W/F ダブル・ファンタジー

著者 :
  • 文藝春秋
3.16
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本棚登録 : 2062
感想 : 371
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163275307

感想・レビュー・書評

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  • 私の拙い恋愛経験では、読み下すのが難しい作品でした。

    相手に求めるものが、男性と女性では大きく異なることを主人公であるナツのそれぞれの恋愛で浮かびあがらせています。今更ながら、その差は大きくて、現実世界でも、差を埋めようと思う方が間違いのような気がします。

    仕事は割り切ってやれるので、学生時代に相手にハッキリとモノが言えない人でも、社会人を長くやっていけば克服するできるものですよね。これは、私の実体験でもあります。なので、ナツがプライベートでだけ、はっきりと言えなかったところはよくわかる気がします。

    情事の描写が細やかすぎて、官能小説みたいでしたが、ここまで描かないとこの小説は成り立たない、そんな気がしました。

    しかし。。。
    人としてもよくできていて、それでいて夜も完璧に自分にフィットしている人。そんな人はなかなかいないですよねー。

    ドラマ化もされているようですが、こんなの映像化できるん?Netflixとかだったら良かったのに。

    あと、女性目線での感想を知りたいので、他の方のレビューをこの後読みたいと思います。

  • 村山由佳の本は何冊か昔読んだが
       「星々の舟」が一番感銘した。すごいと思った。
    「ダブルファンタジー」も次によかったかな。女の気持ちを覗かせてもらった。

  • 2021.5.5文庫本にて読了。

    説明
    内容紹介
    女としての人生が終わる前に性愛を極める恋がしてみたい。35歳の脚本家・高遠奈津の性の彷徨が問いかける夫婦、男、自分自身
    内容(「BOOK」データベースより)
    奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ―。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら―そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。

  •  人の顔色ばかりうかがっていた主人公が、あるきっかけを機に『自立』し、顔色ばかりうかがうのではなく、自分ひとりで生きていけるように生きていく物語。
     官能の部分が、というレビューをよく目にするけれども、そこはあくまでそういう部分が強く全面に押し出されているだけで本質ではない。と、思う。
     だったらしょっぱなからそういった文章だけで構成していけばいいだけのはなし。
     これはあくまで、(自分が自分を、もあるし、他人から自分が、ともいえるのだが)押さえつけられていただけの自分じゃなくなる、独り立ちするという物語だ。
     演劇の世界にのめりこみ、脚本家としても成功し、順風満帆な生活を送り、でもそれは自分の才能もさることながら他人に押さえつけられていたからこそ続いていたしあわせで、しあわせのかたちは一つだけではない、ということを知った、じょせいのはなし、なのである。
     おんなだけでも生きていける世の中にも、なってしまった。細胞の問題だけれども。この作品でそういった意味合いの言葉は出てきていないけれど、それだけ、女性がちからを持つ、とは、男性にとっては恐怖の対象でしかないのだろう。
     男性は、自分に属さない女性を厭うものである。
     だから、主人公が自分のちからで生きると決めたとき旦那である省吾は猛反対したし、傾倒させた志澤はにこりとほほえんだ彼女に毒気を抜かれた。離れそうになったと知ってからいそいそと愛情表現を始める岩井、なんだかんだ言いながら自分のものにならないと拗ねる大林。坊さんはスルーで←
     なんだ、オトコってこんなに軟弱だったっけ?とげんなりする奈津の姿が目に浮かぶ。
     志澤がいなければここまで独り立ちすることもなかったけれど、あんな口調の人間にトキメく奈津がよくわからない。まあ女性は得てして多少強引な自分のことを好きな人、が好きだからなあ。あくまで自分に好意を寄せていて、リードしてくれる、ということ。
     世の中のレイプとかとは違うから、それをはき違えると大変な目に合う。
     恋愛体質、なるほど言いえて妙だ。恋愛していないと枯渇してしまうのだろう、奈津は。だれかを好きでいないと、だれかから好きでいられないと、哀しくなる、寂しくなってしまうわけだ。
     誰かに共感するわけではなかったけれど、一度好きになった人でも嫌悪してしまうとふれたくなくなる、というのにはうなずけた。
     いくら好きでも、傾倒していても、ふとした瞬間からほころび始めて、嫌悪という感情が浮かんでしまうと、さわられることすら厭う。興味が失せたとか、なにも感じないとかではなく、ただ、嫌悪。
     とりあえず、旦那の省吾はモラルハラスメントが過ぎる。ほんとう、自分じゃ正しいと思っているから、たちが悪い。世の中の男性諸君、省吾とおんなじことをだいたい一回はおこなっているって、わかってますかー?w

     あ、ちなみに四百ページうんたらだったんだけれどもまあ一日で読み終えちゃったよね。

  • 村山由佳さんの本を読んだのはおいしいコーヒーシリーズ以来だった。

    村山さんの作品って、面白い、面白くないに関わらず読み始めると止まらない。文章が読みやすいからかな?



