風に舞いあがるビニールシート

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著者 : 森絵都
  • 文藝春秋 (2006年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163249209

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風に舞いあがるビニールシートの感想・レビュー・書評

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  • 短編集。どの話が良かった?と聞かれても正直どれもあまり印象に残らなかった。ただ、それが悪い印象かといえば違う。どちらかと聞かれれば間違いなく、良かったよーと答えると思います。こんな読後感は初めてかも。うーん、なんだろう。無色透明、無味無臭な感じ?

    話の内容は、先が気になって止まらないとかワクワクしたりなんて無かったのですが、最後の何行かでとても良い終わり方になっていると思います。渇いた身体に水がすーっと染み渡る様なスッキリ感がありました。

    森絵都さん、物語のラストの締めくくり方がとてもうまいです。

    器を探して/犬の散歩/守護神/鐘の音/ジェネレーションX/風に舞いあがるビニールシート

  • 森絵都さんってこの表題作で直木賞をとっていたんですね。
    この本は短編集だけど、表題作は彼女の作品の中でもそんなによかったかなぁ?という印象です。自分は断然、仏像修復師の「鐘の音」がよかったです。

    という個人の好みはさておき。
    すべて「働く」ということについて模索・葛藤・邁進する様子を描いた短編集で、さまざまな仕事が垣間見れて愉しかったです。

    「器を探して」は、人気パティシエの秘書として無理難題をこなす女性の話。パティシエ本人は難ありだけど、作り出すケーキがすばらしいという。わかるわ〜としみじみ。笑 これだ!という美濃焼に出合うところがドラマティックでよいです。

    「犬の散歩」は、殺処分されるわんこのボランディアをするためにスナックで働く女性の話。牛丼で価値観をはかる先輩を思い出して、わんこのエサで価値観をはかるのがわかりやすくて参考になりました。笑

    「守護神」は、文学の勉強に励む勤労大学生の話。これだけ勉強することが仕事の学生ですね。主人公は勤労といってもアルバイトなので片身が狭く、一見ちゃらそうなのだけども、『伊勢物語』や『徒然草』を独自の視点から読み解く姿がかっこうよかった。それを考察する働く大学生の守護神、ニシマミユキさんも素敵でした。

    「鐘の音」は、自己顕示欲の強い芸術家肌の仏像修復師の物語。若さ故に師匠とぶつかったり他人を見下す描写などが、中島敦の作品を思わせる渋さがありました。最後の吾郎は子どもを授からなかったというのは、人生の対比としてわかりやす過ぎて不要のような気もしましたが。しかし、この中では一番好きな作品ですね!

    「ジェネレーションX」は何歳になっても、結婚しても、子どもができてもバカができるような大人でありたい、という男の子の夢ですね。高校時代の野球部で10年後に集まろうという約束を果たす前日の話。みんながさまざまな人生を歩んでいて、その姿を年上の主人公が眺めているのだけど、最初は諦めに似た感情を抱いていた中年会社員が、取引先の今ドキの社員を見て奮起するみたいな。気持ちのよい作品で、セリフでの話の進め方とかが「守護神」に似ているかな。

    で、表題作は、難民を救うために国連で働く夫婦(というか元夫婦?)の話なんだけども……。ちょっと短編で扱うには感情移入しにくいなあ、というのが本音です。二人の結びつきがよくわからなかった。物語的に破綻しているわけではないですし、むしろよくできているけれども。自分が平和ぼけしているせいですかね。

  • 初読

    森絵都作品二作目。
    やっぱりこの人の作品好みーっ!

    甘辛のバランス良く読み易い。
    特にこの短編集は題材のバリエーションが豊か。

    天才女性パティシエの秘書の『器を探して』
    社会人学生専門論文請負人の『守護神』
    難民支援機関職員の表題『風に舞いあがるビニールシート』
    が特に気に入ったけど

    犬の保護活動の『犬の散歩』はあらあら綺麗ないいお話?と感じたけど
    (それだって犬好きの私は絶対嫌いじゃないのだけど)
    ギリギリでそれだけに傾かないバランス、
    仏像修復士の『鐘の音』の精神状況、密室劇のような『ジェネレーションx』、
    外れゼロ!

    私にはまだ森絵都さんがどういう人なのかわからない。
    作家の主張、本人が作品に出ずにはいられない(それがその人を作家たらしめているのだが)
    特に女性作家はそれが一度鼻につくとそのまま受け入れ難くなってしまうので
    そうはならずゆっくりと読んでいきたいなぁー

  • あまりにもつまらないので、途中でやめた。これが直木賞?

