月夜見の島

著者 :
  • 文藝春秋
3.20
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本棚登録 : 19
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163213309

作品紹介・あらすじ

壱岐水道を望む入江にひっそりと佇む「蓬莱島」。古来ツクヨミの民が住み、その秘められた信仰の舞台となったこの島を訪れた夫婦を待ち受けるものは…?『聖水』でストーリーテラーとしての才能を高く評価された著者待望の受賞第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 最初は面白い予感があっただけに、途中からの失速感が否めない。亡くした大切な人々が帰って来る島。儀式の頃から段々と、これは新興宗教?と思わせられる様になったのが残念。読み終えて眠ったら異様な不快な夢で目覚めた。何かしらの影響を受けた様だ。青来有一の本、3冊目読んでみようかな。

  • 死んでしまえばそれでなにもかも終わりかもしれません。

    子供のように可愛がっていた犬が死んだ。それから妻の春奈はおかしくなった。
    そんなときに、ふくもクラブという団体から、蓬莱島に招待され、永瀬夫婦はそこへむかった。

    亡くなった人を失った傷を癒すべくその島に集まった人たちと、その島に昔から言い伝えられていること。

    死んでしまえばそれでなにもかも終わりかもしれません。
    けれど、終わりは残酷で死を受け入れるには深く悲しみが根付いてしまっているから、救いを求めたかった。

    生と死はまったく違うもので区別を付けないとならない。
    供養ってのは死んだ人にたいするものでもあるし残された人にとっても大切な儀式なのかもしれないね。
    淡々とドキドキした)^o^(

  • 青来有一は「あわひ」を歩む。生と死との。こちら側とあちら側との。何か合理的でないモノが支配する世界に行ってしまうのかと思わせた刹那、ぎりぎりの地点から「この世」に戻ってくる。しかし、この世と言っても全てが徹底的に合理的に解決されるという風でもなく、そこかしこにあちら側に抜けてゆく穴が依然開いているのかも知れないという気持ちは残しつつ。

    「聖水」でもそうだったし「てれんぱれん」でもそうだった。果たしてこの作家は、その存在が合理的に説明できないものが実際にあると肯定したいのか、あるいは否定したのか。そんな埒もないことを難詰したくなるような心持にまたしても陥る。ああまたそういう気持ちになったかと思いつつ、何故かほっとしたような思いも一方では浮かび上がる。その背景に常に見え隠れする土地に根ざすもののことに思いは、やはり、流れる。オラショ。がらさ満ち給ふまりあ。

    長崎と言う土地を25年ぶりに訪れてみた。特に所縁を持つ身ではないけれど自分の業はここから更に西方の海へ出て行ったところから始まったという思いは多少ある。そしてこの地から北へ転送された郵便の繋ぐ絆のことも。そんな自分勝手な思いを長崎は受け止める町だ。古の名残を残すものと極めて現代的なもの、あるいはそんな二分にはそぐわないような過去から現在へ連綿と繋がっていることを訴えているようなもの、それらがキメラのように互いの間にある境を共有し、異物として排除しないような雰囲気をその地の在りようには感じる。もちろん長く住んだことがある訳ではないので、そんな思いも勝ってな思いであることは承知している。だが、ひょっとするとあの凄惨な原子の光でさえ業として受け止めてしまえているのではないかとすら思わせる奥深さがその町の佇まいにはあるように感じる。キメラを異質のものの合成と騒ぎ立てるでもなく。

    自分の業は、この地から時速200kmの飛行体で2時間も西方へ行った場所に留め置かれた2か月に端を発する。それを長崎と結び付けて考えたことはなかったけれど、黄泉の方角にあった隔絶した海上の一点で自分の何かは変わり、その後戻って来た地が長崎だったということとは、何か象徴的であるようにも思えてくる。そしてその徴と、青来有一の描く「あわひ」にするすると引き寄せられてしまう心持とは、深いところで繋がっているように思える。

    古と今が混在してもなんの不思議もない町。そこではこの世のものならざるものが何の違和感もなく存在しえるのかも知れない。「ならざる」などという狭量な合理性を振りかざす色眼鏡をかけた現代人のことなど全く気にもかけずに、あちら側に行ってしまったことすら気付かずに。

  • これは佐里温泉がモデルなのか?
    現実の佐里温泉はちゃんと営業してるようですが。(よかったよかった)
    なにかこう不穏で緊迫した場面も出てくるが、ラストでなんだか気が抜ける・・・。

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