真鶴

  • 693人登録
  • 3.47評価
    • (68)
    • (103)
    • (198)
    • (34)
    • (6)
  • 175レビュー
著者 : 川上弘美
  • 文藝春秋 (2006年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163248608

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

真鶴の感想・レビュー・書評

  • にじむ。

    自分の輪郭が溶けた気になって、あなたの輪郭に混じりたくなる。


    一緒にいないともちろん淋しいけれど、一緒にいてももっと淋しい。
    くっついていてももっと淋しい。
    別の人間だとはっきりわかるから。
    くっついてもくっついても1つにはなれないから。
    どうしようもなく一人だと感じて、すぐ横のあなたがもっと恋しい。

  • この本を読んでから、
    母につよい言葉を浴びせてしまったあと、
    母は娘にやわらかい部分しか晒せない、
    防御することができないんだってことが、
    頭をよぎるようになりました。

    母と、娘と、
    それ以外のもの、
    それが世界。

  • 夫は死にたいと患ったのだろうか。
    それとも、生きたいと患ったから失顔したのだろうか。

    世界が変わった、というのではない。でもちがう場所に行ってしまった。
    時々刻々と、いる場所は変化した。まわって、変わって、どこまで行くの
    かとおののいて、それからまたここに戻ってきた。けれどまだ、東リきれ
    ていない。

    まだいないもの。いつか.あらわれるかもしれないもの。
    過去の中に峯を消すことのできるものは、今あるものばかりだ。今ないも
    のは、過去の中に消すことはできない。どこに消すこともできない。不在
    なのに.いつまでたっても、なくならない。

    百に.もっとふれたいのね.あなた。
    母がしすかに言った。
    でも.人は、そんなにかんたんに、人にふれさせてもらえないのよね。
    つづけて、育った。
    わけもわからぬままぞくりとして、母の顔を見た。ふつうの顔をしている。
    子供でも?血をわけて腹を痛めた子供でも?いそいで開いた。
    あら慕ったら、あなたこそ子供になってるわよ.今。母はまた実った。どう
    しちゃったの。あなただって、昔は、あたしに、おなじだったでしょう。

    「どうしたの? 」青磁に開かれた。
    わからない。答える。
    「なにを.怖がっているのJ
    こわがっているの、わたし?
    「ちがう?」

  • 「センセイの鞄」を川上さんの作品で一番初めに読んで感動したんですが、この「真鶴」はそれを上回る感動でした!
    この作品が芥川賞じゃないんだ!と驚いたので、芥川賞作品も読んでみたいと思います。
    この装丁、三島由紀夫の「金閣寺」をはじめとしたシリーズに似てますよね♪

  • 川上弘美さんの本、すきなのだけど、
    この本はすこし難しかった。 ちょっぴり、とっつきにくい。

    主人公の寂しさや、想いが切なくて、読んでいてつらかった。

    礼、回想の場面ではすごく素敵で魅力的な男性だから
    主人公のためを思って憎むことができなくて、
    それがよけいにつらかったな。笑
    なんだか感情移入してしまった。

  • 京は、死の象徴である「礼」と生の象徴である「青茲」の間で揺れている。
    礼は、近くにいるようで遠く、遠くにいるようで近くにいる自分を不安にさせるけど魅せられて、いるのかいないのかわからない、だけど欲しくてたまらない怖い存在。
    青茲は、いつまでも近くにいてくれるような錯覚に陥らせてくれるほど安心感があり、優しさでできている怖い存在。
    どちらも怖い存在である「生」と「死」。
    青茲は見えない存在である礼に嫉妬している。
    生は死に怯えるしかないのか。
    京はどちらのことも愛しているし、同じようにどちらのことも憎んでいる。
    つまり、生死は相反するものではなく、同じところに存在するのかもしれない。

