長崎ぶらぶら節

著者 :
  • 文藝春秋
3.52
  • (10)
  • (27)
  • (27)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 162
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163188201

作品紹介・あらすじ

「な、愛八、おうち、おいと一緒に、長崎の古か歌ば探して歩かんね」-愛しい古賀十二郎の誘いに、丸山芸者愛八の胸ははり裂けんばかりに高鳴った。歌と、恋と、無償の愛。こんなに一途に生きた女がいた。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 筆者が亡くなったからこそ胸を打つ。永遠に語り継がれる歌そして創作への思い。

    歌には作り手の思いと歌い手の思いがある。構成に継がれる歌もあれば、いつの間に消えていく歌も多い。本書は消えかけていた長崎の名歌長崎ぶらぶら節を探し記録した丸山芸者愛八と身上を潰しながら長崎学を残した古賀十次郎の生涯を描く。

    筆者の歌にかけた思いが随所に表れる。ワシントン軍縮条約で廃棄の決定した完成間際の戦艦土佐。長崎の三菱造船所から呉へ回航される。造船所と海軍の宴会で愛八は十八番の土俵入りと共に即興の歌を歌う。

    「土佐は良い子じゃ この子を連れて
    薩摩 大隅 富士が曳く
    鶴の港に 朝日はさせど
    わたしゃ涙に 呉港」

    みんなの気持ちが乗り移り知らぬ間に歌をこしらえていたという愛八に古賀は言う。

    「そうやって生まれた歌が幾十幾百と長崎の町や村に眠っている。それを探しにいくとたい。おいとおうちは。歌ば眠らせたまま死なせてはいかん。歌には多くの人の夢と祈りがあり、そこには歴史が刻まれているとだから。」

    二人の探索か始まる。古賀が詞を記録し愛八が節を覚える。妻子持ちの古賀への愛八の仄かな思い。

    三年をかけて二人が出会ったのが長崎ぶらぶら節。嘉永年間に流行ったという幻の歌。91歳の老妓から歌を引き継ぐ。名歌は愛八を通じてレコード化もされ現在まで歌い継がれるが、愛八の恋は実らなかった。

    愛八の生涯。長崎の風俗と丸山芸者の意地が感動を持って描かれている。

    時代を超えて歌い継がれるべき名歌、名作詞家の強い思いが詰まった感動の作品。。

    なかにし礼、2020年12月23日心筋梗塞のため死去。享年82歳。

  • 長崎に興味があり読みました。長崎にも丸山という遊郭があったこと。おくんちの意味も分かり、隠れキリシタンの事など興味深く読みました。愛八さんの心意気にも感動しました。

  • 良いものを読んだという読後感です。

  • 1999年下期:第122回直木賞受賞作品。
    面白かったです。主人公の愛八さんが愛おしくてなりません。

    長崎ぶらぶら節は、長崎の市井に歌い継がれる民謡のひとつ。明確な楽譜も記録もない長崎の埋もれた歌を発掘しようとする長崎の大学者・古賀十二郎に、謡い手として協力することになるベテラン芸者・愛八の物語。
    愛八さんこと松尾サダさんは実在の人物で、本作は史実に取材した創作だそうです。

    愛八さんの、弱い者子どもを放っておけない優しい気風のよさ、芸に対する一途な姿勢、相撲好きでおちゃめな姉御っぷり。

    愛八さんの人生の物語で、その後もずっと話は続くのですが、私はやっぱり古賀十二郎への想いのせつなさにぐっときました。

    著者のなかにし礼さんは大変著名な作詞家です。
    また読み返して、歌に対する視点なんかも楽しみたいなと思う小説でした。

  • 請求番号:913.6/Nak

  • 大学助教授である知的な女性の満たされぬ気持と動物的な大胆な行動、この落差がなんともいえず衝撃的な標題作。女性の立場から書いた短編ですが、迫力があります。その他4作は今一つピンときませんでした。

  • 女性としてある面では、孤独で幸せな人生とはいえないかもしれない。
    でも、私はとても素敵な人生を送った人だと思う。
    真っ直ぐで一生懸命な愛八はとても愛らしい人に感じた。
    長崎に行ってみたい、愛八が生きた街を歩いてみたくなった。

  • [28][121023]<m市

  • 芸ひとすじに生きてきた芸者・愛八の生き様に最後は思わず涙ぐんでしまいました。

    PN. 桃かすてら

  • ≪内容覚書≫
    忘れ去られていた「長崎ぶらぶら節」を、
    現代によみがえらせた学者と芸者の史実をもとにした小説。

    ≪感想≫
    とりあえず「長崎ぶらぶら節」を聞きたくなった。

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1938年旧満州牡丹江市生まれ。立教大学文学部卒業。2000年『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞。著書に『兄弟』『赤い月』『天皇と日本国憲法』『がんに生きる』『夜の歌』『わが人生に悔いなし』等。

「2020年 『作詩の技法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

なかにし礼の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
浅田 次郎
朱川 湊人
吉田 修一
奥田 英朗
村上 春樹
重松 清
綿矢 りさ
宮部 みゆき
和田 竜
有川 浩
宮部 みゆき
宮部 みゆき
桜庭 一樹
万城目 学
伊坂 幸太郎
GO
金城 一紀
伊坂 幸太郎
東野 圭吾
万城目 学
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×