、それでもそれぞれの短編は玉石混交。分厚い新書という形態もあって、なかなか進まない。

     確かにストレンジ・ワールドなんだが、下手に諸島ガイドブック形式をとるからか、無駄にややこしい気がする。再読を期して、今回は中座することとした。最初の数話で終わったから。

    作品は以下の通り

    風の島
    静謐の地
    ジェイム・オーブラック
    雨の影
    沈黙の雨
    鋭い岩
    大きな家・澄んだ深海
    暗い家・彼女の家・夕暮れの風
    すべて無料
    台無しになった砂
    吊された首
    歓迎せよ
    芳しい春
    凍える風・大提督劇場
    手に入れた平和
    曖昧な痛み
    二頭の馬
    忘れじの愛
    完成途中・開始途中
    伝言の運び手・足の速い放浪者・無人機
    行方の定まらぬ水
    赤いジャングル・愛の戸口・大きな島・骨の庭
    遅い潮
    険しい山腹
    たどった道
    たどられた道
    唱えよ・歌え
    臭跡・痕跡
    静かな波音を立てる海
    死せる塔・ガラス
    高い・兄弟
    口笛を鳴らすもの
    古い廃墟・かきまぜ棒・谺のする洞窟
    大聖堂
    ダークグリーン・サー・ディスカント

  • 「毎日新聞」2013年10月27日付朝刊で、
    若島正先生が紹介しています。
    「解けない謎に満ちた夢の中の島をめぐる物語」
    (2013年10月28日)

  • 最初はちょっと取っつきにくい。
    でも多分、噛めば噛むほど味が出る、スルメのような小説。
    もう一回読むか。

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