グローバリズム出づる処の殺人者より

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制作 : Aravind Adiga  鈴木 恵 
  • 文藝春秋 (2009年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163275604

グローバリズム出づる処の殺人者よりの感想・レビュー・書評

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  • 大作の誕生を予感させる技量を感じるが、本作の場合、肝となる「温家宝への書簡」というプロットが、筋立てに何も貢献しておらず、惜しい。

    殺人に向かって鬱積してゆく低層カーストの男の、魂の揺れは、読者をはぐらかすような軽妙な語り口で書かれる。ガンジス川を訪れる観光客を揶揄する場面などに象徴的であり、21世紀の「読ませ方」としてはそうならざるを得ないことは理解できる。しかし、描かれる状況は過酷だ。

    一方で、インド世界に無知な読者を前提にして書かれており、インドの闇を「広告」することが主眼のように思える。いわば外部に向かった告発本。この小説を、同胞であるインドの読者が読んだ時に、彼らに何かを残すかと考えた時に、疑問は残る。

  • 主人を殺して成り上がった使用人の半生。インドという国の厳しさが、生々しく伝わってくる。

  • アラヴィンド・アディガ氏の「White Tiger (邦題グローバリズム出づる処の殺人者より)」を読了。著者はインドで生まれコロンビア大学を卒業の後タイム誌のジャーナリストとなってアジアに赴任したあとに本作を書き下ろし、何とデビュー作でイギリスの文学賞で世界的な文学賞の一つブッカー賞を授賞した。

    ストーリーはバンガロールで起業し成功した主人公が中国のの首相に書簡を書き自身の殺人を告白するといるかたちで展開する。一見ちょっとしたサスペンスのような雰囲気を醸し出して入るが、実は内容はいまのインドの内情を告発するもので現代インド批判の本となっている。

    まず民主主義のない中国の首相にガンジーなどの努力によりイギリスより独立し民主主義が機能していると思われているインドで成功しているビジネスマンからの手紙というスタイル自体が皮肉たっぷりであることに読みはじめてすぐ気付く。確かに議会制はあるが、いまだカーストの縛りに多くの人間とくに地方に居る人間達は縛られていて底から抜け出すのは不可能に近い実情が語られる。

    その不可能を可能にしたのが著者が犯した殺人であり、その事件で主人のお金を手に入れ、すぐに都会にのがれそのお金を使い起業し成功した訳である。

    もちろん殺人を礼讃しているわけではない。だが今のインドにはびこる癒着に寄る警察の腐敗、法曹界の堕落などが主人公の自慢話の裏にはっきりと読み取る事が出来るようになっていて、インドといアジアの中では多く話題になっている国家でありながらわれわれはその国の実情などはまったくもって知らない事に気付かされる。

    その気付きをもとめてジャーナリスト魂を燃やして書いたの
    が本作なのだろう。

     本作の中で耐え忍んでいるインドの民衆は市場で檻にとじこめられ、その脇でどんどんさばかれその肉がたまには檻の上にまでおかれる鶏達のようだという表現がある。これは他人事だろうか?胸に手を当てて一度考えてみる必要があるだろう。行動を起こさないとね。

    そんないま日本に蔓延している能天気さの危うさを気付かさせてくれるブッカー賞作品を読むBGMに選んだのはJohn Coltraneの“My Favorite Things"だ。いや久しぶりで爆音できくとやはり凄い。目が覚めた。
    https://www.youtube.com/watch?v=YHVarQbNAwU

  • インドにルーツを持つ作家による英文学は豊富で良作が多い、さすがである。
    発刊は2009年、4年前だが現在も同じ状況が存在していると思われる。BRICSの一角として大国になりゆくインド、アウトソーシング業界で成功した主人公。しかしその「光」の裏の「闇」の深さをとことん容赦なく描く。天国と地獄。ジャーナリストでもある作家が「真実を伝えたい」といったリアリズムだ。
    地獄から這い上がるための殺人の告白、といってもタッチは「スラムドッグ・ミリオネア」的なテンポの良さと軽妙さ。下剋上でもあり、「主殺し」により独り立ちする物語でもある。主人は「あっち側の人」の中ではむしろ善人で親切。しかし、生まれやカーストや隷従の文化は、彼を殺さなくては断ち切れなかったのだ。

  • ミステリ風味の物語で内容としては倒叙モノに当たる作品だが、ミステリは単に「味付け」でしかなくて、実際にはインドの現状(と思われる)社会状況を描くことを主眼にした作品。
    訳文が非常にうまくて、インドのピリッとした雰囲気、乾いた残酷さがうまく表現されている。多少なりとも現地をイメージできる人のほうが楽しめると思うが、そうでなくても、苦い思いで読み下すことが出来る一冊。

