真綿荘の住人たち

著者 :
  • 文藝春秋
3.47
  • (56)
  • (158)
  • (200)
  • (39)
  • (7)
本棚登録 : 1145
感想 : 219
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163289403

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  三浦しをんさんが、書評本「本屋さんで待ちあわせ」で紹介していた一冊。さっそく読んでみました。

     2食付き、お風呂と台所共同の下宿「真綿荘」に暮らす面々の日常。
     女子高生と付き合う事務員、大柄であることにコンプレックスを抱き、人とうまく距離を取れない女子大学生、人の心のきびを理解せず、知らず知らずのうちに人を傷つける新入りの男子大学生、かつて画家に与えられたものを忘れられず、17年間彼に縛られ、そして自らも彼を縛り続ける小説家兼、大家。

     お互いがお互いに、「あんたの人との関係の取り方、おかしいよ」と思っている。「自分の人との関係もおかしい」とも思っている。だからこそ、お互いがお互いを傷つけ合う。そして、後日、お互いが腕を伸ばし合い、関係を修復し合う。
     人は、愛や恋や友情や、そういういろんな形で繋がり合う。ここの住民たちは、そういった普通の関係ではないけれど、同性愛やレイプなど、他の人と共感しにくい事情を通して芽生えた関係ではあるけれど。

     けれど、だからこそ、そういった関係からでも他者を想う関係は芽生え、長く成立していくのだと、知りたい。
     これから先も、彼らは誰かを傷つけるのだとしても、そんな彼らが同時に誰かを救いうるのだと、そう信じていきたい。

  • 真綿荘に住む人たちの様々な恋愛、人間模様を綴った物語。
    全6章それぞれの物語があるし価値観もそれぞれ。
    正直自分的にはあまりのめり込む作品ではなかったけど。
    たまにはこういうものも良かったのかなと。

  • 能天気で無神経な天然坊やの大和君、男嫌いで現在は女子高生と交際中の椿さん、礼儀正しく気遣いも完璧なのに大柄な外見にコンプレックスを抱える鯨ちゃん、やけに色っぽい大家(兼作家)の綿貫さんと、その内縁の夫で画家の晴雨さん。

    下宿モノでこのキャラクター陣ならドタバタラブコメ展開か…と思って読んだらまさかのトラウマ・心の闇テーマでした…。
    そりゃ愛のカタチなんて、各々自由で良くって、何が正しいか分からないけど…

    三浦しをんさんがオススメされているらしいけど、私はしをんさんが書かれた「木暮荘〜」の方が好きです。文庫版解説は江古田つながりで瀧波ユカリさん。

  • 真綿荘に住む男女それぞれの恋愛模様を描く。
    ○○荘や○○アパートや、こういった下宿ものの話は押し並べて同じ印象を抱く。人生様々、色んな事があるよね、でも一歩踏み出そう!的な。この真綿荘の面々も同じだけれど、少し複雑な恋愛をしている人が多かったので、展開が気になり最後まで飽きずに読めた。大家さんと晴雨さんの展開には驚いた。え!そっち!?と(笑)でもまあ結局、印象通り皆が幸せになったから良かった。

  • 自分の理解できる型の中に当てはめようとしてはいけない、こういう捉え方する人もいるのだなという感覚で読む。
    一人一人の心情の描写はさすが!としか言えない。
    こうなんじゃない?という自分なりの理解はしてみたものの、多分理解しきれていない感情がありそうだ。
    282冊目読了。

  • 「島本理生」のエッセンスが詰まった一冊だとおもった。アパートで暮らす面々のオムニバス形式の物語。
    話の快不快はさておいても、著者の技術が万遍なく注がれているように読めた。純粋な恋愛模様から、良くも悪くも人間の感情が乱暴に上下する様子、そして彼女おなじみの(もはやお得意の?)「暴力」という素材。最後の章は少し濃いけど、島本著が初めてだわという人へこれを勧めておいて間違いはないんじゃないかと思う。

  • 「天然の空気清浄機」みたいな女の子を誉めた大和くん。自分はその対極にいると思い込む鯨ちゃん。人工の排気ガスだとはおもってないだろうけど、鈍い男は傷つけますね

  • 真綿荘の住民たちの恋の話で、いろんな愛の形があってこのカップルもいいなとか思って読んでたら、まさかの綿貫さんが最後にヘビーな馴れ初めだった。
    ドライに見せかけて、実は年下でしかも高校生の八重子ちゃんに支えられてる感じの大人な椿さんかわいい。
    大和は結局八重子ちゃんが椿さんと付き合ってることを知らないままなのかな。
    私は鯨ちゃんと荒野先輩カップルが一番好き。
    ほんわかカップルになりそうに思えた二人の公園ですがりつくような急展開は本人視点で読みたかった。
    荒野先輩の影の部分とそれを鯨ちゃんが優しく包み込む姿とか見たい。

  • 本の構成が好き
    登場人物のキャラがしっかりしてて読みやすい
    的確な表現ではないのに伝わってくるものが多い

    ラストは衝撃だった
    そうなっちゃうんだって。。。

    愛しい想いなんて
    みんな自分のモノサシだもんね

    この人が描く
    内面から揺さぶられるような描写が、すごく好き

  • こういう同じ下宿に住んでいるいろんな登場人物がでてくる話、てよくあるけど、
    この物語は、どの登場人物の話も、心に響くものがあって、とても面白かった。
    恋人や好きな気持ちにはいろんな種類があることや、人を愛することって素敵なんだな、て知った。
    島本理生さんの本は好きだけど、作風がここで少し変わった気がする、良い意味で。
    感動して、あたたかい気持ちになれた。

全219件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島本理生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×