ぼくはこんな本を読んできた: 立花式読書論、読書術、書斎論

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163510804

作品紹介・あらすじ

膨大な本との出会い、実戦的読書論、書斎・書庫論など本の整理学、書評論、読書日記など立花隆の「知の世界」構築のノウ・ハウ。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者の立花隆さんは、今年4月30日に永眠されました。3万冊の本を読破し、100冊以上の本を執筆、「知の巨人」との異名を持つジャーナリストです。文芸春秋に発表した「田中角栄研究」は、田中首相退陣のキッカケとなったと言われています。執筆テーマは、生物学・医療・宇宙・政治・経済・哲学・・・と幅広く「知の巨人」と言われる所以です。他面では、猫好きで、自身の事務所兼書庫は「猫ビル」との愛称で親しまれ、数万冊の蔵書があったそうです。
    2.本書は、副題に「立花式読書論、読書術、書斎論」とあるように、氏の読書哲学論と言える、レベルの高い書籍です。私もこの本から、仕事への取組姿勢等で、大きな影響を受けました。
    3.私が影響を受けた記述を、私見を加え、3点書きます。
    (1)「専門家というのは、インタビュアーがする質問によって、その問題に関してその人がどれだけの基礎知識を持っているかということをすぐに見抜きます。それで、その質問があまりにも浅い、表層的なものだと、専門家というのはものすごくいい加減な答えしかしてくれません」「大きな仕事をやるときには、三メートルから四メートルは関係の資料を読むことにしています」
     ●私見⇒私は、会社で教育(人財育成)の仕事をしたことがあります。時には、専門家と言われる人に教えを乞うこともありました。事前に、三メートルは読めませんでしたが、何冊かの関係書を読んで臨みました。先方には、それがわかるらしくて、褒められた事がありました。私なりに仕事への取組姿勢が変わったと思います。
    (2)「一冊の入門書を精読するより、五冊の入門書をとばし読みした方がよい。ノートをとらなくても、ほんとに重要なことはどの本でもくり返されているから自然と頭に入る、ノートをとる代わりに、アンダーラインを引いたり、ページを折っておけばよい」
     ●私見⇒私は、これを読んでから、赤ペンアンダーライン派になりました。しかし、学生諸士には、ノートをとった勉強方法が、記憶するという点で優れていると思います。
    (3)「”実践に役立つ十四か条”の中では、2点→”①金を惜しまず本を買えと⑭若い時は、何をさしおいても本を読む時間を作れ”」を金言と受止めました。
     ●私見⇒私が読んだ本には、”本を買え”という人が大勢いました。渡部昇一「知的生活の方法」、ハイブロー武蔵「読書通」等。私も少しずつでも本を買う生活をしてきました。
    4.まとめ;
    (1)立花さんは、真実に迫ろうとする探求心を持って、闇を恐れずに切り込む覚悟で世論に訴えてきた、類ない哲人だと思います。そして、どこかで聞いた、氏の生き方の10か条(世俗的な成功を求めるな、知る事に終わりはない、・・・)にも勇気付けられました。一度は講演を拝聴したいという願いが叶えられず、残念です。安らかにお眠り下さい。
    (2)最後に、私と立花氏とも読書感の違いを一つ述べます。氏は、文学を学生以降はほとんど読んでいなかったそうです。私は、自己形成の土台作りの為にも、文学書を読むべきだと考えます。人生のステージに合わせて、バランスよい読書が必要と思います。例えば、職業人は仕事のプロを目指し、専門書重点でしょうか。

  • 【未読】読みたい理由
    ダイちゃんさんの感想を読んで
    難しそうだから時間ある時読む

  • 本の背表紙だけで、二時間は飲めるよね。読書の天才。

  • 確かこの本を最初に読んだのは、大学学部4年生の終盤、大学院進学で上京する直前だったと思う。

    もちろん、その前から立花隆という人物を知ってはいたが、これから研究生活を始めるという時に本書を読んで衝撃を受けたことは今でも記憶に残っている。それは、立花氏の知識への欲求、勉学への姿勢、読書範囲の広さに対してである。本書に影響を受けたからか、上京後、ほどなく神田神保町の書店街を尋ねた。また、通っていた大学からは地下鉄1本で神保町へ行けたため、研究の合間によく神保町の書店巡りをしたものだ。

