壬生義士伝 下

著者 :
  • 文藝春秋
4.19
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本棚登録 : 675
感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163191508

作品紹介・あらすじ

吉村貫一郎が生涯かけて貫き通した「義」とはいったい何なのか。切腹を命じた大野次郎右衛門の真意とは…。感動の結末へと物語は進む。非業の死を遂げた男たちの祈りはかなえられるか。日本人の「義」を問う感動巨篇!

感想・レビュー・書評

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  • いやぁー参りました。感動で涙が出そうになるが、グッとこらえる自分が不思議でした。
    「義」とは「武士道」とはなんなのか、何のために、誰のために生きているのか、人々の愛やふるさとへの愛、全てに感動いたしました。
    うまく感想を書けませんが、ただ読み終わって「良かった」と想える一冊でした。

  • 新撰組隊士である吉村貫一郎について、彼を知る人たちの回想や証言によってその人となりを浮き彫りにする。

    引き続き、斎藤一、互いを深く理解していた親友大野次郎右衛門の息子大野千秋、次郎右衛門の中間の佐助、上巻に登場した隊士、貫一郎の次男の回想が続き、最後は次郎右衛門の書状で終わる。
    合間には貫一郎の胸の内が描かれてる。

    吉村貫一郎の生き方や人柄は「永遠の0」の主人公と似ているように思う。本人はいたって誠実で正しいと思うことをただ淡々と行うような、損得より義を選ぶ人。時代が違っていれば、もっと生きやすかっただろうし、生かされる道もあっただろうに・・・。
    辛かっただろう。
    でも、当人は他の生き方やその後の時代の変化などは想像もしなかったのだろうけれど。名前の通り、自分を貫ける人。それは決してたやすいことではない。何事にも本気であるから、周りの人たちの心を揺さぶり、斉藤のように一見斜に構えて生きるしかなかったような人の心の奥底まで届き、その本心を言わしめる。

    下巻はより近しい人たちの言葉によるので、読み手も感情移入しやすく、哀しみもより増している。
    貫一郎との関係ばかりでなく、次郎右衛門と千秋、千秋と長男嘉一郎など友情や親子の愛情、師弟関係、信頼といった得難い関係があふれている。
    切ないのに温かく、厳しいのに優しい。
    建前の裏側にある、本音が哀しい。

    正直泣ける。でもそれは泣かされる涙ではなく、自分の琴線に何かが触れて落涙するのである。
    それは自分が持たない深い関係であったり、自分も経験した懐かしい思い出であったり・・・。
    それは、他の人にとってどうと言うことのない場面であっても、自分の思い出を呼び覚まされるということなのだと思う。
    嘉一郎によって掃き清められた雪道を佐助が父の遺品を持ってやってくるときに、佐助が嘉一郎を思いやる場面。ひどく切なかった。


    制約がある時代や世界。その枠が決まっている中に逆説のようだが無限があるように感じるのはなぜだろう?
    今、自分が生きる時代は間違いなく以前にも増して自由で我慢を強いられることは少ないと思うのだが、心が解放されていないというか・・・。苦しみやわずらわしいことがあるから、大切なものが一層光り輝いたということか?
    やり切れないことばかりの話でありながら、人の善意や敬意、毅然とした態度が随所にでてくるものだから、背筋がすーっと伸びるのを感じる。微笑ましい会話も随所に・・・。

    南部藩ということで、「あまちゃん」で聞きなれたトーンで読んでいくとその表情が伝わってくる。無骨だけれど、正直で温かい、北の人たちが懐かしく感じる。「八重の桜」で聞きなれた言葉も随所に。北の人たちのこの時代の思いは相通じるものが多かったようで。
    「じゃじゃじゃ」も何度か登場。