    色々言ったけど、
    礼が好きだった。

  • 川上弘美著『真鶴』文藝春秋 2006年10月刊 266頁 1429円

     『文学界』(2005年2月号〜2006年5月号)連載を単行本化したものです。

     主人公の京(けい)の夫礼(れい)は、12年前に突然失踪します。
    3才になる幼い娘、百(もも)を残して。
    それ以後、彼女は、母親と娘の三人で暮らしています。
    百も中学生になり、二人の間には、難しい微妙な距離感があります。
    そして、彼女は、夫の失踪後、青磁という恋人とつきあっています。
     夫の残した日記から、「真鶴」という文字が出てきます。
    彼女は、「真鶴」に向かいます。彼女には“ついてくるもの”があります。
    “ついてくるもの”、それは、女性ですが、彼女の影のように現れては、消えます。そして、次第にはっきりと形を取ってきます。
    その彼女に導かれて、真鶴を訪れます。幻想的な、真鶴が描かれます。
     礼に、首にほくろのある女性の存在が、見え隠れします。
    ポケットの中の紙切れに書かれた「21:00」という数字。彼の日記の「ここは、自分の場所ではない。」という記述。いくつかの謎を、胸に抱いたまま、彼女は、つかれたように「真鶴」に向かいます。それは、夫の姿を求めると同時に、彼女自身の何かを「置き去る」ための旅でした。
     恋人青磁との別れが、待っています。彼は彼女に語ります。「あなたは、何も信じていない。」彼は、「もといた所」に帰って行きます。
    いつしか、“ついていた女”も去っていきます。そして、彼女の旅も終わります。
     小説の全体を通して、通奏低音のように流れているテーマは、「はかなさ」です。愛するはかなさ、生きるはかなさ、すなわち、人生のはかなさです。
    人は出会い、そして、離れていきます。せつない小説です。
     だが、この小説の救いは、最後に希望が見えることです。
    光にあふれた公園で、娘の声を遠くに聞きながら、彼女はつぶやきます。
    「礼、遠いいつか、あなたにも会えるのね。」
    この言葉が、胸にしみます。

  • 『溺レる』を数年前に読んでの2作品目。母、わたし、娘の近さがすごく川上弘美さん独特の言葉で綴られていて、私は常に俯瞰して読んでいました。
    映画は主役にある程度共感しないと観られないけど、小説なら読めるし。
    それでもラスト近く、失踪した夫に別のところ(異界)で会えたページで、急に私も引きずり込まれるように近くなってつい涙してしまいました。
    殺したいほど愛すのは、やっぱ厭だ。
    殺されたいほど愛す方がいい。

  • 巨匠に、
    なっちまったな。

  • 2007.07. いなくなった礼、そこにいるはずの青慈、変わってしまう百、変わらない母。そして、何度も何度も真鶴を訪れる京。ついてくる、何か・誰か。すべてをゆるく包み込みながら、独特の不安定さで進む物語。あちらとこちらの境が、どんどん薄まっていくのが奇妙なような当たり前なような、変な感覚に陥ってしまう。私も、吸い込まれる。引きずられる。悲しいのか、なんなのかわからない掴めない感情があふれる。読み終えた後、ずいぶんぼんやりしてしまった。

  • 自分が恋愛体質でもないし、霊感っぽいものも全然気配もないし、子供も居ないので、分かったような分からないようなモヤモヤ感いっぱいで読了。にじむとかたゆたうとか近い遠いとかゆたゆたとか、そういう言葉の感覚はとてもいいなと思いながらも、主題となっていることが掴みきれないまま不完全燃焼でした。失踪した夫にも、その夫を恨みつつも恋い焦がれているのに妻子ある仕事相手と長年ウェットな関係を続ける主人公にも、妻子があるのに愛人が失踪した夫を忘れられないことに嫉妬して傷つく男にも、誰にも共感できず、残念でした。

  • 途中で読むのが辛くなっていましたが、結末が気になって最後まで読みました。
    感想は…うまく言葉になりません。
    穏やかで優しい夫を大事にしようと思いました。
    子供の小さい時間も大事にしようと思いました。
    表紙の高島野十郎さんの「すもも」がとても良いです。

