- Amazon.co.jp ・本 (514ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163268903
感想・レビュー・書評
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丸山健二 「 日と月と刀 」 上巻
作者不詳の重要文化財「日月山水図屏風」がモチーフ。「日月山水図屏風」の絵師 無名丸を創作して、その生涯を描いている
「千日の瑠璃」と「日と月と刀」は 日月山水図屏風を描いた 表裏一体の関係。日月山水図屏風の生きている万物を描写した 「千日の瑠璃」、日月山水図屏風の絵師の生涯を描いた「日と月と刀」
文体に慣れれば、ストーリーがあるので、「千日の瑠璃」より「日と月と刀」 の方が 読みやすい。
日と月=父と母、万物、日月山水図屏風。刀=無名丸、闇 とも読める
「日を直視するでない、月を愛でるでない、刀を信じるでない」
「日から逃げてはならぬ、月を追ってはならぬ、刀を後に残してはならぬ」
「日と共にあれ、月に従うなかれ、刀の独り言に耳を傾けよ」
津波の光景が上巻のクライマックス
「信じがたい規模の万事を破滅へと向かわせるうねり〜島々に対して牙を剥き、荒々しく岸を洗い、木々を根こそぎ打ち倒し〜恐怖の中の恐怖によって世界を占領した」
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全編、細字と太字によって繰り返し ナレーションされる
印字による文体がとにかく異質だ。
強弱 をつけることによりシテアドによって語られる
室町時代に開花した、日本の文化である
能の世界を彷彿させるが如くだ。
そして
それを、丸山健二の独特な、文法語彙で構築する。
これは、まるで、岩佐又兵衛の描く凄艶な殺戮と狂乱に溢れた絵巻物を見る趣がある。
おそらく、絵巻物として多く遺存する室町期の御伽草子の仇討ものをベースにして
この、傍若無人な旅人を主人公にした冒険物語を
独自の世界観を念頭にし書き上げたのだろう。
丸山の描き上げた、この絵画的な、一人の男を巡る絵巻物は
すべて完璧に、ダイナミックに原色で彩られ、一分の隙もない神々しさだ。
この物語には季節は、まったく流れない、唯一流れるのは人間の体内を縦横に流れる
赤い潮だけだ。
それらは、絶え間なく激昂し言の葉を発し
時の流れを凌駕し、読者にそれを感知させない。
読後は、ただ、この物語の美しさに陶酔する。
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このように表記してくれると、丸山氏の文体も腑に落ちる。
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節(見出し文+長文)の繰返しで物語が展開する。新聞を読んでいるようだ。