オールマイティ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163299402

作品紹介・あらすじ

選手、球団、マスコミ…。すべてを操る全能の代理人、善場圭一登場。金の亡者と忌み嫌われ「ゼニバ」と蔑まれる代理人、善場。だが選手の盾となって悪役に徹する姿勢で絶大な信頼を集めている。古い慣習に縛られた球界に新風を吹き込む彼は改革者か破壊者なのか。

感想・レビュー・書評

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  • 「代理人」でも出てくる、善場の話。代理人の話、というより、ミステリー小説。良くあるストーリーだが、読みやすく、アッと言う間に読了。

  • スポーツ選手というと逞しい身体で、
    元気が良くきびきびとした印象があります。
    明るくて快活、しかも仲間思い。
    チームの勝利を目指し
    集団の規律を重んじるイメージもあります。
    ただ大きな身体の集団が居ると、
    大きな声とも相まってちょっと怖くも感じます。
    ガサツだと感じることも無きにしも非ずです。

    そうしたスポーツ選手のイメージからすると、
    自分に自信が持てずうじうじと悩む。
    恐怖で夜眠ることが出来ない。
    なんてことは、まったく無縁に見えます。
    イメージが結びつきません。
    でも実は多くのスポーツ選手が、
    そうした心を抱えているのではと思います。

    スポーツ選手はいつも戦いの場に居ます。
    勝つか負けるかギリギリの興奮の中に、
    たえず身と心を置いています。
    命を取られるわけではありませんが、
    毎回それに近い緊張を強いられます。
    逆にいえば、そのスリルと興奮が、
    スポーツの醍醐味だともいえます。

    けれど勝利は一瞬です。
    またすぐに次の戦いが始まります。
    目の前の敵を倒せば、更なる強敵が現れます。
    終わりのない戦いの連続です。
    相手と戦ううちに、
    やがてその刃は自身へと向かっていきます。
    自分の才能、努力、運。
    すべてのものが時に拠り所となり、
    時に不安材料となります。
    戦いの消耗の中、信じるべきものが、
    信じられなくなる想いがよぎります。
    目の前の敵をいくら倒しても、
    次はやられるんじゃないかと不安は尽きません。
    心はもろく不安定に揺れます。
    そうした弱い心を奮い立たせて、
    砂上の上にスポーツ選手は立つのです。

    そこを打ち破れるかどうか。
    それが本物の一流になれるか、
    一時的な名選手で終わるかを分けていきます。
    スポーツ選手は傍からは強い存在に見えますが、
    強くあり続けることを求められ、
    実際に強くあり続けなくてはいけない、
    過酷な役割なのかもしれません。

    この物語の主人公はプロ野球選手のエージェントです。
    金儲け主義だとマスコミや世間から批判されながら、
    実は選手を守ることを専らとします。
    契約するクライアント選手のために、
    最大限の努力と犠牲を払います。
    球団側に対してタフな交渉を行い、
    選手がプレイに集中できる環境を担保し、
    しかるべく経済条件を勝ち取ります。
    選手にとっては頼りになる、球団にとっては厄介な、
    敏腕エージェントです。

    クライアントである投手の入団交渉と、
    過去に契約していた打者の失踪事件をベースにして、
    物語は展開します。
    二人は同い年の選手です。
    頂点を極めつつある球界を代表するエースと、
    無残に落ちぶれた過去のスラッガー。
    栄光と衰退が日常的に交差するのは、
    スポーツの世界では日常的な風景かもしれません。

    主人公が交渉を進め、失踪事件を追ううち、
    真相が明らかになります。
    そこで描かれるのはスポーツの負の世界です。
    勝利や栄光が人を迷わせ、衰退が人を荒ませる。
    強くあるべきはずのスポーツ選手の弱さが、
    くっきりと浮かび上がります。

    そんなスポーツ選手と対照的に、
    エージェントである主人公はひたすら強い。
    見誤ることなく、
    歩むべき道をまっすぐに進んでいきます。
    実は彼もまた元プロ野球選手なのです。
    その強さもまた、
    スポーツで培われたもののように思われます。