    読み終わったとき、いつか再読しようと強く思った。

  • 面白かった!月並みだが構成が上手い。
    「吉村貫一郎」という人間のことを、その人を知ってる人間に聞き回って教えてもらう、という形式で、話の中で出てきた人を伝っていきどんどん話を聞いていく中でその人柄やエピソード、出世、人間関係、そして本人や子供達の最期を知ることが出来るという作りがよく出来ているなと感じた。
    特に最後の末の息子と預け先の人にあてて書いてもらった手紙は、今までの話を読んでいると不思議とすらすら読めて、まるで自分がそれを実際にその場で読んでいるかのような錯覚に陥って、本を閉じた時の読了感があって良かった。バラバラで寄り道も多いそれぞれの話の全てがちゃんと繋がっていて見事でした。
    文章も回りくどくなくすっきりと読めたのも良かった。

  • なかなか切腹しない貫一郎が、朦朧とする意識の中妻からの声を聞き、やっと死ぬことができると喜ぶところが泣けてしょうがなかった。
    貫一郎にとって、忠義を尽くしているのは家族だった。
    そして息子たちの父への想い。
    兄弟それぞれ違う道で、父と祖国のために尽力する姿。
    号泣でした。よかった

  • 人情の機微を丁寧に描く浅田次郎の傑作。
    分量が多く、読むのに時間がかかるけど、その時間以上の価値がある。
    主人公自身の回想と、主人公と関わりのある人物の回想を章ごとに交えて、主人公の生き様が明らかになっていくストーリー。
    男は主君の為でなく、妻子のために忠義を尽くす、という主人公の言葉に心打たれた。

  • 上下巻を通勤電車3日間で読み、最後は涙が浮かびました。浅田さん、うまいなぁ。『輪違屋糸里』を先に読んでいて、浅田作品で壬生者の時代背景や人物設定を理解していたことで、より人物の心の動きを感じ取ることができました。

    同時代を生きる作家がなぜそのテーマを選ぶのか、そうした作家への興味や作品にかける意義を感じ取りながら読むこともできる面白さを知りました。現代の日本小説に向き合うきっかけをありがとう。浅田さん!

  • 新撰組隊士の吉村貫一郎を主役にした時代小説。
    多くの視点で語られることにより、吉村貫一郎の人生や人柄が謎を解くように徐々に明らかに、かつ目の前にいるかのように鮮やかに描きだされる。
    物語が幾重にも重なり、さらには他の作品にも重なっていく。
    主題は男の生き様だろうか。悩みや葛藤を抱えつつ信念を貫く姿が印象的だ。
    どちらかと言うと男性が読んで面白い本だと思うので、男性にオススメです。

  • なじ■
    あまりに不器用であまりに強く純粋な愛情。

    一冊が分厚い上に上下巻構成で、
    ま・まだ終わらないのか…と読んでる最中何度か思ったりもしてしまったんですが、
    それまでの人生の描写全てがラストに絶対必要で、
    読み終わった瞬間ボロボロ涙が止まりませんでした。

    元々別マガで漫画版を読んでから気になっていたものだったので
    読破記念に漫画版も全部読んでみたいな!

  • 最高に泣ける物語。嘉一郎と貫一郎の親子の義の貫き方がすさまじい。父の仇でもある次郎衛との最後のやりとり「おまえ、ここでわしを討て」と言われた嘉一郎は父の仇は薩長だと言い、こう付け加える「もうひとつ、御意に添えぬわけがござりあんす。父の罪ば償えぬ子が、父の仇をを討つわけにはいかねがんすっ」立ち去る嘉一郎。次郎衛は「貫一はよぐ、鳶が鷹を生んだと倅の自慢ばかりしておったが、そうではねな。鷹が鷲を生んだのじゃ、、、、」

  • 胸を打たれる本とは、この本のことをいうのだと思う。
    寛一郎の想い、嘉一郎の想い、仲間の想い。それぞれの想いにじんとさせられ、泣かせられてしまった。
    「義」という言葉について考えさせられる一冊だった。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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