たまさか人形堂物語

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163277707

作品紹介・あらすじ

祖母の形見の零細人形店を継ぐことになったOL澪。押しかけアルバイトの人形マニア、冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、お店はそこそこの賑わいを見せていた。「諦めてしまっている人形も修理します」という広告に惹かれ、今日も傷ついた人形を抱えたお客がやってきて澪たちは東奔西走することに。チームワーク抜群の3人の活躍が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 人形店が舞台の連作短編集。ほんわかし過ぎを心配したが、ちゃんとビターで蘊蓄と笑いが共存の津原さん節で面白かった。澪と冨永くんと師村さんの三人のバランス最高。『恋は恋』『村上迷想』『ガブ』が好み。シリーズ追いかけよう。

  • 世田谷の小さな昔ながらの人形店「玉阪人形堂」。
    なかば騙されるように祖父から店を譲られた澪は人形に関しては素人同然。なんとか店を続けていられるのは、二人の職人のおかげ。

    社員一号は、人形マニアでぬいぐるみ作りに才能を発揮する冨永くん。お給料は安くてもいいという彼は、どうやら資産家のボンらしい。
    もう一人は、「あらゆる人形を修復できる方」という、出したほうでも無茶だと思うような募集に応じてやってきた師村さん。なにもかもナゾの人。でも腕はいい。

    玉阪堂に持ち込まれる人形と、その周辺の人たちに関する日常の謎系連作集。

    「毀す理由」
    “青い眼をしたお人形は アメリカ生まれのセルロイド”
    野口雨情の歌と、そこに歌われているお人形は何か?という薀蓄から入る一話目。
    顔を毀された創作人形と、手足をもぎ取られるテディベアの謎が解かれていく。
    冨永くんが直しすぎたフェルトのクマのお話が印象的。

    「恋は恋」
    冨永くんが友達から預かったラヴドール“麗美”ちゃん。
    いわゆるダッチワイフという類の人形だが、シリコン製で30キロあり70万円するというシロモノ。
    ラヴドール製作者であり、製作会社キャプチュアの代表でもある束前さん登場回。
    お人形としての用途が用途なので、当初はとまどう澪だけど、だんだん麗美ちゃんの存在がお店にとって当たり前になっていき、持ち主に返すときには淋しさまで感じる。
    冨永くんの想いがタイトル?「同じ型」でも違う人形は、やっぱり「違う」。

    「村上迷想」
    旧暦のお雛祭りまでの一ケ月、どこの町家でも貴重な人形を飾って見学させてくれるという人形業界では有名な町・村上。まだ行ったことがなかった澪は、遠い親戚がいるので訪ねることに。
    寛永の頃の村上城にいた附子の方(ぶしのかた)の伝説と、親戚の家の長男の急死の謎。
    日常系と思っていたのに、すわ殺人か?という事件でビックリ。真相はちょっと悲しく、ちょっともやもや。

    「最終公演」
    謎多き職人・師村さんの語るチェコの人形劇。その中でも異彩を放つ人形遣いパラフ。
    マリオネット遣いのマリオネット遣いのマリオネット(云い間違いではありません)を観てみたい!

    「ガブ」
    文楽ファンなので、タイトルから一番楽しみだったお話。
    ガブとは人形浄瑠璃のお人形の首(かしら)のからくりのこと。
    軽井沢の“コレクター”登場回。
    師村の過去話(正体)が判明。そして澪は、師村の前途のため、彼を元いた世界に送り返すために店をたたむことを決意。

    「スリーピング・ビューティ」
    店をたたむことを決意した澪は、従妹のいる山梨に一時避難。
    不動産屋さんから、人形を直してほしいと店を訪ねてきた老人がいることを聞く。それは祖母の恩師で、持ってきたのは一話目で回想される“青い眼”のお人形。
    約束はどうした!とわざわざ文句を言いにくる束前さんまで現れ、お店への想いを断ち切りきれずもんもんとする澪。
    しかし、ついに(予想より早く)店の買い手がつく。
    荷物を取りに戻った澪を待っていたのは……。