    自分は研究者の道へ進んだため、どちらかというと「狭く深く」を探究する身だが、知識への欲求はこの時に学んだものだと思う。ときおり専門外の本を読むのはこの時の影響である。

    立花氏の意見のすべてに必ずしも同意しているわけではないが(それは当然だが)、勉学に対する姿勢は大いに学ぶべきだろう。

  • 立花隆氏を知ったのは、スタジオジブリの【耳をすませば】でした。
    この時、この本に出会う1年前

    この本は、表紙と、題名にインパクトを感じ、大学1年時に購入

    氏の好奇心、物を知りたいという欲求には、心の底から尊敬する。

    自分も本を読まなくては、いろいろなことに好奇心を持たなくてはと感じたのが、この本

    読書の仕方、書斎、書庫、そして膨大な蔵書の写真・・・

    氏の強いジャンルは多岐にわたり、それが私の心を大きく刺激した。

    高校生までは、そんなに本を読まなかった・・
    この本との出会いが、本に対する考え方を一変させたといっても過言ではない。

    この本に大学生の時に出会えて本当に感謝

  • 立花隆のエッセイ・講演集。
    ここに書かれている立花隆の本の読み方が、KGBやモサドなどの諜報機関のものと類似しており、自分自身もインテリジェンスのメンバーに推奨している、と佐藤優がどこかで書いているのを見かけて興味が湧いて読んだ。

    上記に関するエッセイのほかに、これまで人類が発見してきた知全体を把握する方法を個人的に持ちましょうという話(自分なりの地図をつくりましょうという話)をしている講演と、著者が新卒入社後出版社を2年ほどで辞めるときに会報に載せた(ここでこのまま仕事を続けていては知的生活が酷いものになり、人間が一向に駄目になっていくだけなので、それを防ぐために辞める、ということを、辞めるときにわざわざ社内に向けて発信した)エッセイが特に面白かった。

  • 著者の読書総論(読書に関しての四方山話)をまとめた本。

    目次
    <blockquote>1 知的好奇心のすすめ
    2 私の読書論
    3 私の書斎・仕事場論
    4 ぼくはこんな本を読んできた
    5 私の読書日記
    </blockquote>
    正直、読んでいてすごく疲れた。5章の「私の読書日記」なんて、急に3段構えになるものだから、1ページあたりの滞在時間が延びる延びる……。
    もうそのあたりで読むのを止めてもよかったかもしれん。

    さて、この本は著者ならではの読書に対するアプローチ、書斎論に書評をセットでつけたお得感の溢れる本です。ただし、この初版は1995年。今の本とは違った雰囲気の文章だった。

    まずは独学について吠える。
    <blockquote>そして、本はいちどきに購入してしまったほうがよい。独学で一番難しいのは、志を持続させることだが、そのためには、<u>前もって相当のお金を使ってしまったほうがよい</u>。たいていの人はケチだから、<b>先にお金をかけてしまうと、元手をかけた分くらいは取り返そうと勉強するもの</b>だ。
    </blockquote>
    経験からとはいえ、恐れ入る。先にお金をかけてしまうと元を取ろうとしてしまうのは認知心理学の認知的不協和からきている。だからこそ、これは誰にでも確実に有用だ。お金に困らない人は別として。