    過大でも過小でもないスポーツ選手の
    等身大の姿を感じさせる物語です。

  • 野球の代理人が主人公という珍しい題材の小説。業界の裏話的なものも多く盛り込まれており、面白かった。またミステリーとしてもきちんとしているのでいい本だと思う。

  • FA宣言をしたプロ野球の投手の移籍交渉の裏で、引退した元スター選手が姿を消した。FAした投手の移籍交渉を担当する敏腕代理人がその行方を調べていくうちにある真実にたどり着く。

    代理人を主人公にしたミステリーという設定は面白かったが、個々のキャラクターが若干弱い感じがした。ただ、文章の中に後から振り返ると伏線のようなものは張られており、ラストの真相はなるほどと納得できるものだった。

  • 余りスポーツものといった感じがしなかった。登場人物は面白そうだが掘り下げがいまいち。

  • ■大阪出張で読了。大して期待もせずに借りたんだけどこれは大当たり。前半から展開の素早さや展開の意外さにガッチリと引き込まれた感じ。

    ■後半以降の状況証拠の見せ方やラストの大どんでん返しの謎解きまでずっとやられっぱなしだったなぁ。文句なしに面白かった。

  • 野球小説でデビューを飾った本城氏の新作。
    たまたま別の作品で野球絡みのミステリを
    読んだばかりでしたが、やはり、こと野球に
    関しては本城氏の得意とする分野だけあって
    凄く説得力のある内容になっています。

    野球をテーマにしながらも、今作の主人公は
    日本ではまだ余り馴染みのない代理人というところも
    なかなか興味深い。人気球団との交渉に入った
    人気実力のある投手の代理人として「善場」が
    交渉にあたる中、かつての「善場」のクライアント
    であったスター選手が失踪というトラブルが起き、
    その行方を探す事になるのですが...。

    ゆっくりと事件が進み、一体失踪の裏になにが
    隠されているのかが、余り分からず、そして
    グイグイと興味を惹かれる類いのものでもないので
    ややダルい印象もありましたが、要所に野球という
    スポーツの持つ表側では無い部分の描写や、選手が
    抱える、我々には分からない悩み、苦悩が描かれていて
    なんだかんだと最後まで読ませる作品...だったですw。

    事件の真相やラストの展開はあまり後味の良いものでは
    ないのが個人的には残念。出来たら氏による、痛快で
    気持ちの高揚する王道の野球小説が読んでみたい...。

  • プロ野球選手、球団代表、代理人、マネジメント会社の間で起こる事件がモチーフとなっています。頂点を極めた元甲子園球児達とプロの頂点に一度は立ちながら失落していくスター選手、プロでは通用しなかった選手の過去の因果がミステリアスに物語を進めていきます。
    代理人と元スーパーラガーマンのスポーツ新聞記者が暴いていく真相は面白い創りになっていました。
    選手、契約代理人、球団、マネジメント会社の関係もリアルです。

    読後感=九回裏二死満塁・・・2ストライク3ボール・・・最後の決め球は・・・ドキドキ!

  • プロ野球は脚光を浴びるのはほんの一握りの人で、新しく入って来れば、出ていかなければならない人はそのあとどうなるのか垣間見えたように思いです。

  • プロ野球選手の代理人が主人公のミステリーやけど、あんま設定に意味がない感じ。主人公が動く理由、起きている事件の動機や結果が余りに弱くて、正直物足りないなぁ。

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著者プロフィール

1965年、神奈川県生まれ。明治学院大学卒業。産経新聞社入社後、スポーツ紙記者として活躍。2009年『ノーバディノウズ』が松本清張賞候補となりデビュー。2017年『ミッドナイト・ジャーナル』で吉川英治文学新人賞を受賞。2018年『傍流の記者』で直木三十五賞候補。著書に『四十過ぎたら出世が仕事』(祥伝社刊)『友を待つ』(祥伝社文庫)など多数。

「2023年 『あかり野牧場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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