    結末が出来すぎだけど、じんわりしてほんわかして、うれしい気持ちで読み終えた。

    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡九月猫さん

      九月猫さん、こんにちはー♡

      きゃーー、この本積んでるんですーっ。
      この本から随分たったような気がしてた頃に本...
      [♥óܫò]∠♡九月猫さん

      九月猫さん、こんにちはー♡

      きゃーー、この本積んでるんですーっ。
      この本から随分たったような気がしてた頃に本屋さんで
      「あれ?このタイトルって続編ってこと?」
      って続編の本を見つけて、でもあまりに装丁のイメージが
      先の本と違ってるから、まずは第一弾を読んでからにしよう…
      って、結局まだ第一弾も積んだままです[*゚ω゚*]

      でも、ステキなお話みたいでうれしいっ!
      しかも続編を読んだ後で、デレてほしいなんて!!
      楽しみものっすごい勢いで脹らみました![笑]
      出来過ぎな結末も大好物です![笑]

      昨日、「さくらんぼ聖書」を再読して
      ここまで最後にムリムリ展開だったっけ!?
      ってびっくりしつつ、ニヤニヤしちゃったところで[*´▽`*]

      ひとみ先生の、ど展開に飼いならされてきた
      歴史を思えば、ご都合主義もムリムリ大団円も万々歳!![笑]
      なんか書いてくほどにほんとにファンなのかって[笑]
      いや、ほんとにいい意味で、出来過ぎバンザイ!♡
      楽しみが増えましたー。九月猫さんありがとうーーー♡♡♡
      続編も迷わず買って積んどきます!
      2013/07/23
    • 九月猫さん
      あやさん、こちらでもこんにちはー♪

      あっ、積んでらっさる?!
      さすがお人形好き!!
      ならばならば、ぜひとも「それから」のほうも積ん...
      あやさん、こちらでもこんにちはー♪

      あっ、積んでらっさる?!
      さすがお人形好き!!
      ならばならば、ぜひとも「それから」のほうも積んでくださいっ!
      っていうか、読んでくださいっ ←どの口が言うのか(笑)

      >出来過ぎな結末も大好物
      わたしも日々、その感が強くなっております(笑)
      もう最後にオールハッピーなら、それでいいっ! ねっ!

      このお話に出てくる人たち、特にわたしのヒイキの
      ちょっぴりだけデレてほしい束前さんは、口も性格も悪く、
      ひとみ先生の描く世界のように甘やかでは、まっったくないのですが(^-^;)

      「さくらんぼ聖書」今読むとそんなにムリムリでしたかっ?!
      なんだか、すごく興味がっ。あああ、でも本棚の一番下の段……。
      2013/07/23
  • 世田谷で祖父から譲られた古い人形店を引き継いだ澪。
    テディベアを自作する、浮世離れした青年、冨永くん。
    素姓は謎めいているけれど、人形修理の腕は確かな師村さん。
    小売より、人形の修理でなんとか店を続けている。
    さて本日も持ち込まれたお人形。
    持ち込まれたのは人形修理だけではないようで。

    西洋アンティークドール、ラブドール、テディベア、雛人形、マリオネット、人形浄瑠璃。
    人形っていろいろあるもんだ、と読みつつ実感。
    本当に人形ってなんで存在しているのかな。
    自己投影のかたしろ?美意識の基準?力を継承するかたしろ?
    人形を探っていくうちに、玉阪人形堂の三人が心に秘めるものがじんわりと浮かんでくる。

    見慣れない言葉遣いが出てきて、ふといつの時代の話しなのか空間が揺らぐ、ネットとかブログが出てきて、あ、今だと我に返る。
    最後までファンタジーの世界のよう。
    さて、どちらが夢?
    けっこうジメっとしたお話が多かったんだけど、ラストが良くて読後の余韻がホンワカした。
    キューピー万歳!

