骨の記憶

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163279602

感想・レビュー・書評

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  • 2019年最後の1冊。
    昭和の時代、貧困の農家に生まれ育った一人の男が東京へと出て成り上がっていく話。

    こういう私小説的な話は好き。
    お金と引き換えに男の人生は淋しいものとなってしまったけれど、
    ラストでゾクっとさせられ、物語としてのまとまりがあり
    非常に面白かった。

    しかしなぁ、一番可哀想なのは清枝だよなあ。
    知らぬが仏とはよく言ったもんだ。

  • 夫が病気で亡くなりそう
    そんな状況からどう物語が始まるのか?
    と疑問だったけど、そうくるのね。
    骨とともに失踪した父の本当のところが知らされる。
    今までの自分と夫との関係はなんだったのか、これまでのこと、最期だからということで尽くしてきたのに……。
    偶然とはいえ、他人になり変わってしまった一郎よりも弘明のずる賢さのほうが罪深い。
    となると、最後の最後に仕返しのようなことをされても仕方ない!?
    最期だからこそ、奥さんに告白して欲しかったな。

  • 誤字があって萎えた。悪人に描き過ぎ。

  • 内容紹介からまず抜粋。
    没落した東北の旧家曽我家の嫁・清枝のもとに届いた宅配便は
    51年前に失踪した父の頭蓋骨だった。
    差出人は、中学の時の同級生長沢一郎。
    中学卒業後、集団就職で町を出て
    その翌年に火事に遭って死んだはずの同級生だった。

    このプロローグから長沢一郎の数奇な人生ドラマが始まる。
    貧しい東北の農家の長男として生まれ、
    地道な百姓の将来しか見えない一郎の親友は
    村一番の有力者旧家の長男曽我弘明だった。
    小学校6年生の二人は
    山の中でトンネルを掘る遊びに熱中していたが、
    そこを小学校教師の杉下徳治に見られる。
    危ないからすぐにトンネルから出るように言われて出たが、
    忘れ物をとりに穴へ入った杉下が
    不運にもそのとき崩れた穴の中で埋まってしまい、
    そのまま生き埋めとなる。
    絶対に秘密にしょう!
    一郎と弘明は誓い合い、大きな秘密を胸に秘めることにした。

    その後、罪の意識に悩まされながらも二人は中学生へと成長。
    杉下の一人娘清枝のことが気になりつつも
    一郎は、中学卒業後集団就職で東京へ。
    弘明は、高校を優秀な成績で出て大学へと、それぞれの道を歩む。
    東京へ出てからも一郎は
    日の目を見ることができない。
    あの秘密のある村へ帰るのも恐ろしいが、
    自分の行き場もなくし、帰郷しようとした矢先、
    就職先で一郎の先輩にあたる
    松木幸介が一郎のアパートを訪れる。
    幸介の寝ている間に荷物を持って家を飛び出した一郎は、
    途中で荷物を幸介のと間違えたことに気が付いて引き返した。
    ところが、彼の住むアパートは火事で焼失。
    長沢一郎は焼死として扱われてしまう。
    一郎は彼の身代わりとなった「松木幸介」と名のり、
    身寄りのない幸介の半生をなぞらえて、
    自分の人生をどんどんと切り開いていった・・・

    508頁の分厚い本だったが、
    一郎の数奇な運命に魅かれるように一気に読めた。
    一郎も弘明も最後は病魔におかされる。

    たまたま手に入れた松木幸介の所有する土地が
    成田空港の建設地の中にあって
    莫大な値段で売れたりと、ラッキーな運もあったが、
    一文無しからたたき上げて
    社長にまでのしあがった一郎には、驚かされた。
    これは、彼が持っていた天分の才気と運気が味方したのだろう。

    どこか懐かしい昭和中期の時代背景とともに
    一人の男の人生の光と影がたっぷりと読み取れる。
    久しぶりの力作に出会った気がした。

  • 後半が駆け足で進む。前半は、ワクワクさせられる。
    残念な後半。

  • 末期癌の夫に尽くす清枝の元に、かつて失踪した父親の頭蓋骨が届く。差出人は火事で死んだ筈の同級生。高度成長期の昭和を舞台に描かれた成功と喪失。そして復讐と因果の物語。
    農民出の中卒の男が、火事をきっかけに、隣人となり替わり。成田紛争で成りあがっていく。全てを終えた後、この男には何が残るのか——。
    土地を転がしているシーンなどは、以前、WBSなどで誰かが語っているシーンで似たようなお話があったな、、、と思いながら読んでいたが。
    ラストが、誰も幸せにならないのが重たい。

