- Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163272306
感想・レビュー・書評
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短編集。
それぞれに基となる史実や作品があって、私はそれら全てをちゃんと知っているわけじゃない。説明なしで放り込まれて、読むうちになんとなく分かったような気がする程度なのに、つまらないとは感じないのだ。ちょっと中毒なのかもしれない。
面白かったのは「金の象眼のある白檀の小箱」で、1810年ナポレオンの時代のある伯爵夫人の手紙。
将軍の妻と不倫をした自分の夫に宛てて、不倫がバレてしまった将軍夫婦の騒動を綴るなんて、なかなかすごいな。
巻末には作者による解題があって助かった。
まあそれがあっても、ちゃんと楽しむには教養が足りてないのを自覚するのだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
佐藤亜紀さんには珍しい短篇集。
私は最初の2篇と最後の1篇が良かった。
最初の2つを読んでいる時は、佐藤さん特有の、翻訳のような文章とその美しさに溜息が溢れ、さすが佐藤亜紀さん!と思った。
でも3つ目と6つ目が読みにくくて別の意味で唸ってしまった。
「アナトーリとぼく」はほぼ全てひらがなとカタカナなので、読むのがすごく疲れた。勿論わざと疲れる文章にしていて、そこに意図があるのだけど。
①弁明 /サド侯爵が状況と心境を語る話。語り口とその弁明がとにかく面白い。
②激しく、速やかな死 /ジョン・コリリアーノの歌劇(ホフマン脚本)「ヴェルサイユの幽霊」へのオマージュとのこと。タイトルになるのが納得の傑作。ギロチンに処される前の部屋に閉じ込められた人々。
③荒地 /アメリカへ逃げたタレイランのアメリカに対する感想の一人語り(フラオー夫人への書簡という設定)
④フリードリヒ・Sのドナウへの旅 /ナポレオンを暗殺しようとした青年の話。
⑤金の象眼のある白檀の小箱 /オーストリアの政治家メッテルニヒの妻が夫に書いた手紙という形式。夫の不倫相手のロール・ジュノとその夫ジュノ将軍の騒動について。
⑥アナトーリとぼく /ぼくはくまなのでひらがなとカタカナしか書けない。トルストイの「戦争と平和」を佐藤亜紀さんが訳したもの(皮肉を込めてということだろうか? 作者による解題に〝何語で読んでもピエールは道徳フェチの糞ナルシストであり、救いがたい利己主義者である〟と書かれている)
⑦漂着物 /ボードレールの「白鳥」より。変わりゆくパリについて。文章が素晴らしいく、うっとりする。美しい締め。 -
面白い部分もあり、難しくてよく分からない部分もあった。
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フランス革命期(国内、ロシア、アメリカも)が好きな人にはたまらない短編集。冒頭のサド侯爵の独白は藤本ひとみファンにはグッとくる。
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2009-06-00
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サド侯爵の独白、ナポレオン暗殺未遂事件の顛末、等、実在した人物や歴史的事実を独特に解釈し皮肉にも面白おかしくも描いた短編が収められている。
そもそものネタ元に対する知識があるともっと楽しめたのだろうけれど、無学な自分には知らない話も多かったのが残念。
読んでいて、「エスプリ」という単語が頭の中をめぐった。
高尚なユーモアを楽しむには教育と知識がいる、という欧米の文化を体現したような一冊だった。 -
文章は流石なんだが短篇集なのに加え何より内容がちょっとハイブロウすぎてだな。
ちなみに一番楽しめたのは「金の象眼のある白檀の小箱」、後『戦争と平和』が元ネタらしい「アナトーリとぼく」も元ネタ読んでないんでようわからんながらもなんとなく面白かったです。 -
歴史的背景を知らない場合、面白さが半減すると思われる。もちろん自分は知らないほうなので、この作品は残念ながらこの評価。
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こんなにも己の無知さが悔しくなる本は初めて。フランス史に明るかったら、もっとのめりこめるのだろうなぁ…と。
とはいえ、分からないなりに表題作と「荒地」が好き。
以前、何かの本の帯に「(描写について)この作者は一度死んだことがあるに違いない」というコピーが書かれていたのが印象に残っているのだけれど、表題作を読んでふとそのことを思い出した。この方はギロチンにかけられたことがあるのでは!?と疑ってる/笑。