  • 才能あるパティシエについていく秘書、動物愛護のために身を削る主婦、学業と仕事との両立に根を上げそうになる大学生、ある仏像の虜になった職人、10年来の約束を果たすべく奔走する若者、悲しみを背負いながら難民問題に立ち向かう職員、総じて言えるのは皆、「一途」であることでしょうか。

    「一途」には他を省みない危うさがあります。それは、その物事に躓いた時や、その人がいなくなった時に訪れる虚無感とでも言えばいいでしょうか。

    自らのリスク回避的な性格を考えると、「一途」という言葉には縁遠いものを感じます。常に、心の中に何らかの保険を抱えている感覚を持ち合わせています。一方で、「人生何があるか分からないから万事に備えておく必要がある」では、余りに肩身の狭い生き方かもしれません。

    要は、何事もバランスなのでしょう。しかし、現実問題としてニュートラルであることなど不可能です、なので、せいぜい「一途」を敬遠せずに向き合いながら、自分にすり合わせていくことぐらいが現状の最適解であると思います。

  • 6編の短編集です。

    お話としては、半分くらいは特殊なお仕事をされている。もう半分は忙しい主婦、学生、だったりする。シチュエーションが物語の中で知識欲を満たす材料になっています。

    さて、描かれているのでは、大小あれど人の苦しみである。現状の仕事や恋人に対する不満というよりは、もっと良く変えたい、自分はもっとうまくやれる、幸せになれる、といった心情でしょうか。最終的にはどのお話も、収まるように収まってイイ話となっています。

    のほほんと生きていたら、変わろうとするエネルギーが沸きにくいです。
    主人公だちは変わらざる得ない環境におかれるのですが、人は変わろうとするものだ、というところに共感するし、そうありたいと思います。

    ---
    「器を探して」:カリスマパティシエ女史の片腕。クリスマスにわざと仕事振り回され、自分のやりたいことを考える
    「犬の散歩」:保護犬の里親をさがすボランティア。
    「守護神」:大学レポートの代筆を頼むフリーター。レポートへの学習意欲がないのではなく、レポートに没頭する時間が取れない。
    「鐘の音」:仏像への偏愛をもつ修復師見習い。
    「ジェネレーションX」:クレーム処理のメーカーの若手が若者らしい草野球を計画。それをそばで聞いてる中年が、その純粋な若い精神性に感じるところあり。
    「風に舞いあがるビニールシート」:国連関連組織で難民保護で駆け回る夫との価値観の違いに苦しむ

  • 何を勘違いしたのか私は表題作をスポーツの話かと思っていたら、それは大間違いだった。

    著者の作品はこれで7冊目なのだが、直近に読んだ森氏の4冊の印象(あまり良くなかった)とは違い、読んでいるうちに「これって直木賞取れるような作品じゃない?」とやや上から目線で思った自分。
    後から知ったら直木賞受賞作だった。穴があったら入りたい。

    犬の里親探し・仏像・国連と、いずれも相当緻密な取材・研究をなされなければ書けないものを題材としていながら、説明的にもなっていないし、押しつけがましくもないし、物語をぶち壊してもいない。素晴らしいと思う。

    私は自分のプロフィール欄にも書いているが、「主人公が小さくとも明日への一歩を踏み出すような読後感の良いもの」が好き。
    実は本書はどの話も、まさに主人公が彼ら自身にとっての明るい方向へ歩み出す終わり方なのだが、それが読者に対して「ほら!」とか「はい!」とかいうあからさまな形ではない。
    あ~読後感良いわ~と、すぐさま思うようなものでもない。
    でも後から気付けば、「そういえば」どれも明るい方へ踏み出していったなあとじわじわ来る。うまく言えないけれどそんな感じ。

    「ジェネレーションX」はこの中では軽い文体で笑っちゃう感じなんだけれど、私はこれが一番好き。

  • 短編が6つ。

    『器を探して』
    『犬の散歩』
    『守護神』
    『鐘の音』
    『ジェネレーションX』
    『風に舞いあがるビニールシート』

    こりゃ直木賞文句ないだろうなぁという完成度。

    ぜんぶの話で感情が揺さぶられるし、
    表題作は特にうるっとしてしまう。
    自分のスタイルを貫いて、誰かを守るために死んでいくなんてかっこよすぎるなぁ、自分には出来ないなぁ、と感激させてもらった。
    何度読んでも、いいものはいい。

