富士山

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 228
感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163227405

作品紹介・あらすじ

この世界に暖かい光が差し込んでくるせつなくも美しい魂の彷徨を描く最高傑作!小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 昔から「富士山」とか「東京タワー」って、見えるとそれだけでうれしくなる自分がいる・・・

    きっと多くの人が富士山に救われているんだろうなって思えるし、
    遠い昔から、未来へと時代が変わってもそれは変わらないのだろう・・・

    本書には、そんな富士山をモチーフとした4つの短編が収められています。
    是非、ご覧あれ♪

  •  富士山が登場する4つの話で構成されている。どの話でも富士山は、主人公を見つめ、考えさせる。主人公は皆、幸せな境遇にあるわけではない。自分という人間を評価出来ず、もがき苦しんでいる。富士山は、そんな主人公のありのままの姿を受け入れ、希望を与える…。

  • ユニークな作家だと思う。
    同時に人の心にきちんと向き合おうとしてる人だと思う。
    富士山は彼女らしいカラーが上手く出た作品。短編集だけど読み応えあり。

  • 日本人がなぜか心の拠り所としてしまう不思議な存在・富士山にちなんだ連作短編集、4編。
    富士の裾野にある教団に属している男の妄想を描く・・・『青い峰』、
    3人のオカルト好きな中学生が樹海に野営して体験したこととは・・・『樹海』
    ゴミ屋敷に住む老婆とゴミ撤去をしようとする市役所職員のやりとり・・・『ジャミラ』
    産婦人科の看護士としていたたまれない思いのまますがるようにして富士登山をした女のゆくえ・・・『ひかりの子』

    最初の数ページこそなんじゃこりゃ!と思ったものの、ぐいぐい引き込まれた。
    唯一読んだことがある小説・コンセントと同じく少しグロテスクな描写があるけども
    どの登場人物もすごく必死で「自分」を追い求めているのが分かって感情移入してしまう。
    さらにエッセイでも感じたことがあるが田口さんの文章には何か光るフレーズが必ずある
    それが読んでいてたまらずに嬉しい。田口さん自身の魅力なのだろうな。
    一番好きなのは最後の『ひかりの子』。
    軽い気持ちで人工中絶をしていく少女たちに心を傷める看護士の気持ちが切々と伝わってくる。
    この短編を読み終わったときにすごく優しい気持ちになれた気がする。


    ネタバレ→




    特に印象に残ったフレーズたちを書きとめておきます

    「そう。血液もきっと身体の外に出てきて見てほしいんだ。赤だよ、危険だよ。血が出てるよ。
    危険だよ。色ってメッセージでしょ」   『青い峰』

    「そういえば、私は赤ちゃんを抱いてる時、抱いているのに抱かれているようにも感じる。
    なぜだろう。」     『ひかりの子』

  • 富士山をモチーフにした4編。田口ランディさんて体のこと描くのがすごく上手で、苦しいシーンなんてホントにこっちまで苦しくなる。田口さんにかかると感情も臓器の一つなのだなと思う。富士山はどんな人のどんな苦しみも飲み込んで、いつもそこにあるってのがいいね。

  • 元オウム信者のコンビニ店員の話「青い峰」、中学卒業の記念に樹海に入り自殺志願者と出会ってしまう3人の話「樹海」、役場の青年とゴミ屋敷の老婆の話「ジャミラ」、堕胎手術に嫌気が差したナースがほかの女性達と富士登山する話「ひかりの子」。2010/5/28 読了。

  • タイトルと言い装丁といい内容といい全部好き。
    「あとがき」もグッときた。
    ランディ女史の作品の中では,今のところMy Best 1。

  • 後書きより
    テロリストが日本を狙うとして、一番日本人が嫌がる場所は?