  • 久々に津原さんの本を。時代からか今は小売りでなく修理を中心に営業している「玉坂人形堂」を祖父から譲り受けた主人公と、そこで働く職人二人。
    出てくる人形が多彩で、ぬいぐるみや市松人形の他、雛人形、文楽人形、ダッチワイフまで!勿論私自身も子供の頃から多くの人形と関わってきたし、そう改めて考えながら読むと、人は昔から様々なシチュエーションで人形を大切にしてきたのだなぁと実感できる。
    短いお話だが、すっかり玉坂人形堂が好きになってしまい、最後店を手放すとなった時はたまらない切なさに襲われた。が、確か続編がありますよね。続きが早く読みたい!

  • 津原泰水さんの人形もの? きっと幻想的で、もしかしたらコワーイ話かも、という予想はしっかり外れていて、楽しく読める連作集だった。よく見れば表紙の絵ははとぼけたテディベアやキューピーさんで、淡い色使いが全体の雰囲気を語っているのだった。

    古くからの人形店が舞台で、人形にまつわる謎解きがメインだから、もちろん、ゾクッとするところがないわけではないけれど、それもほどほどの感じで、読み心地が良い。祖父から店を受け継いだ(押しつけられた?)三十代半ばのヒロイン澪さん、口の悪い資産家のボンボン富永君、謎の職人シムさん。読み終わる頃にはこのトリオにすっかりなじんだ気持ちになっていた。

    続編「たまさか人形堂それから」も楽しみだ。きっちり驚かせてくれるからなあ。今度はどんな手で来るのか?

  • おじいちゃんから玉阪人形店を
    継ぐことになった澪さんが主人公。

    私は、あんまり人形には思い入れがなく
    縁がなく生きてきたと思っていた。
    そもそも、ぬいぐるみは
    ホコリが気になってあまり好きでない。
    自分で好んで買ったりはしないけれど
    貰ったりはする
    でも、確かに幼いころはリカちゃん人形で遊んだし、
    抱きあげれば目を開ける抱き人形も持っていた。
    ひな人形はせっせと毎年毎年飾り続けた。

    案外、縁のあるものなのかも・・・
    特に女子は。

    でも、職人さんは男の人が多そうだな。
    人形ってだけど、奥深そうだし。
    玉坂人形店も二人いる従業員はどちらも男子だし。

    人形を巡る、さまざまな由来、
    こだわり、意味が面白かった。

    最後は売り払ったはずのお店が
    従業員によって買われて、なんか元通り。。。。
    というのはちょっといただけないかな。

    売らなくていいのに、と思った。
    ま、後先考えず、おじいちゃんにも言わず
    即決するようなことではないな。
    そういうとこ、私もあるからわかるけどさ。

    最後はちょっと結末を急いだ感あり。

    人形のよいお勉強になりました。
    深いわぁ、やっぱり。

  • 最初は「当たり」な作品と思ったものの、途中から散漫になり
    最後は先が読めてもの足りないまま終了という印象でした。
    もっと面白く読ませてくれそうな気配はあるのに勿体ないな。
    それでも続刊があるとしたら読んでみたいです。

  • ★そして私は死にながら、こうだったら良かったのにっていう夢をみてる(p.220)
    ▶面白いです。人形に人は自分の何かを投影してしまいがち。人形修復は人のココロを修復することでもあるのかと。▶作者による人形論の一種かもしれません。▶キャラクタがおもしろいです。▶なぜなのかというミステリ成分一部分あります。▶人形界には暗いので物珍しい知識も得られます。

    ■たまさか人形堂についての簡単なメモ

    【設定】今は人形修復に主軸を置いている人形店「玉阪人形堂」。三十代女性の澪さんが経営し、マイペースな冨永くんと謎な師村さんが修復する。
    【第一話】二件の、壊された人形たちはなぜ壊されたのか。
    【第二話】やってきたラヴドールの麗美がもたらすものは。
    【第三話】人形の聖地、村上に来た澪は遠縁の家で事件に。
    【第四話】師村が会った、チェコの人形劇師パラフの狂気。
    【第五話】「人形」とはなんぞや談義と、師村さんの正体。
    【第六話】店を閉め売却する「たまさか人形堂」のその後。