  • 森絵都さんの本は、まだ「カラフル」と「ラン」しか読んだことがなく、どちらもファンタジー色が強くて、子供でもわかるような作品だったので、そういうのが持ち味なのかと思ってた。
    これははっきり大人向け。
    社会に出った人間が、人にはわかってもらえなくても、人とは違う自分の物差しで、自分のしたいことを貫くということ。
    年を重ねるごとに難しくなるし、それに振り回される周りも大変だろう。
    でもいいよなぁなんて思っちゃう。
    全体通して暗めだったけど(直木賞ってそういうの好きだからなぁ(笑))、読後感が温かくてよかった。

    『器を探して』
    才能豊かなパティシエのヒロミに、美濃焼の器を探しに行くように仰せつかったのは、クリスマスの朝。
    言われるままに電車に乗り、彼から「あの女か僕かどちらをとるのか」と迫られる中、理想の美濃焼を求めて奔走する。
    心酔するヒロミのデザートを多くの人の口に運ぶこと、それが自分の使命であって生きがいなのだ。

    主人公はただ振り回されているのかと思ったら、意外な力関係がわかったり、「えぇっ?」な展開になったりして終わる(笑)
    この本の中で何気に一番好きだったかもしれない。

    『犬の散歩』
    捨てられた犬を飼い、新たな飼い主につなぐ犬のボランティアをする恵利子。
    費用を賄うために夜は水商売をしている。

    『守護神』
    社会人学生のために、レポートの代筆をしてくれるというニシナミユキ。
    ようやく探しあて、代筆を依頼するも、すげなく断られる。

    なんだろこれ、一番よくわからんかった(笑)

    『鐘の音』
    仏に全身全霊を注ぐ仏の修復師だった潔。
    25年前、師匠とぶつかりながら、修復先で出会った仏に惚れ込むが、そこでの出来事をきっかけに、修復師をやめていた。

    ほんとに森さん?というような異色な雰囲気。
    潔の仏への情熱は伝わってくるんだが、仏の魅力がよくわからない私には、理解が追い付かなかったかもしれない。
    でも最後の二人の話はとても好きだ。
    何が正しくて何がよかったかなんて、最後までわからないもんだ。

    『ジェネレーションX』
    取引先の石津と一緒に、クレームの対応に向かう車中。
    石津は電話で昔の仲間と連絡をとりあっている。
    最初は苦々しく思うも、次第にその話の中身に興味を抱いていく。

    この話もいいですね~。
    最初は単なる取引先の若造だった石津。
    “でも俺たち、いつまでもそういうバカでいたいなって、十年前に話してたんですよ。今より大事なもんが増えて、責任も、足かせも、いろんなもんが増えてるだろうけど、でも十年のうちでたった一日、みんなと草野球もできないような人生はごめんだよなって。”
    ほんとだなぁと思った。

    『風に舞いあがるビニールシート』
    表題作。
    難民を保護する国家機関に勤めるリカは、専門職のエドと元夫婦だった。
    1年に1週間くらいしか一緒にいられず、未来の見えない夫婦生活に耐え切れず、別れを選ぶリカ。
    それからも連絡を取り合っていたが、エドは、派遣先で撃たれ殉職する。
    空虚な生活を送るリカに、リンダがある話を持ちかけてくる。

    “じゃあ、私たちのビニールシートは?誰が支えてくれるの?”
    “仮に飛ばされたって日本にいる限り、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない”
    必死の思いでの問いかけに、こんな風に返されて、別れないでいるなんて到底できないだろうな。
    仕事と家庭を天秤にかけた女の要求など、エドにはうんざりするものでしかないのだ。
    仕事をバリバリする女でも、女が求めるのはいつでもやはり家庭、そして愛なんだなぁ。
    なんか切なくなった。

  • 森絵都読んだのひさしぶりだー。
    こんな文章だっけね。

    短編集だけど、どれもじわーっとあたたかさがこみあげてくる感じ。

    表題作はすごくすごく大切なことが描かれていたけど、あんまりすきじゃなかったな。どうしてもエドに共感できなかった。
    それより「ジェネレーションX」がよかった!なんか、平凡でありそうな話だけど、幸せになる。

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風に舞いあがるビニールシートの作品紹介

愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。

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