悪の教典 上

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163293806

作品紹介・あらすじ

学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の貌を持っていた。ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー。

感想・レビュー・書評

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  • 貴志祐介さんの講演を拝聴した。
    テーマは「エンタテイメントに残虐な表現は必要か」
    というもの。結論から言うなら「イエス」が、氏の意見である。

    フィクションであっても想像力や恐怖心をかりたてるような残虐な表現は良くない、という風潮がある。
    これらの作品が少年少女の心に悪影響を及ぼし、凶行へと駆り立てるのではないかという意見だ。

    これに対し氏は、呪術的な感覚でしかない、根拠のないものだと仰った。
    小さい頃によくやる「~~菌がうつるから触らないで」的な。

    また、理解しがたい動機で起きる犯罪に対し、分かりやすい
    原因として
    本やアニメをやり玉にあげることで安心したい心理なのだと。

    むしろフィクションによる刺激が軽度のストレスの発散になっている人もいる。
    娯楽が溢れている今の時代、刺激の少ないマイルドなものは
    あまり人々を惹きつけないそうだ。

    「僕らは途中でページを閉じられてそれで終わり、では困るのです」と。読み手を動揺させないと本を閉じられてしまうのだと。

    もちろん幼子を持つ親として、いかに「被害者」にも「加害者」にもさせないように、
    どう接していくか表現者としてどうあるか、とも思案しておられる。

    氏が自らに課しているルールに「完全犯罪が成立するようなトリックや技法は発表しない」というものがある。

    完全犯罪として描いてもそれはあくまで架空のもの、
    実現不可能なものにするということ。

    作品を模倣した犯罪者を誕生させたくないという、強い信念が
    あり、現に『青の炎』にも「この装置で実際に人は殺せません」と書かれている。
    (私はその箇所を見落としていたような…)

    作家になるにあたり、もっとも響いた言葉(本の一節だったはず)「思いやりは身近な人のためにとっておきましょう」を胸に、主人公を極限まで追い詰める氏である。

    決してサディストではないが「生」を描きたいがためにその対極の「死」に迫る。

    また「悪」を登場させることで、現実にある「悪」に免疫をつけるワクチン的役割も、フィクションにはあるのではないか。
    そう仰っておられた。
    (とは言え、映像で入ってくるものに関しては何でもOKとは言えないとも…)

    なるほど、無菌で育てられ、社会に出て初めて「悪」に出会ってしまったら…それはそれで恐ろしい気もする。

    かと言って、あまりに暴力的・猟奇的な方面に偏った本棚の持ち主であればちょっと警戒したくもなるのだけれど。


    会場で流されていた「悪の教典」予告編。
    気付けば上下巻買ってしまっていましたので(サブリミナル!?)
    感想は下巻に書きます。

  • 文庫本は上下巻の2冊で完結でした。まずこちらは上巻。
    主人公の教師、蓮見先生ことハスミンの、人タラシぶりとそれに反する凶悪ぶりが、じわじわとストーリーを熟成させてくれます。飽きずに読める内容で、見事ハスミンワールドに捕らえられてしまいました。
    さすが貴志祐介先生の構成力!!ブレなく安定しており映像化に納得です!読んでいて頭の中で想像しやすいだけに、どんなにノンフィクションとわかっていても怖かったです。

    映像のハスミンも是非みてみたい:(´◦ω◦`):

  • 下らないことしか書きません書けません。

    ・蓮実怖すぎ
    ・「楓子」って名前可愛い
    ・「ゴン」でくっそわろた
    ・女に興味ないっていうか、性欲とかないと思ってたらそうでもないんですね!
    ・熊谷教諭の言葉を歪んで受けとるハスミンマジハスミン
    ・言葉攻めとか時々俗語が入るのが面白い
    ・ラスボスかと思ってた釣井教諭がまさかの上巻でログアウトで戸惑いが隠せない
    ・校長先生の演説力入りすぎて引いた
    ・下巻でどうなるのかさっぱりわからん!!

  • 読みやすいし、長く感じない

  • 高校教師の蓮実は超人気者!
    生徒からはハスミンの愛称で信頼されまくり!!
    職員会議の厄介ごともハスミンの手にかかればあっという間にすべて解決!!!かわいい教え子には性的接触もしちゃう!!
    信頼されまくりティーチャーハスミン!!!!!


    超有能イングリッシュティーチャー・蓮実は目的を達成するの手段を選ばない。
    たとえ誰かの人生が狂おうが、死んでしまおうが、無実の罪を着せられようが、自分の身が無事ならかまわない。
    ハスミンは何人だって殺せる。
    自分の名誉を守るために。自分の欲望を満たすために。

    ハスミンは狂っている。倫理観も道徳心も何もない。

    完璧に犯行を隠しながらも、不審に思う生徒たちもいる。ハスミンは彼らをどう対処するのか。下巻へ続く。

    -------------------------------------------

    ありえないほど簡単に人を殺すハスミンがおかしいのは重々承知だけど、
    他の教員たちもだいぶおかしい。

    上巻だけで400ページ超。それでもすいすい読めた。
    気持ちいいくらいにハスミンが狂ってる。謎のかっこよさが後を引く。

  • 最初、本の厚さにびっくり。読み進むうちに意外な展開にびっくり。上が終わるとただちに下を読まずにはいられなかった。
    作者の構想力に脱帽。

  • 生徒からの人気抜群の英語教師蓮実は、サイコパスだった。
    人間の心を持たない彼は、何の感情もなく平気で人を殺す。
    ボリュームのある上下2巻だが、ハラハラしながらすぐに読めた。

  • (「BOOK」データベースより)
    うちの学校には、怪物がいる。学校という閉鎖空間に放たれた殺人鬼は高いIQと好青年の貌を持っていた。

    分厚いし上下巻なのでちょっと躊躇したけど、ちょっと前のこのミス1位でラジオでも紹介されてたので読んだ。
    テンポよく読める。

    学年の問題児どもを一手に引き受けた彼は、問題児を引き受ける代わりに、自分の好きな生徒を指名させてもらうようにした。
    (実際の学校でもこんなことしてるってどっかで聞いたことある)
    それは全て、自分の王国を築き上げるためのものだった。

    何でも要領よくこなし人望も厚く、何一つ欠点のない教諭だが、ただ一つ欠けているものがあった。それは共感覚。

    自分の目の前に立ちふさがるものを、躊躇することなく排除する蓮実教諭。
    そしてその狂想は一点の迷いもなく実行され、下巻へと続く。

  • 面白い!!!
    異常者の思考がよく伝わるとかそう言うことではありませんが物語として、読み物としてとても面白いです。
    釣井先生の元へハスミンがやってきた時はゾッとしてしまいました。作者様が頭がいいのが存分に伝わってきます

  • とっつきにくい本だと思っていたけど、予想と違って読みやすく面白い!!サイコパス教師の異常さがぶっちぎれていて、ちょっとした行為や言い回しにニヤニヤしてしまう。下巻、どうなるか!

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。京都大学卒。96年『十三番目の人格-ISOLA-』でデビュー。翌年『黒い家』で日本ホラー小説大賞を受賞、ベストセラーとなる。05年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、08年『新世界より』で日本SF大賞、10年『悪の教典』で山田風太郎賞を受賞。

「2023年 『梅雨物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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