    【青い眼の人形】シドニー・ギューリックにより日米親善のために贈られた。野口雨情の歌詞はキューピー人形のことで別物。
    【活人形/いきにんぎょう】リアルな人形。幕末から明治にかけて評判を呼んだ。
    【大浜人形】村上で見かける土人形。三河の大浜という地から御用瓦を焼くために招かれた職人たちが複業として焼いていた。今、作り手は一人しかいない。
    【音田/おとだ】客。コレクター向きとして作られたテディベアの修理を依頼してきた。息子の大樹(たいじゅ)がそれに依存しており傍らに抱いてないと眠れないのだが常に手足の接合部がちぎられてしまう。
    【ガブ】人形浄瑠璃の仕掛けで口がガブッと開き形相が変化するもの。怒りを表現しているようだ。
    【川瀬】金融業者で絵画や人形のコレクター。転売屋でもある。名前をもじって川獺と呼ばれている。
    【キャプチャー】ラヴドールメイカー。麗美を作った会社。社長は束前。
    【球体関節人形】言葉的にはデッサンの練習をするときなんかに使う顔のないアレを想起しましたが、ここでは色っぽい感じの・・・そう、四谷シモンさんの作品タイプの人形のことのようです。
    【ギューリック】シドニー・ギューリック。宣教師。「青い眼の人形」を日米親善のために贈った。
    【コレクター】人形コレクター。女性。
    【早苗】澪の従妹。高校生にも見える童顔だがアラサーと思われる。演劇やってる。稼ぎは水商売系で。
    【澁澤榮一】ギューリックと親交があり「青い眼の人形」受け入れに尽力した。
    【嶋夫】澪の父。
    【師村雪夫】「あらゆる人形を修復できる方」ととんでもない求人をしたら来てくれた。世間にある半分くらいの人形なら修復できるらしい。冨永くんでも手に負えないような修復は師村さんがやる。私生活はまったくの謎。《寒空の下で震えながら食べたツナサンドの味は、不思議と決して忘れない。》p.40
    【菅原晶子】丹能唯の夫の愛人。なぜか丹能渉が入り浸っていた。
    【畝川/せがわ】客。美人。澪と同年輩。棺桶のようなケースに入った大きい人形は顔が破壊されておりその修復を依頼してきた。その人形のモデルは畝川自身だった。しかし人形はどうやら作られてから三十年以上経過しており澪と近い年齢とするとモデルになれるはずがない。人形の作者は冷泉龍佑でないかと思われる。
    【高峯/たかみね】冨永くんの友人。麗美の持ち主。
    【抱き人形】かつてはほぼ市松人形だった。
    【竹田人形】竹田近江掾(たけだおうみのじょう)という人物が興した人形芝居に使われたからくり人形のことだったが今ではそれにインスパイアされた人形たちも含む総称。
    【玉阪人形堂】抱き人形を作っていた玉阪屋を澪の祖母が人形の小売店玉阪人形堂として再興しようとした。現在では人形修復に主軸を移しておりそれなりに忙しい。従業員はふたり。
    【丹能家/たんのうけ】澪の遠い親戚。村上で歯科医をなりわいとしている。唯という女性が澪のことを気に入っていた。彼女には双子の息子がおり上は渉(わたる)、下は衛(まもる)で医院を継いでいるのは衛のようだ。渉は到着したばかりの澪にすぐ帰ったほうがいいと言った。衛は人形に詳しい。唯の母親倫子(のりこ)も健在。
    【チェコ】人形劇が盛んなのはかつて大国の支配下でも人形劇だけは母国語の私用が許されていたからとか。
    【束前】ラヴドールメイカー「キャプチャー」の社長と思われる。
    【豆腐屋】ご隠居は商店会長。パソコンの操作を手助けをして以来ご町内の回覧板作りの文章の入力とレイアウトは澪の仕事になった。その代わり忙しいだろうからと奉仕活動は免除してもらえている。つねに酔っぱらって見えるが下戸。
    【冨永くん】玉阪人形堂の従業員。新卒で入社した。資産家の坊らしく修行のつもりなので無給でもいいと言うから安い賃金で使っている。手先が器用。玉阪人形堂に幸運をもたらしてくれた。《僕はプロだから》p.32。澪《冨永くんの実像は、芸術家だ。》p.39。師村さんは「職人」と呼んだ。
    【渚】澪の祖母らしい。
