泥(こひ)ぞつもりて

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163276601

感想・レビュー・書評

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  • 平安宮中の恋物語、暗いです。
    報われない思いや禁忌の恋や諦めや妬みが、平安貴族の優雅さをもって情緒ある形に落ち着いています。
    それでも、生き抜いている女性たちがよいですね。
    けっこう好きです、こういうの。
    折しも私的平安ブームの最中ですし。

    帝の寵愛を競う女たちと、血縁の親王がほしい男たちと、その中心にいる天皇。
    清和天皇、陽成天皇、宇多天皇の治世を割と史実に基づいて描いています。
    高子さん、すごいなー。

    「東風吹かば」は、こないだ読んだ成風堂シリーズ最新作に出てきた「飛梅」の元ネタがラストに。
    菅原道真、意外と腹黒い。この人だけじゃないけど。

  • 連作3編の収録。題名は和歌から。泥ぞ〜は陽成天皇、凍れる〜は藤原高子、東風〜は菅原道真となっている。全編通して読み終わると、高子が中心なのでしょうか?登場人物のほとんどがままならない想いを抱えていて、どんより暗く切ないです。
    最後はもの悲しく余韻が残りました。
    高子に負けず存在感を出していた源暄子にも興味がわきました。調べたら本当に実在していた人物ですが、情報はなし。関連本を読んでからもう一度再読したい。

  • 貞明(のちの陽成天皇)は、実の母からも愛されず、ずっと慕っていた乳母には通う人がいたことを知り、ますます孤独を深めていた。
    そんな中、兄弟のように共に育った乳母の息子・益に好意を打ち明けられ、求められるままに応じる。初めて愛情を与えられる喜びを知るが、夢のような幸せは瞬く間に終わりへと向かい…

    天皇家と、それを取り巻く外戚たちの主権争い。入り混じる男女の愛憎。
    平安時代って、もっとゆったりまったりしているものかと思っていたけど、こんなにスキャンダラスな出来事も、あったのでしょうか。

  • 平安王朝で生きる者の哀切な物語。
    男はただ政に生き、女はその道具として生かされる。
    人々の欲望が渦巻く宮中で幸せを掴める女などはほんの一握りで、その地位が幸せとも限らない。
    乳兄弟であった貞明と益の悲しい関係から始まり、年老いた高子と暄子が静かに二人寄り添うラストで終わる。
    嵐のように巡っては過ぎ去るすごい時代の一片を見てしまった。

  • 本誌のほうで途中から読んだのですが、気になって図書館で借りてきました。
    これは良い〜文庫になったら買って再読したいです!早く文庫化して欲しい〜

  • 読みにくい。「花宵道中」のが読みやすかった。多角的に描かれているから、入り込みづらいのかな、と。繊細な感じなんですけどね。誰メインなのか。。。あと、これはスルーした方がよいのかしらと思った描写が幾つかあった。

  • 入内できぬ女の思い。后になっても叶わぬ恋。報われることのない帝の愛――。平安王朝を舞台に様々な狂おしい愛のかたちを描く中篇集(アマゾンより)

    后がねとして内裏に上がるため、愛する男と引き離された藤原高子。
    彼女に狂おしいまでの恋を教えた在原業平。
    年若くして帝となった、高子の息子・貞明。
    貞明を慕う、乳母の息子・源益。
    入内を果たすが、顔も見せない貞明に心乱す紀君。
    愛する男の子を産んでも、満たされない想いを抱える麗景殿。
    帝に唯一の愛を捧げられながら、それに喜びを感じることがない石女の姫君・多美子。
    摂政による政治の介入を阻止すべく奔走したあげく、自らが帝となる運命を歩んだ源定省。
    定省の上に親政の夢を見、そして滅んだ菅原道真。
    欲はなかったはずなのに、結局は藤原北家にすべてをささげた藤原基経。

    「泥ぞつもりて」「凍れる涙」「東風吹かば」の3編の中で絡み合う、人々の想い・想い・想い・・・。
    綺羅綺羅しい殿上人の心中に潜む、泥のようにつもり消えないその想いの数々に、自分自身もまとわりつかれるような心地になる物語です。
    史実に則った話ですので、宮木さんのオリジナリティは薄れましたが、男色あり、百合ありと、バラエティ(?)に富んだ一冊。
    密やかな恋の想いに悩む夜に読むと、ハマり込んでしまう作品かもしれませんね。

  • お盆に実家で読んだ本⑤(ラスト)

    歴史ブームで世の中が沸いていますが、
    意外と平安時代は盲点ですよね。
    その中でも、天皇ものは少ないと思うなぁ。
    (私が知らないだけかもしれませんがね。)

    ただ、なぜかはまりませんでした・・・残念。
    今まで『伊勢』の授業ぐらいでしかお会いしなかった
    高子がすっごく生々しく「女」として登場していたり、
    天皇のエピソードもそれぞれ知っていたりで、
    興味がそそられる要素満載のはずなのになぁ。

    もうちょっと落ち着いて読めばよかったです。反省。

  • 業平と逃げる、あの有名なシーンで泣いた。
    待つしかなかった女の、気持ち。

  • 陽成帝の宣耀殿へ入内したものの、渡りがなく悶々とする紀君。陽成帝はマザコンならぬ乳母コンとな。母・高子も息子のソッチの面倒まで見るとはご苦労なのに、乳兄弟に走られた日には立場ないな。しかし忍んで来るのが業平の兄とは…恐れ入りました。

    2作目「凍れる涙」は遡って清和帝の御世。麗景殿こと源喧子のワケありさが氷解。高子にも多美子にも絡む訳だわ。清和の望みは砕いておきつつ、基経との駆引きで見事に入内。天晴れ。

    最後は「東風吹かば」道真が定省のアニいとなってます。益々奔放な喧子。寺の食堂で、坊主や基経と鰯を齧ってる。堀川殿に単身乗馬して来るのはさすがに現実感がなさ過ぎ。囲碁とかしてるし(笑)

    ときに基経と高子が見覚えある善祐って、結局何者だったの?源喧子は知ってたのか?意味深なのに回収されないし。あと何気に業平って、回想シーンにしか出て来なかったのね。

    キャラ造形、特に関係性が個性的。
    確執アリアリでぶつかりまくるが、結局は藤原北家の桎梏の内、好敵手の基経/高子兄妹。
    BL臭が漂うせいで、何だか情けない定省/道真。
    良房/基経父子の傀儡と見せて、実は意外に韜晦が得意な清和帝。
    譲位後に人格形成されたと見える、大器晩成(⁈)の陽成院。
    そしてほぼオリジナル、源喧子の姐御。対清和と対多美子は別人やろ。そして本性は基経/高子兄妹との絡み、と来たもんだ。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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