    富士山。

    その後書きが面白かった。
    本章を読んだから面白かったという繋がりもお忘れなく。

  • 富士山、をモチーフにした中編4篇。
    田口氏の主人公は物質的には恵まれてはいるが、どこかしら情緒的に殺伐とした家庭で育ったため、空虚感を抱えた人物が多く、そのため自分にとっての「真実」を追い求めて、新興宗教やオカルトにはまるもしくは、親近感を覚える人間が多い気がする。

    この富士山も、樹海の話や、遠目は美しいが、近しくするとマグマを抱えた凶暴さを露呈するなど、いくつかのフェイズがクローズアップされている。

    第一話のコンビニの話で、でてくるオーナーが著名な占星術の松村潔氏がモデルと聞いたので、読んでみた。
    占星術師というと、寡黙で浮世離れしたイメージだったけど、作中ではどちらかというと現世的で
    人の話をあんまり聞いていない(笑)だったので意外だった。

  • 富士山は、日本人の心の原風景。生と死を孕んだ、ときに怖いほど美しく、巨大な富士山は、どこから見ても、どんな瞬間に見ても、人をハッとさせるんだなぁ。そんなことがしみじみわかる短編集でした。

  •  富士山が共通項の短編をまとめた一冊。コンビニを舞台にした「青い峰」、中学卒業記念に樹海に行く男の子三人の冒険譚「樹海」、ゴミ屋敷の住人と市役所の環境課職員の関係を描く「ジャミラ」、女性向けツアーで富士登山に挑む看護婦の物語「ひかりの子」の4篇。

     田口ランディは初めてだったが、違和感なく入りこんでするすると読める、好みの本だった。「青い峰」では、それぞれ傷を抱えながらコンビニで働く二人の気持ちの重なりかた、ズレかたにドキドキした。人間関係に臆病な岡野だが、その思想に好感。
    「樹海」での知らないこと、分からないことに興味を持つ男の子たちの考え方には、そうそう、私にもそんな時期があった、と懐かしく思った。

  • 一編一編、読み始めるとグイグイ引き込まれてしまった。
    「人間は自分の脳でしか世界を認識できない。どこかにほんとうがあったとしても、すべて脳に編集されている。俺たちは、大脳というヴァーチャルなマトリクスに生きてるだけだ。いや、これは極論だね。人間は脳を通して下界に反応してるだけ。真のありのままの下界を捉えることはできない。」引用。
    周りが、富士山に登る人、富士山の衣装を着て唄う人、と富士山づいてる中で、富士山とゆータイトルの本が目について借りて読んだ一冊。

  • 久しぶりの田口ランディです。「富士山」のタイトルに、惹かれました。

    当時、『コンセント』『アンテナ』『モザイク』の3部作が秀逸でしたが、盗作が判明したり色々だったらしい。まぁ、田口さんの書き味は好きなので、ちゃんと書いてくれてれば、問題ないです。

    で、「富士山」ですが、いかにもランディさんらしい話です。人の内面と言うか、薄暗い部分と言うか、そんな所をチクッて刺すような感じ。

    ランディさんらしい方法で、富士山に敬意を込めて書かれています。

    2004年刊行の本書ですが、今や大変な人気になってるらしい富士山。
    私が20代の頃に登った時は、そんな大げさな装備なくても普通に登ったけどね・・・まぁ20年も昔の話ですけどね。

  • 『青い峰』を読んでいて、あれ?私には合わないかも…と思ったけど、読んでいくうちに引き込まれた。
    『ジャミラ』と『光の子』が良かった。
    あとがきもぐっときた。

  • 総じてストーリー展開に無理あり。「ジャミラ」がまあまあ。

  • 生死と富士山。
    なんで富士山よ?私は東京タワー派だ。と思ったけど。

    いつも変わらずそこにある大きな存在って、
    自分の小ささを痛感させてくれるし
    自分の生きる意味を考え直させてくれるのよね。

    なんにもこだわらなくていいし、
    なににこだわってもいいし、
    ただ必死で生きていくだけ。

  • 短編4つ、ひとつひとつに読み応えあり。

    最後のやつが好き。

  • 言葉によって風景を見せる。音を聴かせる。
    いやおうもなく、選択肢もなく、はっきりと。

  •  例のごとく不気味な話かと思いきや、しみじみとよい短編集だ。

  • 2008.6/21-22
     あとがきが気になった。

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著者プロフィール

作家。

「2015年 『講座スピリチュアル学 第4巻 スピリチュアリティと環境』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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