希望の国のエクソダス

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163193809

感想・レビュー・書評

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  • 初村上龍。

    かなり面白かった。
    12年前に書かれた小説で、ここで描かれたことが今現在と同じになっている事柄も多くあった。

    【根拠のない「たぶん何とかなる」という考えで何も実行しない日本人】
    というのは、ここ数年の大問題に対する人々や政府の対応に対して痛切に感じていたので、
    この本は、それに気づいている人がちゃんといるんだと思わせてくれた。

    内容的には許されない犯罪などもありましたが、
    作者もそれを最良だとは言っていません。
    考えることを止めてはいけない、と言いたいのだと解釈しました。

  • 作者本人によると、現在の教育の現状を打破するための答えがこの小説だそうです。
    物語はパキスタンに渡り内戦に加わっている日本人の少年の報道から始まる。この少年の行動に、日本の中学生達は触発されさまざまな行動を起こす。やがてそれが組織的になり、無敵に近い中学生の組織が出来ていく。

    シュミレーション的な小説なのだけど、それにしても納得しがたい設定が多いです。
    中学生達は自分達のネットあるいはコンピュータに関する知識をフルに活用し、インターネットと日本の経済危機を背景に勢力を伸ばしていく。
    ホストコンピュータへのハッキング、社会的に地位のある人間のプライバシーの暴露・・・

    いいのかなぁ・・・
    それが教育を改革する方法なのか?全国の中学生が集まればハッキングなんて簡単なことなのか?自分達の活動のための資金はどんな方法で集めてもいいのか?
    ハテナ?の嵐です。
    日本の経済的な危機は経済に暗い私でも想像ができるのだけど、中学生達の活躍はうまくイメージできない。

    経済危機に的を絞っていればまだ皆さんにオススメできるのですが、中学生が絡んだことによりなんかオススメしづらい・・・そんな小説です。

  • 日本という国に希望を持てなくなった中学生が、各地で学校を拒否し、しだいにまとまって事業を起こし、独自の価値観で独立しようとする。

    荒唐無稽とは言い切れないものを感じる。でもこれが理想社会だ!とも思えない。なんかもやもやする。

    中学生向けの推薦図書に入ってるのを見たけど、半分ぐらい経済の話で難しい。かなりの部分読み飛ばしちゃった。これを読んで中学生が経済やらなんやらに興味持ったとしたら喜ばしいことですね。難しい部分は読み飛ばしてもストーリーは分かるからがんばれー。 

  • 序盤にパキスタンやタイについて書かれていたので、途上国を扱った小説かと思ってよんでみたが、期待とは違う内容だった。しかし、中身は面白いし考えさせられる部分もある。

    日本社会が行き詰まっているのは、本の中でも語られているように「大人が利益と効率しか考えていない」からなのではないだろうか?自由主義社会では全員が共通のルールで行動し、その中で速く走ったもの(最も効率的にお金を稼ぐ能力のある人)だけが勝ち、残りの人は必然的に負ける。コミュニティはドンドン壊れているし、どうしたって人間疎外は発生する。

    村上龍はその打開策を中学生(若い世代)に託し、その為には教育(教育制度や日本の法律)を変える必要があり、従来とは異なるシステム(地域通貨や環境に配慮した生活)が必要だと言いたいのかも知れない。

    ちょっと暴力的な革命を臭わせたり、左よりの価値観をみせているが、基本的には自由主義の考え方を捨てたわけではなく、小説としても無理のある展開(中学生の考えた事業や計画が100発100中で成功するなど)もあるが、日本と世界とか、日本のシステムとか、資本主義の限界とか、いろいろ考えたくなる内容ではあった。

  • 「僕の国には、何でもそろっているが、希望だけない。」

    中学生の反乱。つまり不登校。80万人
    それは、ナマムギ事件から始まった。

    インターネットによる連絡。
    リーダーのいない組織。
    日本の経済が、深く沈没していく家庭。
    中国が、人口20億人となったとき。
    円経済圏が、暴落していく・・

    そこに、ぽんちゃんが国会で登場するが、
    NHKで、放映されるはずが、全世界に発信される。

    質問される予定が、逆に質問する。
    なぜ中学に行かなくてはいけないのか?
    なぜ僕のような立派な政治家になれていわないのか?

    この物語を読むにつれて、69年の世代が、インターネットを手にしていたら、
    もっと変わっただろうと思う。

    そして、北海道へ行く。
    希望の国を建設する。地域貨幣を発行する。
    風力発電を得る。
    ブレードに、突起をつけて、音楽に近い音にする。

    暗闇の部分が存在しない。
    欲望が希薄である。

  • 窒息状態の日本で起こる中学生の反乱。2000年ころに書かれたものだが、2012年の今をよく予測している。日本には何らかブレークスルーが必要なのだと思う。世界も同じだろう。

  • 6月10日の日経新聞の社説に、この本が取り上げられていて、あまり村上龍は読まないのだが、読んでみた。
    なかなか、興味深く、読めた。
    でも、専門用語が多く、ちょっと、中だるみ。
    いえ、私の勉強不足か。

  •  集団不登校の中学生たちが、現状の既得権益を守りたがり変わろうとしない「大人」たちのつくる日本のシステムや価値観に異議を唱え、自分たち「子ども」の新しい国をつくるまでを描いた近未来小説。
     主人公は『愛と幻想のファシズム』のように閉塞感を打ち破る当事者ではなく、主人公は30歳半ばのフリーの記者の第三者的な立場から語りで物語りは進んでいく。30歳半ばというのはちょうど日本的な共同体でぬくぬくとそれなりに生きている「大人」側でもある一方で、そのシステムに対して批判的である「子ども」側の側面もある。そこでこれから日本がどういうビジョンを持つべきなのかについて、二つの価値観の中で起こるある種の葛藤が表現されていて、それがこの作品の一番の魅力だと感じた。
     2000年に書かれた小説なのでどうしても古びて見えてしまうところもなくはない。しかし、中学生がのちに北海道につくる彼らにとっての国は評価経済や環境への配慮、欲望の欠如など、今のネットなどで議論されている理想に近いものがあってとても刺激的だった。

  • 風車が風を切る音が心に残る。中学校はそんなに悪いところじゃないよと思いつつ、集団不登校もあり得ないことではないと思う。大人たちが中学生(自分の言葉で語る人間)に抱く思いについては苦笑いものだが、良く分かる。希望は掴み取れるが、才能が必要。わたしはどうだ?考えた。

  • 首相がコロコロ変わり、とその後の日本を予言している設定に驚き。既存のシステムが世の中に合わなくなってきていて、Webの普及で多くのパラダイムシフトが起こっている今、若い力が新しい世の中を作っていく期待を感じさせる作品。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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