楽園 下

著者 :
  • 文藝春秋
3.64
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感想 : 330
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163263601

感想・レビュー・書評

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  • この小説で宮部みゆきさんが私の好きな小説家に確定しました。

    この小説は単行本では上下巻でおおよそ700ページ。文字は標準の大きさ、余白も普通なので、ちょうど良くたっぷりしています。

    複雑なプロットの上手さ、人の心の奥底の描写の深さ、残酷な事件を扱ったにもかかわらず、そのに流れる人を見る目の温かさ、読後の残る余韻と満足感。感動しました。

    どの登場人物の心情の表現も素晴らしかった。
    たとえば『愛情を注いで、懸命に育ててきた我が子が、自分の手から離れ、親の目には見えない流れにすくいとられて、みるみるうちに遠ざかっていく。手が届かない。声が届かない。振り返ってくれた子供と目があっても、そこには理解しがたい暗い色が見えるだけだ。』では、子供の反抗期を思い出した。

    同じ作者の古いものを20冊ほど買い込んだので、しばらく宮部みゆきさんにハマろうと思います。
    代表作『模倣犯』はタイトルが残酷なイメージで手に取りませんでしたが、これから読もうと思います。

    小説から少し気持ちが離れて実用書に傾いていたところを引き戻されました。あとがきがまたとても良いです。



  • 続編も再読。
    途中から、あ、そうだった。ここは覚えてる。などと思いながら読み進む。
    下巻で中心をなしていく16年前の時効となった殺人事件。
    どうして娘を殺してしまったのか…新たに見えてきた人物の影に前畑滋子が迫る。

    思春期は、人と自分を引き比べてしまい、どうしても負の感情に傾きやすい時期だ。けれど、大抵の場合はどこかで折り合いをつけて、息苦しい年頃を乗り切っていく。
    残念だが負の要素を助長してしまう人間に惹かれてしまったのが、この殺された少女が戻れない道を辿ってしまった一因だろう。家族でもどうしようもない事があるし、家族だからこそ冷静に見極められない事もある。
    そんな重くるしい物語の進行の中で、唯一救いがあるのはやはり、萩谷敏子の存在だろう。しかし、このタイプの女性は今や絶滅危惧種である。

    この小説は、15年近く前に書かれたものだ。
    その間に様々な事象が起こったが、家族を取り巻く世界はますます難しいものとなっている。
    大抵の人たちは、今、今日を生きるので精一杯だ。
    自分も就職氷河期だったので、何とか時代にすがりついていくことだけに必死だった。
    未来の夢を描きにくい子どもたち。もっと真摯に考えなければ。

    感想が飛躍したが、あまりにも簡単に月日は流れるものだと深く感じ入ってしまった。2019.10.12

  • 家族がどうにも更生できないような状態になった時、親や兄弟は一体どうしたらいいんだろうか。
    土井崎夫妻の決断は正しいものだったんだろうか。わからない、きっと誰にも。
    更生させることはとてつもなく困難だと思う。でも親ならとことん向き合う必要があるのか?すっきりしない終わり方。

  • 「模倣犯」から9年後の別の事件、ルポライター前畑滋子がまた関わってしまった。出だしは超常現象の解明風に始まったため著者の「おそろし」の現代版みたいになるのかと思っていたら、やはり難解な事件に突入し、また著者のテーマとも思われる、悪は感染するのごとく事件はつながっていく。一般家庭でもちょっと間違えば起こりかねない事件であり、その時家族はどうすればいいのだろうかという問いかけだけが残ったが、最後に敏子さんに幸せの兆しが見えたところで救われた感じだ。

  • 楽園 下 単行本 – 2007/8/6

    人間というものの醜さ、弱さを考えさせられた
    2012年3月15日記述

    宮部みゆきの楽園の後半部分である。
    前半から一転し物語は一気に核心に進む(当たり前だが)
    人間を支配する、生殺与奪を握り間違った満足感、全能感に溺れた者が犯人であるという設定。
    これは実は模倣犯でも同じであったという。
    実際の事件の規模は違うが人間というものの醜さ、弱さを考えさせられた。
    (もちろんフィクションではあるけれども)

    また身内にどうしようもない人物がいるという設定も誰にとっても他人事ではなく色々と考えさせられた。

    大半の人間はつきあいをやめるのだろうが・・・と言っても本書で登場した金川会長のような態度を持つ人がいなくなってしまっては社会はますます住みにくくなるのではないだろうか・・など色々考えは広がる。
    当然だが、答えは本書にはない。
    しかし考えぬくこと、様々な事態を想定すること、発想を豊かにすることが大事なのだというメッセージが
    本書にあったように思えてならない。

  • 面白いです。

    息もつかずに読んでしまいます。

    次から次に明らかになる秘密、オトナ社会のウヤムヤ。
    放置される性犯罪者、子の言いなりの親。甘えるだけの子供。保守に走るばかりの学校。

    現代の社会問題をふんだんに取り入れて、異能という部分も加え、
    愛情、渇望、断絶、利己主義、母性等々、もうてんこもり。
    主人公の察しがいいのと行動力(と嘘)で、物語の展開がまことにスピーディ。
    飽きることを知らず上下巻読み終えてしまいます。

  • 『楽園 上』を読み終えて、下巻をすごく読みたくなった。

    下巻

    無関係にしか見えない伏線(当然意味がない物はないはずですが予想できない感じ)が収斂されていきます。
    見えたくなかったものにたどり着くとき、人は無意識に「逃げ」てしまいます。
    でも見えてしまったものは見るしかないですね。
    そんな「見る」を感じる話でした。

    私は宮部みゆきさん作品で『火車』が好きです。
    普通の人と違う能力を人は望みます、羨ましがります。
    でも得た人は違う能力に戸惑い、苦しみます。

    「宮部みゆきさんの物語は、フェアであることを意識している」と聴きました。
    片方だけでなく、もう片方の視線を常に意識していることを感じました。

    『楽園』
    望みなんでしょうか。幻なんでしょうか。

    「楽しい」時間、場所。
    誰にでもつかむ権利があります。
    誰にも遮る権利はないです。

    あ~、いろいろ考えさせられます。
    良い話です。
    また『模倣犯』を読み返したくなりました。

  • 上巻でかなり期待が膨らんでいたのでしりつぼみ感があります。どんでん返しはいつ来るのかと思っていたらこなかったなぁ。

  • 模倣犯から9年後、フリーライター前畑さんの元に息子が超能力者かもしれないという相談が持ちかけられる話。依頼者の息子の力が本物か探ると別の事件とぶつかり、先がどうなるか気になる。真相が徐々に明らかになるにつれてしんどくなる。模倣犯を彷彿とさせる

  • 宮部みゆきさんでいちばん好きな作品。
    模倣犯の続きの前畑滋子さんのお話。
    人の心を読める等くん…等くんのお母さん。
    聖子ちゃんに茜さん。
    過去の事件の中でいろんな事件や感情が分かってくるような
    物語。
    前畑滋子さんが、等くん。分かったよ。って語りかけるところがめっちゃ好きです。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

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