体は全部知っている

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 765
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163195100

作品紹介・あらすじ

神様はもしかして人間を愛しているのかもしれない。日常に慣れることで忘れていた、ささやかだけれど、とても大切な感情-心と体、風景までもがひとつになって癒される最新短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • もしもドラマの中だったら、バッハの『トッカータとフーガ』がBGMに流れそうな
    劇的に辛い目に遭ったのに、なぜか心が凪いでいて
    「あら、私ったら意外にタフだったのね」なんて思って。
    仲良しの友達にも、「あんな目に遭ったのにしっかりしてるね、えらいえらい!」
    と褒められたのに、ある朝目覚めると、全身に蕁麻疹が拡がっていたり
    買い物帰りの道端で、突然一歩も動けなくなったり。

    自分でも意識していない心の奥底を、体が教えてくれることってありますよね。
    まさに、「体は全部知っている!」と思い知らされる一瞬です。

    そんなふうに、体が呼び起こしてくれる記憶や感情を描いた、13の小さな物語。

    『デッドエンドの思い出』の巻末の書籍広告に惹かれて読んでみたのですが、
    あの作品に比べると「体」を媒介にしている分、ちょっと生々しい表現が多めで
    私の苦手分野に少しだけ引っかかってしまったかもしれません。

    でも、妖怪じみた外見なのに、まるで会社のマスコットのように
    職場にいるだけで皆の心を和らげ、かわいい涙を流させるおじさんを描いた『田所さん』
    仲間外れにされ、ひとりぼっちで放課後、居残り作業をする主人公に
    なにがあったか訊ねもせず、「手伝うよ」のひと言で手を貸す
    親友が印象的な『明るい夕方』など
    しみじみと心を潤してくれるお話も。

    「生きていることに意味をもたせようとするなんて、
    そんな貧しくてみにくいことは、もう一生よそう、と思った」という言葉に
    頭でっかちに生きることの不自由さ、愚かしさを教えられる一冊です。

  • 1番好きかも。
    おやじの味を読み終えた時?だったかな?オーマイガーと言ってしまった。この方の作品はなんというか…心の奥の傷に触れてくるのだよね、もういいのだよ大丈夫だよと言ってもらってる感じ。
    小説の中で起きてることは随分とおとぎ話的なのに、わたしの現実を癒してくれるのですよね。感謝。
    丁寧に生きよ。

  • 短編集でこんなに満足したの、久しぶりです

  • 河合隼雄の本で紹介されていて手に取った本でした
    そのせいかわたしにはとても深いものが感じられました
    夢とか深層心理とかにまつわる展開、感情表現がとても興味深く感じられました
    吉本ばななさんの本はひさしぶりでしたが、こういうことを書かれる人だったんだなと思い至り
    改めて彼女の作品を読んでみたいと思います

  • 予備校に行っていた時、模試にこの作品が出て、それから勝手に「エッセィなんだぁ」と思っていて読み進めていたら、短編小説だと分かってびっくり。


    中には結構おどろおどろしいものもあったり、「なんで主人公はそんなに相手の気持ちがすぐに分かるのだ?」と思ってしまうところもあるけど、それでも私にとって★4です。


    冒頭の作品が一番好き。

  • いろんな読み方ができる。

    ばななさんの本。
    小説。


    今回、短編小説を選んだのは、

    読める自信がなかったから。

    ふぬ。




    いい。

    短編、いい。

    良きである。


    すごくゴクゴク読んでいる。

    あと1編で読了だが、随分、ちまちま読んでいる。
    止まり、止まり。

    冒頭の、設定だけで、おなかがいっぱいになるっていう。

    なんだそれ。

    である。
    すごい!!


    いいなー。
    でもある。




    想像力の賜物ではあるとは思うが。

    実体験や、環境が、小説を書く背景にはあると思う。



    いいなー。

    その発想はなかった。



    みたいな。


    まー、そりゃそうなんだけどさー。

    なんていうか、



    主人公の職業やら、経験が、

    ばななさんの経験の影響を受けてないわけがない。
    っていう。



    もちろん、想像して創ったのではあるとも思う。




    ただ如何せん、何を思わそうとして書いたのか、は、
    やっぱ、読む人によって感じ方は違ってくるので。

    でも、共通して思うことはあるとも思うし、




    そこが魔法的な、

    ばななさんの文章作成の術なのだろうな。


    っと、読了。



    さいごの1編、
    読み終わって、簡単なあとがきも読んで、終わり。



    ふー、すー、

    息を吐いて、息を吸う。





    書き下ろしが多かったようだ。


    すごい。

    企画で作られた本らしく、

    2000年9月30日、第1刷。

    ずいぶん昔の本なのだなぁ。
    そんなの全然、感じないけどなぁ。


    って思うのは、

    どうかな、

    私も古い人間だからかな。
    積み重なった心や記憶を何巡もしてきているから。

    そのどれもが今もあるから。


    古いものも古く感じられないのだろうな。
    とか。


    関係ないことも思う。今。




    短編、

    読んでよかった。
    読めてよかった。

    読み終えられてよかったなあ。

  • 久々の吉本ばなな。ばななでそだった私としてはもう少し楽しめるかと思ったんだけど、今ばななモードじゃ無かったっぽい

  • 13個の短編。どれも数行読むだけでその世界へ自然と入っていける。

    話の内容が少々キツめでも、何故か読後感は優しく、やるせない気持ちにはならなかったなぁ。

    読む時の自分の状態によって変わりそうどけど、今の私には「田所さん」「おやじの味」が良かった。

  • 小川洋子さんのラジオで「みどりのゆび」を紹介していて手にとったが、他も良かった。心や頭ではなくて、体がわかっていること、タイトル通り「体は全部知っている」ことを、短編の中でさり気なく伝えられるばななさんの優しさが伺える。読んだあと、気持ちが少し軽くなってまた頑張ろうって思える、そんな感じ。

    〜止めることのできない時間は惜しむためだけではなく、美しい瞬間を次々に手に入れるために流れていく〜(黒いあげは)
    〜自分の中の深いところに押し殺してきた気持ちをわかるということが、何よりも大切なんだなあ〜(本心)

  • サウンド・オブ・サイレンス が、すき。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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