    <blockquote>家に帰ったら、買ってきた本は書棚に入れないで、<u>机の上に積み重ねる</u>。書棚に入れてしまうと、なんとなしそれですんでしまったような気になるが、<b>机の上に置いておけば読まねばならぬ気がしてくる</b>。
    あとはただひたすら読む。まず軽い概説書を読みとばす。教科書的入門書を読む。一冊読むとだいたいの輪郭がつかめるから、二冊目からは楽になる。
    <b>精読する必要はない。ノートもとらないほうがよい</b>。<u>はじめからそんなに張り切りすぎると、必ず途中で挫折する。</u>ノートを取りながら精読したりすると、二時間で読める本に二日もかけてしまうことになる。一冊の入門書を精読するより、五冊の入門書をとばし読みしたほうがよい。<b>ノートをとらなくても、ほんとに重要なことはどの本でもくり返されているから自然と頭に入る</b>。
    </blockquote>
    やってることは多読なのですが、「ノートをとらなくてもいい」なんてかなり極端です。
    著者はかなりのスピードで多くの本を読み飛ばして多読してますねー……。たしかに重要なことはくり返されるのですが、微妙な記述は取らないのでしょうか?
    読後のメモに関しては、賛否両論なので、ここは個人の主義に任せる事にします。
    ちなみに自分はこのようにメモ取る派です。

    一方、独学のデメリットも述べています。
    <blockquote>以上のような独学の過程で、なによりも注意すべきは、独学においては、<u>質疑応答というプロセスがないために、</u><b>ひとりよがりの解釈をしたまま、まちがったことを覚えこんでしまう</b>危険性である
    </blockquote>
    自己解決の怖さは、仕事でもありえます。著者も述べるように、その対策には多読する事で多くの人が支持している解釈を取る事と、専門家に訊ねることで勘違いを払拭するしか方法はないでしょう。
    まぁ、それでもかなり前線の、微妙な解釈のありうる領域では難しいですが……
    あ、今ならwikipediaでほぼクリアですね。「微妙な解釈のありうる領域」が必要になるのはあまり無いですし。

    次に書斎論。この人はほんとオタクなんじゃないかと思う。
    書斎用の机を求める記述から。
    <blockquote>最終的に私が選んだのは、横浜元町家具で作っている一メートル×二メートルの特大のダイニング・テーブルだった。(中略)きわめてシンプルな作りのものだが、大人二人で持ち上げるのがやっとという重量級で、どんなにゆすってもビクともしない。
    見て歩いた中で最高に気に入ったのだが、値段もとびきりである。約四十五万円もするのだ。いくら何でも机に投じる資金としては高すぎるような気がした。
    (中略)
    <b>これより安いけれどグレイドが落ちるものを買えば、きっと後から後悔するにちがいない</b>と思った。そして、机としては高いようでも、自動車にくらべればはるかに安いということで自分を納得させた。
    (中略)
    この判断は正しかった。今でも私はこのテーブルが日本で入手できる最高の机だと思っている。そして、<b>いい机という条件が、もの書き家業にとってこんなにも大切なもの</b>かということを日々に痛感させられている。
    </blockquote>
    結構長い引用だが、普通日常的に使う家具に大金を投じる例はあまりないだろう。
    そこに敢えてお金をがっつり入れるあたり、「<i>やるな〜</i>」と思った。自分も例外なく同じように買っただろうし。
    つーか、家で今も使ってる机は、新人の時に買ったのだが、近くの大手家具屋で十数万もした。社会人になってお金もできて、今まで使いづらかった環境を一変させようとあれこれ変えていった途中の事だ。
    それ以来、今の家も完璧フルチューン、お金を結構かけて変えていった為、ネタついでに人に見せると、これはオフィスかと言われるLvになってしまったw
    キーボードもREALFORCEかFILCOのキーボードだし、手帳も値のはるモレスキンをはじめ、いろいろ買っては試してみた。まぁ、ライフハック全盛の頃だったので、それが楽しかったというのもあるけれど。
    しかし、それだけいいものを使うと、ケチってグレードの下がる品よりは<b>感じるものとかが全然違う</b>。
    そこはお金かけただけの価値なんだけれど、制約が無い限りはグレードの低い品は使えなくなったなぁ……。


