憂鬱たち

著者 :
  • 文藝春秋
3.22
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本棚登録 : 691
感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163285207

作品紹介・あらすじ

「悲しみのエキスパート」神田憂とカイズさんとウツイくん。女×男×男の妄想ジョイライド7篇。

感想・レビュー・書評

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  • ー 私は憂鬱だ。いつも世界を憂いている。しかし私は憂鬱な世界に生を受けた事をきっと心のどこかで受け入れている。憂鬱は快感だ。憂鬱は始まりだ。憂鬱は永遠だ。憂鬱に終わりはない。それはとても、素敵な事だ。

    つまり、憂鬱をポジティブに捉える連作短編集。
    連作短編集といっても収録された7つの短編に繋がりはない。
    しかし、神田憂、カイズさん、ウツイ君、名前と容姿は同じだけど人格は別の3人が必ず登場する摩訶不思議なつくり。

    そして神田憂は精神科を受診しようと出かけるのだが、いつも寄り道してしまい、結局行けない笑

    リピート系でじわじわ笑いが込み上げてくる。
    評価は5に極めて近いけど、お下劣なので笑、あえて4。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      おはようございます。

      前に読んだ時、金原さんの作品だし、と超真剣に読んだけど、たぶんこれ、お酒飲みながら読んだ方が面白いですよ...
      たけさん

      おはようございます。

      前に読んだ時、金原さんの作品だし、と超真剣に読んだけど、たぶんこれ、お酒飲みながら読んだ方が面白いですよね笑
      2023/03/06
    • たけさん
      naonaoさん

      そうかもしれないですね。
      お酒飲みながら気楽に飲むと、変な酔い方もしそうですけど、それはそれでありだな。
      今回は超真剣に...
      naonaoさん

      そうかもしれないですね。
      お酒飲みながら気楽に飲むと、変な酔い方もしそうですけど、それはそれでありだな。
      今回は超真剣に読みましたけど、じわじわっとやられました。
      2023/03/07
  • ウツイ君、カイズさん、そして主人公の神田憂。
    ウツイ君とカイズさんはそれぞれ立場を入れ替えながら、憂の前に現れては消えていく。

    憂は精神科に行きたい。
    なのに何故かバーの面接に行ったり、電気屋に行ったり、タクシーに乗ったり、コンビニに行ったり、耳鼻科に行って、どうしても精神科には行けない。

    その先々で出会うのは前述の2人。時には恋をしたり、疎ましく思ったり、体の関係を持ったりしながら、回り道をしていく。

    憂の言う「バナナ」の譬えが面白かったです。
    心の中にバナナがあって、それをすり減らして生きている。1cmくらいになるともう駄目で、家に閉じこもってじっくりバナナが大きくなるのを待つ。

    私の心の中にもバナナがあるなぁと妙に感心しながら読んでしまった。

    というか、憂よ、精神科に行きなさい。

  • 『ジビカ』
    金原ひとみ 「ごめん、不愉快?」
      私   「いや、愉快」     
    という具合だった。私自身は宇宙人じゃないと思っているけど、主人公の思考回路にはとっても共感できる。
    私好みのブラックジョークがふんだんに敷き詰められている作品だった。金原ひとみの本は私にとって精神科から出される薬のようなものだなあと再認識させられた。
    変態がいっぱい出現するが、読んでいると変態の定義が分からなくなってくる。変態の多様性を実感し、こんなに奇怪で面白い存在を変態と一言でまとめてもいいのだろうかと思えてくる。やっぱり耳鼻科の医者と同じで連鎖的な日常を破壊してくれるような宇宙人を私は求めているのかもしれない??

    鬱な自分を愛してるまたは破壊されたい人はぜひ本書を。

  • (2023/12/26 2h)

    形を変えて現れる
    神田憂
    ウツイくんとカイズさん
    憂鬱と寛解

  • 精神科に行きたい

  • すべての人が、もしくは一部の人が抱える憂鬱や憤りなんかを小気味よく不快感も含めながら代弁してくれた作品。いい意味で不安定になる短編集だった。

    『ゼイリ』の主人公が自分の中のバナナがすり減っていき、休養することでまたそのバナナが回復していくという例えは明快で面白く、私にもそういう部分があるので共感できた。
    今の世の中はバナナの減少を最小限に食い止めながら再生していくことが必須なのかもしれない。

  • 賛否両論分かれるところだろうな。
    私は好きだw

    空気のように憂鬱に囲まれ、際限なく妄想に囚われる、神田憂。
    自称:憂鬱のエキスパート。
    そんな私とたくさんのカイズさんとたくさんのウツイさんが織り成す
    トリップした日常。
    いつか精神科にいける日が来るのかな。
    それはもうあらゆる事象に敏感に誘発される憂鬱たちに因る。

