姫君

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163201405

作品紹介・あらすじ

自分が生と死の境目に立っていようとも、人は恋をする。人を愛することで初めて生じる恐怖、"聖なる残酷"を描いた傑作短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 多分昔読んだことあるんだけど、カーテンのように揺れる母さんの息子がその後どうなったんだっけ?と思って再読。若い頃読んだ時よりおもしろくないと思った。すごく読みにくいし、気持ち悪い。
    山田詠美さんの放課後のキーノートは大好きで何度も何度も読んでた記憶だけど、今読んだらどうかな?

  • 『MENU』
    一緒に育った従兄と親友が結婚することになったから、その親友と無理やりセックスしたり、従妹ともセックスしたりする話。

    『検温』
    浮気相手と彼の両親と会って、散歩しながら隠れた死について考える話。

    『フィエスタ』
    思いを寄せる同僚を同じ職場の女に奪われた女、のなかの醜い感情が騒ぎ立てる話。

    『姫君』
    傲慢でたまにいじらしい姫子と、ギターを弾きながら愛を歌う摩周が一緒に暮らした日々の話。

    『シャンプー』
    両親が離婚して母親に引き取られたものの、父親に懐いている中学生の女の子。父親のかつての夢、仕事、飼い猫。出来たばかりの彼氏と父親の命を案ずる話。

    ---------------------------------------

    本のカバーが真鍋昌平さんの絵だったので、不穏な雰囲気の話なのかな、と思ったけど、そこまできつい話はなかった。
    『姫君』のラストで、姫子が事故が死ぬのは話を盛り上げるためだったのかな。舞台装置としての死はあまりいいものではないなあ。

    あとがきに書かれているように、”死は生を引き立てる。生は死を引き立てる”のであれば、どの話ももう少し掘り下げて欲しかった。
    生と死について思う人たちがどんな行動を取るのか。彼らの心象風景が見たかった。

  • 表題作の「姫君」、姫子さんがそんなに魅力のある人間だと思えず、そうなると内容があるわけじゃないので、短編なのだけど途中で嫌になってしまった。メインに据えられたキャラクターが分かりやすくイカれているのは「MENU」かと思うけど、こっちは面白かった。メタ的な見方でいうと、母の自殺を目撃した過去が人格に影響していない描き方は上手いと思った。やっていることはむちゃくちゃだけどそれを「こういう過去があるからなあ」という言い訳にしていなくて、同情させず、でも軽蔑もさせない絶妙なラインのキャラクターだ…と感心してしまった。この短編が頭にあることを考えると、リアリティを求めて読む物語たちではないのかもしれない…。

  • 幼い頃に母を自殺で亡くしてから
    叔父の子供として育てられ
    表面上は健康的だけれどどうにも捻くれて成長した時紀。
    女友達が従兄弟で兄の聖一と結婚して
    少しずつ変わっていく様子を冷ややかに眺めながら
    従姉妹で妹の聖子の愛に応えつつもしっぺ返しをくらったこと。

    結婚している彼と会う場所で一緒に過ごすことになった彼の父と余命わずかの再婚相手の妻の
    死がちらつくからこそのしがみ付くことができる愛への執着。

    貧乏なのに高貴な心持ちの姫子と
    心の底から彼女を愛してしまった男との関係と
    突然の終わり。

    離婚して母に引き取られたものの、
    気楽さゆえに父に会いに行っては
    両親が離婚に至る経緯から自分の恋愛相談と
    友達と話すようなゆるさで交流する父と娘。

    愛にはそれぞれ色々あって。。。

  • MENUが一番、好きだった。どうしてMENUというタイトルなのかは最後まで分からなかったけど。


    「ほら、良く大人が、一番好きで大切に思う人とセックスしなさいって言うじゃん。でも、それに従おうとすると、聖子は、自分とセックスしなきゃいけなくなっちゃうじゃない?この問題、どうやったら解決できんの?先生」


    「そうだなぁ。自分が一番好きだと確認するために男と寝てみれば?それって、自分としてることになるんじゃない?」


    「ふうん。面白いアイデアだね」


    聖子とトキのこのやりとりが好き。

    そして、もう一つ。


    「贈り物」


    「トキ兄は誰かのセックスがくれた聖子への贈り物」


    「馬鹿」


    これも素敵。


    私にとって麻子よりも聖子の方が魅力的に見えるのは、自分も聖子と同じように現実味のない恋の方が好きだからかな。。

    トキが最後にリンチに合ったのには、驚いた。因果応報?でも、麻子にとっては一生、必要とされる存在を得たから、悪いことではないのに。

    多分、せい兄のトキに対する見えない小さな裏切りがトキを傷つけてしまい、麻子との秘密の共有が永遠に欲しかった弟を失って、さらに、こんな結末になったのか。

    それまでずっと内面はともかく、表面上は穏やかに進んでいた物語が最後、こんなバイオレンスな結末を迎え、良い意味で裏切られた。けれども、トキの内面はかなり危うい感じだったから、この結末も不自然ではないと感じられる。