    えー……ちょっと間が空きましたが、さらに著者なりの読書術を。
    <blockquote>本というのは、<u>はじめからオワリまで読むべき本</u>と、<u>必要なところだけ拾いだして読めばいい本</u>とある。仕事の資料というのは、完全に後者だから、要はいかに効率的に、自分に必要な部分を見つけるかです。目次、索引を利用するのはもちろん、<u>これくらいの(一秒に一回くらいのペースでページをめくりながら)スピードでめくっていくだけで、不思議に必要なところが目にとまるんですよ</u>。人間の脳の働きにそういう能力があるっていうことは、脳のことを勉強していく中でわかってきた。つまり<b>人間の脳は、相当部分が意識化されないでもちゃんと働いている</b>んです。
    (中略)
    もちろん、<b>必要な部分に目がとまったら、そこは意識を集中してちゃんと読む</b>んですよ。それと僕は、<b>読む時に徹底的に本を汚す</b>んです。<u>ページを折るとか鉛筆で書き込みをするとか</u>。付箋を付ける時も、色を変えたりとか――。
    </blockquote>
    かなりいろんな読書法の混ぜ合わせみたいな状態だが、こうも実例で述べられてしまうと、有用なのかもしれないなぁ……という気がしてくる。
    1ページ1秒って分速約6万文字ペースですよ……既に速読術のなかでも廃人Lvですって。殆どフォト・リーディングしちゃってる。
    それと本を汚すのは三色ボールペン&レバレッジ・リーディングの主張ではメインですし、ここまで見てきた読書法をまるごとごっそり実践している感じ。
    できる人……いるんだなぁ。だからといって自分にできるとまで夢を見れませんけど。

    あとは間違えやすい論理のパターンについて語っている点は自分としては興味深かった。
    著者が言うには、誰にでも間違えやすい論理のパターンがあり、そのパターンは共通しているという。
    <blockquote>古典的な論理学の中に、正しい推論規則について述べたものがあります。たとえば、虚偽論、誤謬論、詭弁論などと呼ばれているものです。その辺を一応勉強しておくといいですね。(中略)基本的な推論規則を頭に入れておかないと、普通の人はついつい善意の誤謬を犯してしまいがちです。新しいところでは、セマンティクス(意味論)、シンタックス(統辞論)について学んでおく事も必要ですね。
    </blockquote>
    これに関しては、突っ込もうにも全く何も勉強していないので、「そーなのかー」としか言えないんだけれど、何かの折に(とはいってもできるだけ早く)本を読んで勉強したいなと思った。
    こうして書いていても、ひょっとしたらミスを犯しているのかも知れない……そう思うと、未熟だなとこぼしたくなるし。


    ▽再版本
    ・<a href="http://mediamarker.net/media/0/?asin=4167330083" target="_blank">ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫) (文庫)</a>

  • "立花隆さんの生活のほとんどが活字を読むことなのだろう。その一部をかいま見られる本。読んでみたい本がいっぱい出てくる。読書案内ともいえる。
    読んでみたいと思った本をあげておく。
    トリノ聖骸布の謎
    犬たちの隠された生活
    詐欺とペテンの大百科
    ファインマンさんは超天才
    大絶滅
    ドラゴン
    トロイアの秘宝
    奪われし未来
    証言731部隊の真相
    南京の真実
    日本軍の小失敗の研究"

  • 1995年刊行。

     著者の読書遍歴、週刊誌連載の書評、読書の姿勢、多読・速読術などを網羅的に叙述したもの。文科系に偏重気味の斎藤孝とは異なり、書評については、理科系・風俗・ノンフィクション等広く目配せされている(もちろん、今となっては古い本、稀少本も多いが)。

     これら(特に理科系)にも目を向けさせてくれた一書で、多読の方法なども含めて個人的には影響大だった本。
     読書に飽きた時には、折りにふれ読み返している。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

立花隆の作品

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