リンドキストの箱舟

  • 文藝春秋
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163249803

作品紹介・あらすじ

異常気象と乱獲によって野生動物がほぼ絶滅し、凍土と化した近未来の地球。人びとは都市のドームのなかにこもって暮らし、外にいるのは、収容所送りになった犯罪者や無法者だけ。そこをたった一人で旅する少女スロー。失われた野生動物を蘇らせる鍵となる不思議な生きもの、リンドキストの子どもたちを、太陽の輝く希望の都市へと運ぶのだ。厳しい寒さ、雪と氷、盗賊、そしてリンドキストを狙う者たちに行く手を阻まれるスロー。危機がおとずれるたびに、リンドキストが魔法のようにハリネズミ、ビーバー、トナカイなどに変身し、スローを救う。いつしかリンドキストとのあいだに芽生えた強い絆を信じて、スローは雪の荒野を駆け抜ける…。勇敢な少女と不思議な生きものたちが繰り広げる冒険ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • スローという少女が、種の保存のためとは知らずにリンドキストを母親から引き継ぎ、収容所をはじめ森の中や凍土など東奔西走する物語。

  • 淡々とした書き口の一人称で綴られる、近未来のSFファンタジー。

    ヒロインはまだ幼いはずの少女ですが、厳しい環境の中、嫌でも大人にならなければならなかった、歪みのある大人びた子ども。

    環境問題に訴えた作品ですね。テーマは非常にわかりやすいです。

    しかしストーリーそのもの、となると、淡々とした中に難しい“設定”が散りばめられていまして。近未来の話なのに、えらく古めかしさを覚える不思議な世界観です。

    一人称なのに三人称の作品に思えるほど静かに淡々と時に冷酷に書かれていて、読んでいると自然とこの作品世界の冬の冷たさ、雪の白さ、“心のシベリア”と言う情景が浮かんできます。

    テーマも重いですし、決して面白おかしい作品とは呼べません。筆者はロシアの方かと思ったら、どうやら英国の生まれとか。ちょっと意外でした。なんとなしに英国YAと言うより、スウェーデンの作品に雰囲気が似ている気がしたので。ロシアと思ったのは単に舞台が極寒の大地でウォッカが登場したからです。

    ページが進むにつれ、“あれ?もうこれだけしかページが残ってないのにどう結末までこぎつけるんだ?”と言う不安のようなものが。それ程予想を裏切るじれったさなのですよ。劇的な展開はあっても、進展よりは足留めに感ぜられるものばかりなのです。

    引っ張りに引っ張った伏線の答えが意外と小型の爆弾で拍子抜けもしました。

    技法として、先に“結果”を書き、追い掛けてそう至った“過程”を書く、と言うのがちょこちょこ使われているのですが、私はあれは無い方が良いように思います。ひねればひねるほど過程が道化にみえるので。この作品においては効果的に使われていませんでしたね。

    厳しい環境の中で生きる人たちの歪み。悲しくなります。

    登場人物に関して言うと、あまり一人一人に移入するほど関わりを持ちませんね。もう少し移入させてくれてもいいかな、と思いましたが、それこそが狙いかも知れません。主人公の目を通して映し出される世界の一片、世界の有り様を、ドキュメンタリーフィルムにおさめていくかのような淡々とした描き方。淋しさをあおります。

    展開や伏線の回収などには物言いの余地ありですが、テーマ性はブレておらず、すっと読めます。読書感想文向き。

  • 装丁画が好きな絵描きさんだったので惹かれて。生きるには冷たくなり過ぎた世界を女の子が足を引き摺ってでも旅をする話。リンドキストの子どもたちが魔法みたいで好き。生命って魔法のようです。彼女ががんばったことで世界が救われたりはしないけれど、良い方へ向かう一歩になったように読めました。学者や技術者といった何かを探究する人々の仕事ってそういうものなのかも。

  • 可愛い表紙に惹かれて。野生動物がほぼ絶滅した近未来の地球で不思議な生物リンドキストを育てる少女スローの物語。収容所や監獄のような学校で暮らした上に売られたり、結構悲惨な話でした。結末はいまいち・・・ハッピーエンドはいいけど、過程全く書かれてないから疑問だし。あれなら最後のは無くても良かった気がする。

  • 異常気象で野生動物が死滅してしまった近未来物語。母とともに荒野の収容所に送られた少女スローが自身のプライドの高さから窮地に陥ったり、自身の甘さから人を傷つけてしまったりと、なかなかハードで読み応えがあります。ただ中盤以降はちょっと単調な気も……。

  • 主人公スローの過去を未来に運ぶための冒険。

    異常気象で犯罪者とその家族だけが地上で生活し、普通の人達はドームの中で暮らす世界。
    スローは父親の犯罪により都市から地上の収容所に母親と連行される。
    スローは母親に未来への希望の箱を託される。それを都市に運ぶためスローは母親の残した情報を頼りに一人で収容所を脱走し過酷で孤独な旅に出る。

    この本を読んで思ったのは、今生きている人間への警告。(作者がどう思って書いたかは不明)
    何年後かはわからないが、本と同じ世界が現実になっても可笑しくない。
    人間のエゴが壊した世界のバランス。
    元に戻そうとする人間。
    矛盾してるけど、これもバランス。

  • 北へ旅するリンドキストとスロー。
    最期の結末が、あれ?って感じでふに落ちなかったのですが、スローの純粋な心に惹かれます。

  • 主人公の強さが大好きです

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