私の男

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著者 : 桜庭一樹
  • ¥ 1,550
  • 文藝春秋 (2007年10月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163264301

私の男の感想・レビュー・書評

  • 桜庭一樹さんの『私の男』

    「優雅だが、どこかうらぶれた男、一見、おとなしそうな若い女、アパートの押入れから漂う、罪の異臭。家族の愛とはなにか、超えてはならない、人と獣の境はどこにあるのか? この世の裂け目に堕ちた父娘の過去に遡る―。黒い冬の海と親子の禁忌を圧倒的な筆力で描ききった著者の真骨頂」

    話の展開の仕方は好きだけど、娘を持つ身としては、父娘の近親相姦だけは感情移入してはいけないなと……

  • 「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。」
     装丁も然ることながら、冒頭のこの一文に異様な空気を感じ取る。その予感は正しく、この物語には世間一般からかけ離れた倫理観を持つ父娘の世界が詰まっていた。読後もしばらく引きずる。近親相姦、殺人、はたまた家族愛?児童虐待?背徳的な内容に嫌悪感を覚えつつも、家族の定義ってなんだろう、どこから歯車が狂ったのか、とか答えの出ない問いが延々と頭をもたげて離れてくれない。
     9歳で家族を失くし、親戚である淳悟に引き取られてから、故郷を捨て、淳悟と離れようと決意するまでの経緯が、逆順の時系列で描かれている。この遡る構造が非常に巧みで、伏線を一つ回収しては新たな謎が鏤められるため止まらない止まらない。また、章ごとに一人称が変わることも、物語に厚みを増す材料になっている。
     以下章ごとに気になった点。

    『第1章 2008年6月 花と、ふるいカメラ』
     結婚前夜。淳吾が花に手渡したふるいカメラ。花はなぜ淳悟のことを、「おとうさん」「淳悟」「私の男」とコロコロ呼び名を変えるのか。

    『第2章 2005年11月 美郎と、ふるい死体』
     霊感があるという美郎が、花の家で見たもの。美郎が無職だという淳悟に問いかけた、「毎日、いったいなにをしてるんですか」に対する答え。「……毎日、後悔」いったい何に後悔?

    『第3章 2000年7月 淳悟と、あたらしい死体』
     第二の殺人。二人の狂った倫理観がむき出しになる。「身内しか愛せない人間は、結局、自分しか愛せないのと同じだ。」

    『第4章 2000年1月 花と、あたらしいカメラ』
     第一の殺人。「親子のあいだで、しちゃいけないことなんて、この世にあるの?」「世の中にはな、してはならんことがある。越えてはならん線がある。神様が決めたんだヨォ」
     海と陸の境目、あの世とこの世の境目、してはいいこととしてはならないことの境目。流氷とのコントラストがすごい。

    『第5章 1996年3月 小町と、凪』
     淳悟を愛した二人の女。私の命は私だけのものだという小町に、「わたしはね、おとうさんのものだから。殺されたって、ぜんぜんかまわないんです」と言ってのける花。花の子育てにいろいろなものを奪われていると思っていたけれど、花から何かを奪っていることに気づく。

    『第6章 1993年7月 花と、嵐』
     花と淳悟の出会い。津波で9歳まで過ごした家族と別れた花は、一緒に死ねなかった家族を憎み、淳悟と離れたくないと感じるようになる。花を「血の人形」として扱い、母を求め、それを受け入れた花。二人の異様な関係のスタート。

     映画版の淳悟は浅野忠信。切れ長の目、痩せて長身、女にだらしがない、実社会から浮いてる・・・イメージ合いすぎてる!!

  • 先に映画を見た。
    よくわからないところがあって、原作が読みたくなった。

    まずは、頭からふつうに読んで、2度目は最後の章から逆順に読んだ。
    どちらも読後感は、悲しいような寂しいような、何か大事なものを失ってしまったような感じがした。
    最初から読んだ時は、希望で終わるから、なんだかやるせない気持ち。
    一章を最後に読んだ時は、これで良かったんじゃないかという気持ち。

    映画では、
    ふたりの関係を支配していたのはいつの頃からか、花になっていたような感じで終わったけれど、原作を読んで、やっぱり支配していたのは淳悟なのだろうと思った。
    花の方から逃げて行ったようだけれど、淳悟ははじめからこの日がくることを知っていたような。
    ふたりの立場が変わるというところを、原作ではふたりの秘密の時間として、映画では全体の流れとして描いてるような感じがした。

    死体を放置したら近所の人に気付かれるだろうという指摘もあるようだけれど、
    それだけこの二人が社会から孤立していたことを表してるのだと思った。
    家に来た美郎が気付かなかったのも、ふたりの秘密の空間に入ってしまったから彼はその間現実と切り離されてしまったのかな。

