ゾマーさんのこと

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制作 : ジャン・ジャック サンペ  Patrick Suskind  池内 紀 
  • 文藝春秋 (1992年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163136202

ゾマーさんのことの感想・レビュー・書評

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  •  情報に振舞わされない一昔前のお話。
     僕の心や身体の未熟さに対して、背伸びをしている「ガリレオの法則」やら、自転車を「機械的回転衝動保持の法則」なんて、頭でっかちの言葉とのアンバランスさが、ユーモアをさそう。
     ドイツ文学ならでは、という思いこみがあるけど、ピアノの先生に叱られたその果てが、自分の家族、周囲の環境、されには世の中の意味まで、その憤りが展開していくところが、さすがです。
     時折出てくるゾマーさんの私利私欲のなさ。日本ならば穏やかな人物に描いていたでしょうに。
     ゾマーさんのただただ歩き続けることの意味のなさ、でもこの僕が、16歳を前に、その姿に意味を見出したのではないかと、想像してしまいます。
     子供たちを震え上がらせる怖い先生が、懐かしい。
     絵は娘に指摘されました。「プチニコラ」のサンぺ先生ですね。

  •  とても痛々しい読後感が。ドイツでは発売直後、子供に贈るのがブームになったそうだけど、どちらかと言うと大人になってから読んだ方がショックを受ける小説だと思う。
     思春期の少年がどんどん成長して上に伸びていくのを縦軸とするなら、何の変化も成長もなく黙々と歩き続けていくゾマーさんが横軸なんだろうか。そうやって大人になったかつての少年が、〈そういえばあのゾマーさんとは何だったんだろう〉と振り返るとき、戦争とか従軍体験とかの一言では言い切れないような、孤独なゾマーさんの病理のようなものをとらえる瞬間がいくつも小説内にある気がする。とても印象的な本。

  • まさか、ゾマーさんのことの作者が香水を書いていたなんて!読んだのはずっとずっと前なのに、タイトルとカバーは鮮烈に覚えている。やはり、そういうことか。

  • '93.3読了。

  • 本当は「香水」が読みたかったのだが地元の図書館にはなかったため、代替として借りてきた。

    タイトルの「ゾマーさん」が語られている部分は非常に少ない。多くは語り手である「ぼく」が幼少期から青年期にかけて成長していく描写が大部分だ。
    成長とは今まで出来なかったことが出来ていくようになることであり、それには非可逆性が伴う。
    例えば主人公は、もう自転車に乗れなかった頃の練習の感覚を味わうことはない。木に登り、上からおしっこをひっかけることもなければ、ピアノの運指を間違うこともない。
    序盤に主人公は「飛び立つのはなんてこともない。どうして地上に降りてくるか、それが厄介だ」と言った。
    成長するのは誰にだって出来る。難しいのは、成長する前に出来なかったことを思い出し、味わうことなのではないか。
    それはどうしようもないことであり、なんだか切ないな、と思った。

    ゾマーさんがなぜああいったラストを迎えたのかは、情報が少なすぎて何とも言えない。
    ただゾマーさんが湖へ沈み行くのを見守った主人公の心情はおぼろげながら分かるような気がする。
    ゾマーさんが特別何をした訳でもないが、ゾマーさんの「死に追われてる姿」によって、主人公は自殺を取りやめた。言い換えればゾマーさんは「生きること」の象徴なわけだ。
    主人公から見たゾマーさんにとって「生きているということ=死に追われてる姿」だったんじゃないかと思う。
    だから主人公はゾマーさんを止めなかったし、それを見たことも誰にも言わなかった。
    誰も、誰かが生きていることを「あ、今日あの人が生きているのを見たよ」なんて言わないように。

    主人公の成長と「ゾマーさんのこと」
    結局は「生きること」を描いた小説なのだと私は思った。

  • 他者の生活を通して描かれるゾマーさんの生き様に、胸がギュッと締め付けられる哀切を感じます。ゾマーさんが何を考え、生きたのか、そしてラストは何を考えていたのか。読者の想像を深く導き、言葉の一つ一つに作者の強い意志が籠っています。

  • 児童書だし、薄いし読みやすそうだと思って手に取ったら、さすが佐野洋子さんが激賞する作品。重かった。★がみっつなのは作品のせいじゃなくて、作品世界を十分理解できない自分に対してかな。ピアノの先生の鼻水のことで死にたくなった子ども、歩いて歩いて歩いてとうとう行きついた大人。ゾマーさんのことを考えると、何だか人生は残酷だけれど本当に救いがなかったのかというとそうでもないというか…とやはりうまく言えない。読み返すごとに発見がありそうな深い1冊だと思う。

  • 走り続ける謎の男、ゾマーさんを軸にした少年の成長物語。

    あこがれの女の子に「一緒に帰ろう」と言われて舞い上がり、周到な準備と綿密な想定をたてていたのに、急用で帰れなくなってへこむところや、ピアノの先生フンケルさんのキレ具合が笑える。鍵盤の上に鼻汁を飛ばすとか。

    最後、なぜゾマーさんは姿を消したのか、深い余韻がある。

  • 東陽町に居た時に買った本。既に登録済みのつもりだったが漏れていたらしい。
    まず第一にイラストが良い。私の好みにぴったり
    作者の少年時代の思い出の風景の中にゾマーさんがいる。風変わりな人で地域の大人たちもゾマーさんの詳しいことはよく分からないらしい。人との関わりを避け、いつも何処かを歩き回っているゾマーさんは、地域の風景の一部になっている。
    少年が成長したある夜、………………………。
    ゾマーさんが心の中に抱えているであろう何かを考えたり、少年が何を感じどう成長していったかとか、考え出したらきりがない。静かだが奥行きのある胸を打つ作品。
    もしまだ未読なら、とても短い作品なので一度は読むことをお勧めしたい。

  • なんとなく本屋さんで見かけて気になり、図書館で借りて見ました。

    木にのぼりこのまま地上に降りたくなくなる気分とか、このまま空を飛べるかも、と思う瞬間とかはよくわかるのですが。全体として余り何かが心に残ると言う事は無かったかな。
    多分好みもあるでしょうね。

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