    後書きに生と死、そして愛について考えていて、この本ができたと書いてあったのを読んだ時、この本のテーマってそれだったんだ!と少なからず驚いた。生と死を前にすれば、自分の小さな恋の悩みなんて自然の壮大なスケールの前ではちっぽけなものなんだな、と思うけれど、多分、生と死と愛は何か関係があるのだろう。それは何となく分かる。

    こんなふうに感じさせてくれる物の考え方や対比、作者の考え方に触れられるのは読書の良いところだと思う。

    死ぬことは怖い。愛も怖い。でも、その二つは作者にとっては全く正反対の怖さ。彼女にとって、死ねば必ず悲しむ人がいる、ということが恐怖なのに対し、愛はある特定の人間を自分自身よりも愛してるのではないかと思う時、その対象を失うことが恐怖。つまり、死は他人が泣くのを思いやっているのに対し、愛は自分が泣くのを心配しているのだ。


    死は生を引き立て、生は死を引き立てる。私はこれらのことに恐怖を抱いている。


    私はまだそんなに人生経験が豊富なわけではないけれど、そう語る彼女の気持ちが心から滲みて分かるくらい、豊かな人生を送りたいと思った。

    自分を一番好き、と言わなければいけない、と聖子に教えたトキは愛を恐れたのか。そうすると、現実味のない世界でしか生きられないのかもしれない。トキはそんな世界にいってしまったのかなあ。だとすると悲しい。ちょっと前の私と同じだし、私は未だにその世界に片足を突っ込んでいるから。

    でも誰だって、自分が一番大事というのは共感できると思うから、読み手にこれだけ刺さる、普遍的な話でもあるのだな、と思った。

  • 長男がある日、カーテンレールを引っ張ってとってしまった。後で、母親自殺のくだりを思い出し訳の分からない納得をしてしまった。息子は、読んでないか、読んでいるかはわからない。DIYでレールをつけた。

  • 1959年生まれ山田詠美さんの本はたま~に読みます。今回、2001.6発行の「姫君」を読みました。41~2歳の時の作品です。MENU、検温、フェイスタ、姫君、シャンプーの5話が収録されています。「MENU」と「姫君」は自由奔放に生きる男(時紀)と女(姫子)が描かれています。どちらも突然の死で幕を下ろします。ぶっきらぼうでいて、なぜか憎めない、そんな人間像が浮かんできます。久々に小説らしい作品を読んだ気がしました。

  • 短編集。

    最初の、幼児期に母親の自殺を経験した主人公が、優しい顔の裏で物凄く冷めた残酷な顔を持つ話がとても印象的でした。

    幼少期の事を言い訳に人を傷つけてはいけないと思うけれど、まだまだ甘えたい年ごろなんですかね。

    しかし、妹の聖子ちゃんは小悪魔で可愛い。

  • 山田詠美の小説の中でもっとも好きな作品です。表現がきれいでウィットに富んでいて何度も繰り返し読んでいます。表題作のほかにMENU,検温といった短編もあり、それらも印象的でした。

  •  「MENU」はトキを中心にして、人々が恋愛をしていく話。よくある夫婦間なのは聖一だとすれば、トキは遊びで終わる男かもしれない。それは大人になりそこなって、自分の殻に籠ろうとしているように思える。本当の愛を知るすべもなく、成長した子どもってこんなふうに誰かを愛すことなく異性と一緒になってしまうのかな。
     「検温」は、女性主人公が倦怠期に突入している彼とのことを淡々と語り口調で書いていっている作品。見えない重りがどっと読者の方へと伸し掛かっているような雰囲気がある。だが、内容はあまり残らない印象ではある。
     「フィエスタ」は、傲慢で身勝手なバイセクシュアル(異性愛者より)の夫を持つ女の恋愛から遠ざかっていくといった作品である。恋に冷めた女の疾風怒濤のごとき、怒りの心情にスピード感があって面白かった。しかし、ここに登場する職場はきっとカオスなんだろうなっと思って、そこで働きたくないなってゲンナリする。
     「姫君」は、家なき女である姫子を引き取った摩周との、恋愛同居物語。二人共、プライド高いんだろうなって思う。そして相手を掌握してしまおうとする態度がちらり。それよりも、姫子の義理の兄の態度からみて、姫子の親族は内心、嫌気がさしながら姫子を扱っていたんだろうなって思った。摩周もいずれはそうなるのかな。
     「シャンプー」は、離婚した元父親のもとに通う娘の、元父親に対する見方を語った物語。元父親が彼女のことを好きなように、彼女は本当に元父親のことが好きで仕方ないんだろうな。けど、もし元父親が結婚したら彼女はどうなるんだろう。それでも元父親の元へ通うのかしら?

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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