猫を抱いて象と泳ぐ

著者 :
  • 文藝春秋
3.96
  • (627)
  • (620)
  • (454)
  • (85)
  • (28)
本棚登録 : 4261
感想 : 779
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163277509

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 小川先生の作品を読むといつでも、
    小さくひっそりとしていること、控えめであること、世間になじめないこと、それらに満足し、受け入れることに美しさを感じます。

    そしてこの作品は、その真骨頂!というべき作品。
    まるで美しい絵画鑑賞をしているかのような気分になります。

    デパートの屋上にいる象、プールの隅で亡くなったバスの運転手、バスの中で暮らすおじさんと猫、壁の間に挟まって動けなくなった女の子・・・全く関係なさそうなすべての登場人物(動物)に関係する糸があり、その糸が表す図形が美しい。

    雨の日にもう一度読みたい。

  • まず題名に魅せられ
    中身にも酔い
    ため息です

  • 唇に産毛が生えているアリョーヒン、太ったマスターは実に美しいチェスを打ちます。チェスを打つ者にとって、見た目なんて関係ない。チェスを打つ者は盤上で打つ手が全てで、互いに対局を通じて、次元の超えた対話をしているということです。まさに、盤上に潜るという感覚、スポーツで例えれば、ゾーンとでも表現出来るのかな。言葉なんて、賢し顏で知識を身につければ、容姿なんて、化粧をすれば、着飾ることが出来る。しかし、チェスを打つという行為は人格がもろに露呈する。印象深い身体的特徴、さらに顔を隠し、ロボットに入ってチェスを打つという展開は盤上での対話を印象付ける演出だったと思います。小川洋子さんにとって、今作は「博士の愛した数式」のように、そのような言葉に出来ない、目に見えない、透徹とした美を言葉にする挑戦だったのだと思います。敷衍して言えば、結局は言葉も容姿も、いくら取り繕っても、滲みでる美があるということかもしれません。文章も然り。ストーリーの秀逸さではなく、紡ぐ文が醸し出す魅力で読者を圧倒させる。物書きにとっての最大の命題なのではと思います。ここまでくれば、もはや、古典となりえます。誤解を恐れずにタイトルについて触れれば、猫の名前はポーン。象は大きくなり過ぎて屋上で生涯を終えたことから、猫とはチェス、象は懊悩に満ちた人生として解釈出来そう。泳ぐとは盤上のゾーンに入るということで、「猫を抱いて象と泳ぐ」とはチェスを胸に、人生を夢中で謳歌するといったような意味に勝手に解釈しておきます。

  • 『博士の~』が素敵だったので、図書館で目に付いたこれも読んでみた。どうやら私は小川洋子さんの小説がかなり好きみたい。なぜ、彼女の作品はこんなに暖かいんだろう。他の作品も是非読みたい。

  • チェスについての描写がとても美しいです。
    小川洋子らしい独特の世界ですが、切なく優しく余韻の残るお話。

  • 謎のチェス差し”リトル・アリョーヒン”少年とチェスの出会いがメルヘンティックに太った男性との出会いから始まり、人形が出てきたり、独特の雰囲気を持ったちょっと不思議な物語です。「博士の愛した数式」に似た雰囲気です。非常に文章は美しく、チェスの駒の動き方の意味の説明も情緒があります。登場人物、当物たちも魅力があります。しかし、私にとってはいまひとつ理解しづらいままに終わってしまいました。 この作家の作品は作家名を知らずに読んでも分かる。それぐらい、小川洋子さんの作品というのは独特の世界観、雰囲気を保っているのは魅力的です。

  • 本当に小川さんらしい作品だなあ、というのが最初の感想。
    数学的な香りのする、美しい、寂しい話です。
    タイトルもすごく素敵。
    小川さんの作品の中では博士の愛した数式と並んで一番好きかも知れない。

  • 共感しにくい少年の心の内から紡がれる詩的な世界。
    取っつきにくい冒頭ではあるが、静かに引き込まれる。

    チェスを題材にしながらも、自らの居場所を求め続ける我々には何故か馴染み深く読み終えることができた。少年の心の中が現実に現れるような不思議な巡り合わせは大人の上質なファンタジーだ。

    静かではあるが、決して冷ややかではない。少年が描くチェスの棋譜のように美しい。

  • こんなに心に沁みる小説、文章は久しぶり。そして全体的に流れている悲しさが辛いというより癒してくれる。

  • 徐々に増して行く哀調と憂色の濃さに、何とも言い難い思いに駆られ、
    ただただ胸が痛い…。
    小さなチェスセットに気付き、その尊さを理解出来る人は素敵だと思う。
    けれどそういった人達は多分生きにくいだろうな、などと愚考する今日この頃。
    思う存分想像を掻き立てられました。
    濃かった。圧巻。

全779件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×