    時々、尋常じゃない感じの人を見かけるけど
    そういう人を実際に前にすると
    恐怖や後悔、軽蔑を感じてしまいます。
    「何があの人をそうさせたの?どんな気分?」
    なんて聞きたいとも思わないけど
    そういう状況に関して興味がないわけじゃない。
    そんなときにこの本ですかねw

    マックで隣の男子高校生グループがどっと笑ったそのネタの内容とか
    バスで隣の人が「幸運体質になる10の方法」って本を読むに至った経緯とか
    私もよく想像してしまいます。
    きっと私の根暗スパイラルが完成系に近づくと
    神田憂みたいな感じなってしまうのかなと一人で勝手にげんなりw
    それにしても、想像っていうと夢見がちな少女みたいに聞こえるのに
    妄想っていうとなんで卑猥で下劣な感じがするんだろう。
    そもそも「妄」っていう字はなんで「女」が「亡」くなるって書くんだろう・・・。

    『蛇にピアス』はちょっと痛すぎて苦手だったけど
    私も色々免疫ついたんだなw

    それから、この人の表現は、おもしろい。
    憂鬱なときに読んだから特にかもしれないけど。

     「傷ついた分傷つけることを日課とし、
      傷つけられるために生きているのか
            生きるために傷つけられているのか、
      傷つけるためにいきているのか
            生きるために傷つけているのか、もう分からない。
      ただ一つ私が言えるのは、もう疲れたと言うことだ。」

  • ▼私の金原ひとみに対する感情は複雑で、あんまり好きじゃないのにどうしても読んじゃう、といった類のものである。精神不健康ものは結構好きで、本谷有希子はとっても好きなんだけど、金原ひとみは……どちらかと言えば「嫌い」。何というか、ネタじゃなくガチで腐っている感じがする。くさやって臭いけど気になるよね? 剣道の小手の匂い、予想できるけどつい嗅いじゃうよね? みたいな。ただ、前作の『星へ落ちる』は評判があまり良くないので読まなかった。
    ▼12ページ。やっぱり今回の主人公も絶賛鬱病中ですか。『デリラ』。友達で、金原ひとみを彷彿とさせる、獅子座で鬱病の女の子がいる。つけ睫がお人形さんみたいで可愛いけど、たまに妙ちくりんのイタさを感じさせることがある。この短編を読むと、その女の子のことをふっと思い出す。自分のことをたまに神だと思っているから、ああいうふうにイタいのだろうか。また今回も話のオチはない。ただイタい。そういうノリ。
    ▼『ミンク』。自分で読んでおいて何だが、この本を買うのはどんな人なんだろう。客層がまったく想像できない。エロ目的の人だろうか。いや……やっぱり私と同じように、イタさに妙にハマってしまった人たちだろう。びっくりするほど面白くない……んだけど、やっぱりイタいので読んでしまう。でもきっと「こういう本を待ってた!」「気持ちにぴったり合う!」って方も必ずいるだろう。そういう方の荒れた心の中が心配だ……。
    ▼『デンマ』。寝ろ。
    ▼『マンボ』。使っていない膣に日本庭園のように苔が生えるという連想は面白いなと思った。男が精液の人型みたいなもの、だとか。
    ▼『ピアス』。まあ、ある意味で表題作。ディティールの確かさはエラい。
    ▼この人の文章を30ページ読むのと、望月守宮の文章を60ページ読むのだったら、明らかに後者のが楽だと思った。そんなに嫌なら何で読むのか、私にはこの欲望の意味がわからない……
    ▼『ゼイリ』。変な話だけどカイズさんのキャラにちょっと和む。
    ▼『ジビカ』。最後の方だけちょっと良かったけど、『オートフィクション』のがいい文章があった。
    ▼終わった。喉のところがイガイガする。読んでストレスを溜めた。役に立たないのになんで読むんだろう。破滅願望なんだろうか。それとも、この人の書くものの中に何かがあるんだろうか。(09/11/1 読了)

  • ぶっとんでる&エロ

  • 7つの短編が収録されている本作は、一作ずつ違う話ではあるものの、主要な登場人物3人の名前を同じにすることで、主人公・神田憂の妄想劇集のような読み方を読者に求める。主人公は精神科に行きたいが、いつもその望みはウツイとカイズのいる世界に阻まれる。最後の短編で耳鳴りの話がある。僕もストレスによる耳鳴りを経験したことがあるが、医者との会話は非常にリアルだったので、親近感を持って面白く読んだ。金原ひとみさんの作品には拒食症の主人公が頻出するが、同じ問題に悩んでいる人からすれば、心の支えになる作家なのだろうと思った。

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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