    今回の作品は官能の部分が多々、大部分あるんだけどいやらしく感じない。むしろ、女性ってこう思ってるよなーって共感できる部分のほうが多かった。
    登場人物は岩井さんが個人的にはいいなと思った。
    できれば最後は岩井さんとハッピーになってほしかったけど、やっぱり奈津はそういうタイプの人間ではないんだなと感じた。大林のことがあんまり好きじゃないからかなw
    志澤さんも中途半端であまりにも女性に対して無責任だなと思った。でも女性ってこういう男性に惹かれちゃうものだよなと感じた。

  • 村山さんの文章のうまさに感嘆し、そして私には刺激が強すぎるくらい官能的な描写も多かったけれど、村山さんの描く女性にはいつも共感させられるところが多く、夫婦の問題など考えさせられるところの多い作品でした。

  • あんまりにも多くの評がただのエロ小説だといっていたので、油断して読みはじめた。
    性描写が必要な訳や気持ちより体優先の話しだらけの必要性はやっぱり分からない。何処へゆく、村山由佳よ。
    前半の志澤とのやり取りは官能小説というには子供っぽく、恋愛小説というにはがつがつしていて、ただ離婚を考えるに至る主人公の心の動きだけが妙にリアルに浮かび上がった。志澤の言葉には多くの真実があるだけに残念。読者が夢中になるくらいいい男にしてあげれば良かったのに。
    となめた感じで読みすすめて、後半びっくり。どーでもいい坊主含めて三人の男との話は、恋愛としてもぐっとリアル。村山由佳は惑う心理を描くのが上手いんだったわ。惑うことを知っている人なら共感してしまう。分かっていてハマる、気づいたときには逃げられない罠。主人公が阿呆のように何も分からない顔をしているのが気にはなるけど、惑う姿は本物だし、人生は答えなんて手に入らないもんだ。
    意欲的に取り組んだのであろうメールでの睦合いや多分大胆を売りにしたい性描写は興ざめ。露骨に描くことを下品だとは思わないけど、さらっと描いて甘美に聞こえ、心理でなく描写で泣かせて欲しいもんだ。直木賞作品『星々の舟』ではいい制御が利いていて、次が楽しみだった。それができる作家になったと思ったのになあ。
    露悪という意味では作者本人のエピソードとだだかぶりで、私生活見せられたみたいなのも残念。頭を使うと滅入ってしまう。小説は所詮、自分の切り売りだ。生まれる物語は作者の人生だし、登場人物たちは作者そのものだろう。でも、ひねろうよ、せめて。これはあなたのことですねと言われないように。
    私は、私小説が嫌いです。
    というわけで次に期待です。デビューから押してんだからね。

  • 女として、こういう生き方もある。
    ただし、ずっと女でいなくてはいけない。
    女でいつづけることは、楽なことよりも苦の方が多い気がする。だから、女でいつづけたいものなのかもしれない。

  • 村山由佳さん久しぶりに読みました。
    学生のころはよく読んでて、「野生の風」とか「青のフェルマータ」とかが好きで。
    ちょうどアメリカ行ったあたりかなんかで「翼 Cry for the Moon」があって
    舞台がアメリカのサウスウェストにしてあって共感覚えたりしたなぁ。
    恋愛ものや学生ものも多いから青春小説みたいなのが多い印象もあって
    しばらく遠ざかってた時期もあったんだけど直木賞受賞した「星々の舟」はよかった。
    そうそう、村山さんのこういう話が好きなんだよ!と思ったのよね。

    で、本題に入ると、この「ダブル・ファンタジー」はいろんな意味ですごい。
    今までの村山さんの作品からするとがらり、と変わってる。
    何かあったんだろうか?と思わせるような感じなんだけれども……。
    年齢層もぐっとあがって、官能的で、性についてたくさん描かれてはいるけど
    ある意味一人の女性の自分探しとも愛探しとも呼べるのかな。
    性についてといえば村山さんの作品では「BAD KIDS」を思い描いちゃうけど
    あれは完全に思春期だし、ある意味ピュアだけど、この作品はいろんな意味でどろどろ。

    なんか女の欲望とか渇望とかいろんなものを見せられて
    同性としては一種の嫌悪感を持ちながらも(同属嫌悪なのかな)、
    わかる部分もあったりしてなんか複雑。
    でも、一度読み出したら止まらなくなっちゃって
    彼女はどこまで行くのだろうか、彼女の行く先は……と一気に読み終わった。
    正直オチなんてものはないような気がする。
    でもそれがやけにリアルというかなんというか。
    もしもっと若いときに読んでたら正直嫌悪感だけが残りそうな気もする。
    よくわかんないや、で終わるような気もする。
    でも30近くなってなんとなくわかるような。(でももうちょっと年とって読んだら更に違うかも)

    好きか嫌いかといわれるとどっちとも当てはまらないんだけど
    なかなか興味深かった!

  • 35歳の女性脚本家が主人公。
    尊敬する男に誘われ、家を飛び出したものの、男の嘘、夫の支配欲、
    自己の強い性欲などに翻弄されながら、自己確立していこうとするお話。
    性的描写が激しかった。
    が、それだけではなく、厳しく育てられ、モラル等に縛られて生きてきた女性が、
    本当の自分の欲望・・・性的なもの以外の、人として生き方も含めて変わっていく内容。
    最後に「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」とある。

著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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