  • "ついてくるもの"にひかれて「真鶴」へ通う作家 「京」、十数年前に失踪した夫 「礼」 を探してと、一応ストーリーはあるものの、物語は虚実を綯い交ぜにして、時空を超え、どんどん神話的に膨らんで、それがかえってリアルにせまってくる、本来のものがたりの力、川上ワールド...好きです。読むつもりはなかったのに読んでしまった(;一_一)

  • 主人公の心情が綺麗に書かれていて読みやすかったです。

  • 娘との、失踪した夫との、母との、浮気相手との
    距離感の表現が
    腑に落ちる

    赤ん坊が子供になり、少女になり女性になっていく
    自分の一部だったものが、形になり、別人格へと成長していく「かたさ」

    13年前に失踪した夫への思いを振りきれずにいる
    理由がわからないから?
    現実と非現実のはざまでユラユラ揺れながら”思い”を断ち切って行く

  • なんていぅか…むつかしぃです↓↓
    読解力が足りないのだと思いますが(。。;)

    現実と過去と非現実的な世界?空想?が入り混じっていて、さらに人物が“男”とか“女”で書かれてるので誰のことなのかわからず余計に混乱してしまいました(+ω+)

    不倫とか反抗期とか離婚とか幽霊とか、いろんな見所がたくさんあって、深い話なんだとは思うんですけど…理解しきれなかったのでもやもやが残りました↓↓

  • 面白かった。
    結構読者に委ねられる部分が多いので、そういうのでプンプンしちゃう人は読まない方が良いかも。
    霊ととらえるか、精神ととらえるか、曖昧な感じで楽しんじゃうかという部分に関しても。

  • 不思議な話でした。
    でも、こんなのもいいかなって気がする。川上弘美さんの文章が好きです。

  • おもしろさを分かりたくて頑張って最後まで読みましたが・・よく分からなかった。

  • 沁みる。いい言葉がちょいちょいとまるでみつけにくい綺麗な小石のように落ちていて、すくうようによみました。

  • わたしは、いつまで真鶴にとらわれ続けるのだろう。

  • こわいと思った。
    ずっと灰色の寒い港町のイメージで読んでいたから、箱根旅行に行く途中に真鶴の駅を通りかかって、あれ、綺麗な所だなと思って少し安心した。
    不安定な人から見た世界を体験することもおもしろい。でもやはり少しこわい。

  • 手探りであてどなく歩いているような気分になる。
    つかみ所がない、美しくて、こわい。
    登場人物の名前がきれい。京、百、礼、青慈。
    しん、とした気持ちで眠る。

  • つきまとう透明な女に導かれるかのように、東京から電車で真鶴へ。
    どうやらそれは、幼い娘と自分を置いて、10年以上前に突然失踪した夫をきちんと思いきる旅だったようだ。
    突き抜けて愛していた夫。でもその夫には女がいた。それは目撃した事実だったはずなのに、彼女のなかではあいまいなものとなっていた。
    今、彼女はそれを思い出す。
    真鶴で、幻想の中に夫と女の目合いを見る。
    しかし、彼女は嫌でもなく、驚きもない。平坦でつまらないとさえ思う。
    きもちの中には、あらゆるものがあり、この目で見たことのないもの、決して、想像さえしたことのないものさえ、在る、と思う。
    想像の中にはなんでも在る。実際は平坦で、いつかみな似たものに収束していく。
    娘が子どもから抜け出ていくこの時期に、彼女は彼女なりのけじめをつける必要に迫られていたのだった。
    それが、彼女を真鶴へ向かわせ、幻想の中に「現実」を見させたのではないか。

    最後に、「今ある現実」と彼女がちゃんと繋がっていくので、ほっとします。

    そして、「きもちの中にはなんでも在る」のだから、きもちを大切にしすぎるのもよくないなと思ったのでした。

全175件中 1 - 25件を表示

真鶴を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

真鶴を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ツイートする