香水: ある人殺しの物語

  • 文藝春秋
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163106601

作品紹介・あらすじ

あらゆる匂いをかぎわけ彼ひとり匂わない。至高の香りを求めて異能の男の物語が始まる。不思議なベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 五感の中で一番説明のしにくい具体性のない、それでいて、印象を大きく左右する嗅覚。その匂いに超人的な才能を持つ男の一代記。
    人殺し云々という副題が付いていたので、とりあえずミステリーにジャンル分けしてみましたが、何だろう、ミステリーというのとも違うような…

    このブクログの一文クイズで先日 問題に出た本です。
    そこでキーワード『匂い』が何故か引っかかりこの本を探し出して読んでみました。ご紹介いただきましてありがとうございました。
    それによると映画もあるそうで。映画はどんな内容?興味深いものです。

    この本のレビューといたしましては、5章に分かれ、それぞれがある人物の死をもって一応の完結を見せてはいますが、ここでネタばれはしたくない。想像以上に芳しい濃い内容の本でした。

  • 映画がとても気になっていたけど、
    見ることもなく終わってしまったので、原作を読んでみました。
    最後の解説で、起承転結になってるって書いてあったけど、
    まさにそうです。
    最初はとても引き込まれる出だしで、
    中盤は主人公の孤独な時間が多くって何度も眠くなりました。
    でも後半はあれよあれよと、殺されていってしまう。。。
    香水も一種の麻薬ですね。。。

  • 前半はかなり退屈。
    やめようかと何度も思ったけど、前評判を聞いていたためなんとか読了。
    ラストは結構衝撃的。小説って、やっぱり面白いなぁ。
    映画の方も観てみたい。

  • あたり一面においのないものはない中において、唯一においのない人物が、理想のにおいを追い求めた話である。追求の仕方がかなり異常であるぶん、一見奇抜な物語に見えるが、つまるところ彼は「個」としての存在意義が欲しかったのではないか。究極のにおいを望みながら、「アイデンティティー」は決して手に入らない。その渇望と絶望が他人のにおいを通して綴られるというのが何ともやるせない。

  • 18世紀のフランスに生まれた邪悪な天才調香師、グルヌイユの一生。

    久しぶりに、こんな小説を書いてみたいと思う本に出会った。

    この本の最大の魅力は、登場人物のキャラクター造形にある。21世紀の日本人から見れば、邪悪か強欲または身勝手としか思えないキャラクターがほとんどだが、全員が必死に生きている。

    登場して2ページで首をはねられるグルヌイユの母は、名前さえないがあまりにも鮮烈だ。実家からの仕送りの途絶えた孤児を職人に売るマダム・ガイヤールも罪の意識はない。

    グルヌイユが関わったほとんどの人間は非業の最期を遂げるか望まない人生を送る。

    何かを調合する小説、と言えば高野和明「ジェノサイド」もそうだが、薬の調合がコンピューター任せなのは読んでいていも楽しくない。グルヌイユが手作業で香水を作り出していく過程は、知的好奇心も刺激されるし、読んでいて面白い。

    邪悪な天才グルヌイユは25人の美少女を使って(殺して)すべての人間をひざまずかせる究極の香水を作り出すが、その力が顕現した瞬間に、たったひとつの想いもかなわないことを知る。

    ――ありのままの自分を受け取ってもらいたい。自分に唯一まことの感情である憎悪に対して、しかるべき返答をもらいたい――

    誰もがグルヌイユの「香り」にひれ伏すが、それはグルヌイユではなく「香り」にすぎない。グルヌイユがどんなに大衆を軽蔑し憎んでいても、誰も「香り」の下の素顔を見ることができない。

    絶望したグルヌイユは、生まれ育ったパリにもどり、天使となって地上から消滅する。

    この本に出会えてよかったと思える、最高の読書でした。

  • 文字というもので香りという五感の一つに訴えるものを
    ここまで豊かに表現することができることができるなんて
    信じがたい偉業。
    香りそのもののが与える快楽と、それが人間にもたらす作用
    の追求のみに生きる、粗野な野生児であり、天才の調香師であり、
    悪意のない殺人犯でもあるグルヌイユの数奇な一生を描いた
    文学史に残る名作!!

  • 第1回アワヒニビブリオバトル「時」で紹介された本です。
    2015.06.10

  • 本からむんむん「におい」が立ち昇るってくるような小説でした。

    18世紀パリ、街はくさかった。川はくさかった。広場はくさかった。
    臭かったでしょうよ、昔の都ならどこの国でもみんなごみごみ雑多でそうだったのでしょう。その反面いい香りが強烈に感じられ、好まれます。自然の中にもありますが、人工的な香水が欲しい、必要になります。現代と違って自然から抽出する香り、バラ、ラベンダー、ジャスミン、スミレ、水仙・・・に油やアルコールなどを使って調合する手数のかかる工程で作られる香水や化粧品などがもてはやされたのです。

    パリの場末で文字通り産み落とされた孤児グルヌイユとい男の子が、強烈な嗅覚を持っていたために「香水調合室師」の修行しつつ成長して、自分の好みのにおいに執着するという物語。単に修業ではなく職人気質とは違う、彼の好みの異常さでオタク的な人間になってしまうのでしたが。

    物語構成はうまいし、文章の隅々に「ああ、なるほど」「わかる」心理がばらまかれていて「シンクロしてる!」と思うったりして、主人公は挙句の果てにたくさんの人を殺してしまうのですから怖ろしいこと。そのように人の心をつかみ世界各国でベストセラーになったのもうなづけますし、夢中で読めて面白いこと請け合いです。特に香水が作られる過程には興味がわきました。

  • 18世紀のフランス、パリは悪臭に満ちていた。通りはゴミだらけ。中庭には小便の臭い。人々は汗と不潔な衣服に包まれ、川は臭く、広場は臭く…。
    そんなパリの魚屋の調理台の下、魚の臓物の中に産み落とされたグルヌイユは、生まれながらに類い稀な能力を持っていた。この世の中の香りという香りを嗅ぎ分けるという能力だ。
    彼にとっては香りだけが意味のあるもの。食べ物も衣服も人との関わりも、彼にはどうでもよいものだった。

    そんなグルヌイユが、ある日、パリの街中のとある香りに強く惹きつけられた。それは一人の少女から発せられる香り。まだ大人になりきっていない、無垢な、蕾が花開く直前の香り。その少女の香りを手に入れるために、グルヌイユは少女を殺してしまう。

    少女の香りを求めるために、調香師になり、香りを操る。そして偶然、あの少女と同じ香りを嗅ぐことになるのだが…。

    特異な人間として生まれてしまった悲しみが作品の前半を占めるのだけれど、後半からは邪悪さが表面化してくる。

    後味の悪い作品。作者はきっとそれを狙っているのだろうけれど。

  • まぁ変わった話でした。
    これ、全編に渡って主人公が人を殺し続けていたら、さぞかし胸糞の悪い話だったろうけど、結構最後の方でサクッと語られるものだから、不快度が薄れてる。
    引き込まれたけど、楽しめなかった。

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