    近親相姦とか虐待とか、そういうテーマだと思うと確かに気持ち悪いけれど、
    愛とは?親子とは?というテーマで考えても、私はどんどんわけが分からなくなる。

    ただ、なぜ淳悟はこんな行動を取ったのか、
    なぜ花は受け入れたのか、このふたりの関係性ってなんなのか、そのことだけを考えながら読むしかできなかった。

    映画からはじまって、原作を2回も読んで、
    その間ふたりのことで頭がいっぱいで、
    すっかりこの世界の住人になってしまった。
    そろそろ私も戻ろう。

    2016.09.02読了
    2016.09.09.読了

  • 嫌悪感を感じながらもドキドキする。好きじゃないけどやめられない。
    最後、なんかせつないなー
    ずっと一緒にいてほしかった。

  • 桜庭一樹「家族」三部作の第二作目。

  • やっと、読めました。本屋で探してもなかったのに、図書館にフツーにありました。

    映画の方を先に観たので、なんとなく話は解っていましたが、どんどん過去に遡る書き方は、新鮮でした。

    他の登場人物の心理描写や、花ちゃん自身の心理描写、映画にはあまり描かれていなかった、最初の頃のことや、父と知ったときのこと、淳悟が、最初は普通?っぽかったのに、だんだん世の中から、はみ出た人ななっていくような様や、花に母性をみているところなんかが、本を読んで、いろいろ分かりました。

  • 現実にはあってはならない話。ありえない話。
    でも、こういう関係にしかなれなかった2人がとてもやるせない気持ちだった。
    ちょっと後味が悪かった。

  • 花と淳悟。

    オレの。私の。
    云いきれる強さがスゴイ
    と感じた。


    ふたりの事、ほっとけよ。
    田岡、大塩。
    なんか、ちちゃい。
    そんなに善と悪を設けたいのか
    って想いがする。
    実際いそうだけど。


    淳悟。

    読み始めは、なんかすすけた感じで
    なんか汚いだけの印象だったけど
    それとは逆のキレイな気持ちの奴。
    なんだなって想うように。


    花。

    ひとりでいるときは、
    強くてキレイで素直でいるのに
    他が介入すると、一気に
    自分を卑下しちゃってもったない。
    でも、そんなよわい気持ちも
    あって自然なんだね。

  • 養父との関係性に驚いたけど、面白かった

  • 私、腐野花と、私の養父にして最愛の男、淳悟。
    私と私の男。
    ふたりの、15年に及ぶ物語。

    すんばらしい。
    6章で構成してあるのだが、 1章ごとに、 二人の生きた時代が遡って描かれてゆく。
    最終章では、少女の花と青年・淳悟との出会いの日々が書かれている。

    第1章では、二人の奇妙な関係性が単に奇抜に思えて、
    腹に落ちなかった。
    だが、章ごとに、二人が積み重ねてきた日々が
    明らかになってゆく。
    二人の過去を詳らかにする各章を読み進めるに従い、
    重心が下に下りてゆくような感じがあり、
    しっかりとした生活史の実感が伴ってくる。
    私と淳悟の愛の生活が、俄然リアリティを増してくる。

    淳悟の存在感、人物像が面白い。
    紋別の海上保安官。長身で口数は少ないが、ふしぎな色気のある男。

    紋別。北海道北東部の海辺の小さな町。
    この町の生活感、辺境の地方都市に暮らす若者の生活実感の描き方がなんとも巧い。
    自分はこれまで、北海道のあちこちを旅したことがあり、辺境の小さな町を幾つも通ってきた。地元の人と接したこともある。
    だが、こういう北海道の小さな町で生きてゆくと決めた若者は、どういう思い、生活感を持っているのだろうか…、そんな疑問を埋めることが出来ずにいた。
    僕の中で長らく手掛かりの材料が無く空白のままだったその部分に、花や、彼女の周辺に生きる女・銀行員の小町の独白の物語は、じわっと浸み込むように、解を与えてくれた。あの土地に生きる人たちの生活感を、切り取って読ませてくれたのだ。少なくとも、そう思わせる読み応えがあった。

    北の海辺の小さな町の生活感のリアリティ。
    二人の愛の湿度、家族であること、家族であることを確かめずにいられない心細さと淋しさ。

    巧い。 傑作。

    P.S.次は、最終章から1章へと逆に読んでみたい。

  • 現在から少しずつ過去に向かって記述していく文章が新鮮。急などんでん返しというより少しずつ解き明かされていく感じが読んでいて楽しい。
    主人公の、自分の生を肯定して受け入れる芯の強さが魅力的。