  • 殺人者の告白のかたちをとった現代インド批判の書であり、成長期の国の裏の顔を臨場感たっぷりに見せてくれる。しかし書き手の思いが強すぎ、皮肉な笑いをまとわせずにいられなかった様子。そこを良さと感じる向きもあるかもしれないけれど、かえって平板な印象を受けた。書きたい内容に対して書き方が性急なのかも。

    このテーマで本腰を入れられたらもう重厚長大過ぎてそもそも読めないかもしれないから、とっかかりとしては良かったかな。だったらノンフィクションを読めば、というツッコミが入りそうだけれど。

  • 読んでいると、インドの空気感がよみがえってきます。
    あのにおい、熱気、喧騒…インド人の顔。

    インド・バンガロールの実業家が自分の過去を中国の首相に向かって語る手紙、という形で書かれています。
    訳されているためか、独特の表現というか、一見「?」な皮肉がところどころあり。
    でも読んでるうちに慣れます。
    インドに行ったことはあっても、あまりにも日本と違いすぎてわけのわからないことだらけ。
    特に街中に溢れているインド人たちの日常と、あまりにも大きな貧富の差には疑問を感じていました。
    この本を読んで、少しはインドという世界について知ることができたかな?という気がします。

    インドとか、世界について知りたい!という人ならおもしろく読めると思います。

  • (スエーデンの大学院で学んでいた時分に、学内のポータルにアップしていたものを引っ越しています)

    One man's monologues as a form of letters to Prime Minister of China. The man first worked as a chauffeur for a family of wealthy coal merchants, killed his master to steal his money, and economically succeeded as an entrepreneur.

    The author, Aravind Adiga, is a graduate of Colombia University and mush belong to the top tire of India's social system. He might have seen a lot of real things of lower class people which he depicts in this story very vividly, but I assume he must have used a lot of imagination of how the lower class people really feel. He can never know. But even his imagined descriptions themselves are beyond my imagination so that real (I know the real thing exist in my mind) situations I will never know nor feel.

    Hopelessness, Hopefulness, Feel of being choked, Greed, Lust, Sympathy, Compassion, Despise on white men, Rivalry against China, etc. many many emotions are mixed in the story to form an ever moving chaos, which can be true to the present Indian society. It reminds me of the fact that there is a vast majority of excluded people in the shadow of a tiny minority benefitting from prospering economy.

  • ITビジネスの聖地、インド、バンガロールからある男が中国首相へ手紙を綴ってゆく形で物語は進む。彼はインドの90%を占めるであろう「闇」の住人を代表して、彼自身の半生を私達に語る。

    どこにでもいる使用人だった彼がなぜ、IT産業の聖地にたどり着いたのか、そしてどうやって闇から抜け出し、成功者へとのしあがったのか。

    この本の中で語られているのはインドで、インド人には起こり得る不平に満ちた人生であり、そういった天罰とも呼べるような宿命にインド人はいかにして平伏しているのか、そういった隷属を断ち切った男の物語である。

    なぜ私がわざわざ「インドで、インド人には」と言ったかというと、インドを訪れる外国人には決して起こり得ない仕打ちにインド人が耐え忍んでいる、言い換えれば檻に入れられた動物に見られる、あの諦観、己の人生に対する無関心、そうならざるを得ない不平が彼らには日常茶飯事であり、私たちには決して起こり得ないからである。なぜなら私たちは強者だから。外国人がインドで遭う仕打ちといえば、駅で荷物を盗まれるだとか、列車で睡眠薬を飲まされて金を奪われるとか、そういった不遇に過ぎない。

    そんな不遇がカワイイものに見えるような不公平がインドには蔓延している。

    手段はどうあれ、そんな社会の仕組みに一矢報いた主人公に私は少しばかり感動した。

  • 訳があまり好きじゃないかなぁーと思いつつ読み進めていたけれど、最後らへんでなるほど、と納得したのでそれでこの本はよかったんだと思います。冒頭で告白される、殺人ののちの成功。成功のための殺人。読者は顔を顰めるかもしれないけれど、よく考えたら、グローバリズムって"そういうもの"なのではない?あなたも誰かの血の上で、いまの生活を送っているのではない?という。
    インドにはいつか行きたいので、インドの本はぼちぼち読む!

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グローバリズム出づる処の殺人者よりの作品紹介

グローバリズム出づる処、インド、バンガロール。ひとりの起業家が、書を民主主義が没する処の天子温家宝に致す。「拝啓中国首相殿、あなたに真の起業家精神を教えましょう。主人を殺して成功した、このわたしの物語を」IT産業の中心地から送った中国首相への手紙は殺人の告白であった-。ブッカー賞受賞作。

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