    【人形】《人形ごとに、壮大な背景をせおっている。》p.101。《ああもう、人形ってなんなの》p.149が澪さんの口ぐせらしい。冨永くん《実務的じゃない、物質性とは一線を画した、抽象度の高い概念なんですよ。》p.152。師村の知人の人形作家《彫刻には耳の穴はない。自分は耳を生身に似せる。そのために耳の穴まで作る――作らずには気が済まない。だから自分の作品は間違いなく人形である、と。》p.153
    【人形劇】おもしろさは《最も違うのは、その劇団を支配している狂気の度合いではないでしょうか。》p.127
    【人形浄瑠璃】子どもの頃観劇中に居眠りをしてしまって以来澪さんはちょっと人形浄瑠璃が苦手。
    【パラフ】ズデニェク・パラフ。チェコの人形劇団の主。型破りな手法で毀誉褒貶がある。妻のハナも熟練の人形遣い。
    【布袋久/ほてい・ひさ】阿波の人形師。初代は阿波の人形を難波の文楽人形とは別物にした。束前《文楽人形があやつられて初めて生命をおびるとしたら、布袋久の人形は最初から生きている。》《人形単体で見たら古今東西のあやつり人形の頂点といっていいだろう。》p.166
    【澪】主人公の「私」。玉阪人形堂の「社長」。三十代の女性。《私が長く接していけるのは、継承を美徳とし不変を心掛ける、職人たちだろう。》p.39
    【澪の祖父】入院中に玉阪人形堂の権利を澪に相続したがその後完治しニュージーランドに行った。
    【澪の祖母】青い眼の人形を焼却から救おうとした。玉阪人形堂を再興しようとした。「青い眼の人形」の歌を澪に教えた。
    【澪の父】玉坂屋人形堂の息子だったがその商売には見切りをつけ後は継がなかった。
    【村上】新潟にある地。村上城に堀直寄の寵愛を受けたお秋という側室かっ別称「附子の方(ぶしのかた)」がいた。とりかぶとで誰かを毒殺したのだろうか? 廃藩になったとき多くの雛人形が武家から流れた。今、村上では雛人形をかき集め飾って町おこしを実施している。塩引き鮭も有名らしい。
    【芳村郁/よしむら・いく】ある人物。
    【ラヴドール】いわゆるダッチワイフ。高級なものをラヴドールと呼ぶそうだ。
    【冷泉龍佑/れいぜい・りゅうすけ】独学でグロテスクな創作人形を作っていた。三十年ほど前に亡くなっている。
    【麗美/れいみ】ラヴドール。冨永くんの友人が所持者。メイカーは「キャプチャー」。『四畳半神話大系』で城ケ崎先輩が持っていたアレなんかがそれに当たると思います。《世間が彼女らに与えたラヴドールという呼称に、私は性的な意味合いを嗅がなくなっていた。愛の人形。人の愛を一身に受け容れてくれる人形。》p.78

  • 図書館で。
    主人公があまり好きになれないタイプだった。確かに店主は彼女だけれども人形やぬいぐるみに対する知識も修復に関する技術もなく、それでいて勉強しようという意思も感じられないし。お客様に対する接客が優れているのかというとそういう感じでも無い。でも「私が店長だ」みたいに従業員に対して接している感じがなんか好きになれないなぁと。
    男性陣に好かれたいって気持ちもナンダカナだし。店長の親戚の家に、人形関連とは言え仕事でもなく従業員に同行してほしいってのはなんか違う気がする。

    詮索しないでほしいという職人のことも無駄に追い詰めるし、最後勝手に店を売ろうとしたのもちょっと。感情的になって結果請われたら元鞘ってのも厚かましすぎないだろうか。経営者としては付いていきたくないタイプだな~と思ったので。

    というか続巻が出ているのを知っているのでなお、最後の辺りは「そうはいっても継続するんでしょ」みたいな気持ちで白けてしまった感はありますが。

  • 面白いと感じたところもあったけど、薄めの本のわりに、読むのに時間が掛かった。私には向かなかったみたいだ。
    人形に興味がある人には向いていると思う。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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