  • 映画みてから原作を。
    おもしろかったけど父娘で関係持つのにものすごい嫌悪感。
    前はここまでじゃなかったけどな。

  • 物語のはじまりの描写が印象的で、ぐっと引き込まれた。あとは一気読みだった。見てはいけないものをドキドキしながら覗き見しているような感じ。見ていて決して気持ち良いものではないのに、そこに美しさや尊さを感じさせるところが魅力でした。

  • カテゴリ化するのは無粋な話だけれども、ヒロインは綾波レイ的な何かだよなぁ、という雑感。処女に母性を持たせる聖母性ほど淫心を擽られることはない。
    エログロナンセンス三拍子揃えて勢いで読ませる筆力、薄い本と言われる界隈で好まれそうな題材を山盛りにし破綻させずに多視点(この辺りも薄い本らしさがある)及び逆順時系列を使い纏め上げる構成力、文章内の比喩表現が美しく湿度の高さを見事に表現していて、すばらしいと思う。

    ところでナンセンスはどこにあるのかというと。
    もうそもそも冒頭の結婚が成立してしまうところやら、押入れの中身の腐乱を考えないところやら、(能力についての言い訳はあるにせよ)「目を見ればわかる」やら。現実的に考えたらそこはどうなの? あ、でもこの物語にリアリティは必要ない部分なんで削ったんですねわかります、としか納得出来ない部分。無理やりそう自分に言い聞かせても、喉に刺さった魚の小骨のように、世界に浸る邪魔をしてくれたけれど。

    全体的に文章がひどく官能的。男の手の乾燥した様や唾液の粘度の高さや乾燥した愛液など、水まわりの表現にくどいほど気を遣っているせいだろう。若干しつこく感じる程であるが、でもそこがまた滴るようですばらしい。エロスに湿り気は必須なのである。
    でもこれだけエロ描写が卓絶していても、この小説は官能小説ではないのである……不思議だなぁ。

    文庫版の表紙絵を見かけたけれど、"男"の両目は色のないマーガレットのような”花”で、干からびたような無骨な手だけが色を持っている。やはり男の手は強烈に意識に残るものとして作中に描かれているのだろう。

  • はじめの章から順に読んでいくより最終章から逆順に読んだときの方が二人の別れがせつなく胸に迫った。

  • 書き出しがぞくっとした。
    引き込まれてぐいぐい呼んでいった。あの物語を描ききる筆力は流石だと思う。

    罪の匂いが甘い香りのように見えた。物語全体がねっとりとした暗さに覆われていて、だけどそこが作品の美しさの根底にある感じがした。

    いくつか残された謎があったが、作品の面白さは申し分ないと思う。

  • 父と秘密と関係をもつ女性の話。

  • なんだ?この終わりは?

  • 読了2回目

    こんな終わり方だったっけ?

    物語は現在から過去に向かって進んでいく。

    間違ったことをしていた2人なのに、最後に幸せな結婚が出来た花は良かったと思うけど、安定した海上保安官の立場を捨てて、どんどん荒んでいった淳悟はどうなったんだろう。

    結末はこれが一番良かったんだろうけど、なぜだか花にはお父さんから離れないで欲しかったかも。

  • 親子間のタブー愛という先入観を持って読んでみたが、これは真の愛の物語と思う。そして人の心はいつまでも同じ所にとどまることができず二人は父として年頃の女性として離れて生きるのを選んだ。それが話の結末。すごくいいエンディングだと思った。明るい未来がありそうでないような終わり方。
    全てを受け入れてくれる、愛してくれる人は異性、同姓、親子とか関係ないのです。そういう人に出会っただけで充分ラッキーと思う。25才の淳吾は9才の花に救いを求めて花は、それを受け入れた。その場面は切なくて涙が出そうだった。タブーであるけど、そういう愛もあるかも。。

  • 個人的に苦手な作風だったが、なんとか読み進められた。センセーショナルと言われればセンセーショナル。これが映画化されたとは…!

  • 怖いくらいに凄い。

  • ドキドキしながら引込まれて読んだけれど、結局近親相姦。気持ち悪い。淳悟最低。

  • 凄く評価はわかれるだろうけど、
    わたし的には久々に刺さった。
    読まない間も気になって、気になって、
    映画の登場人物を見て読んだらハマっててさらに進んだ。
    母が憎くて、でも認められたかった。
    「ものすごく、さびしい。…たえられない」
    からのくだりがすごく理解できた。
    一本線だけの固執が分かる気がした。
    私は生物学上の父には死んで欲しいので父子関係としては憧れないけども

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