  • インパクトのあるプロローグで引きこまれた。学生が社会の仕組みへのやりきれない不満を抱え込むあたりは読ませる。
    が、復讐を考えるあたりが突然で説得力がない。ラストも説明不足、というかそこで終わるか?がっかりした。

  • 松本清張作品をを彷彿とさせる(よくわかんないけど)戦後の高度成長期を舞台に、苦労の末、成り上がっていくという数奇な運命をたどった男の一生の話。
    導入も良く、最初から最後までぐいぐいと話に引き込まれていく。岩手の寒村で余命いくばくもない夫(弘明)の看病を甲斐甲斐しく務める女房(清枝)のもとに、白骨化した頭蓋骨が送られてくる。それが、幼い頃突如家族から姿を消してしまった愛する父のものだと同封された手紙にある。送り主は集団就職先の東京で焼死したはずの幼馴染。父を殺した犯人は、今まさに看病をしているお前の夫だと手紙は告げる。
    衝撃的なプロローグから始まり、本編の舞台は同じく岩手の寒村だが時代は50年前の幼少期に移り、主人公は一郎と言う男の子に変わる。その子が頭蓋骨を送った本人であり、弘明と共に当時自分たちの先生であった清江の父親を事故で殺してしまい、大人に内緒で先生を土に埋めてしまったのだと、第一章で真相を全て明かしてしまう。
    なのにその後の展開がまたおもしろい。一郎の数奇な運命に、どうなるの?と早く先が知りたくなる。結局一郎は金と地位を手に入れるが、最後まで家族愛に恵まれず、幸せな家庭に嫉妬する。
    そして行きついたところが、弘明と初恋の人清枝の幸せな結婚生活にへの妬み。そしてプロローグへとつながる。

    性描写も貧乏の悲惨さもリアルで目をそむけたくなるが、読まずにはおれない魔力がある。
    ただ腑に落ちないのは、清枝が死んだ人間からの手紙を簡単に信じ、愛する夫に苦しみを与えるようになること。夫に問いただすこともせずにだ。そりゃ不自然だろ。たとえそれが真実だとわかっても、幸せだったふたりの結婚生活はなかったことになるのか?
    また、一郎の妻だった冬子のその後の運命も気になるところだ。
    一郎は恨みに思ったかもしれないが、冬子もまた時代に翻弄され意に沿わない結婚を余儀なくさせられたかわいそうな女なのだから。

  • やりますね~
    読めば読むほどのめり込んでしまった作品です!

    昭和の時代で岩手県
    (四国と同じぐらいの広さを持つ大きさ!ビックリ)
    が舞台。先祖代々の裕福な家に生まれた弘明と農家の貧困に生まれた一郎。この二人の人生が描かれている。

    昭和の集団就職(上野)事情から商いへのちょっとした秘訣や子爵への考え、子爵の考え、金持ちの視点・考え、政治家の野心。
    人間の欲、復讐心が巧みに描かれています。

    ちょっと上手く話が出来すぎているんですが
    それはそれで
    上手く作ったんだなぁと感心の思いで満足でした!!

    イケます!!
    そしてある意味、怖いです!

  • 組み立てはすごいけど、イマイチ、迫力がなくて、進行もとろいと思った。

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著者プロフィール

1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年、30万部を超えるベストセラーになった『Cの福音』で衝撃のデビューを飾る。翌年から作家業に専念、日本の地方創生の在り方を描き、政財界に多大な影響を及ぼした『プラチナタウン』をはじめ、経済小説、法廷ミステリーなど、綿密な取材に基づく作品で読者を魅了し続ける。著書に『介護退職』『国士』『和僑』『食王』(以上、祥伝社刊)他多数。

「2023年 『日本ゲートウェイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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