長い旅の途上

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163551302

作品紹介・あらすじ

最後のメッセージ。ここにある深いなぐさめ。遺稿76篇を集成!アラスカを撮りつづけた写真家が残した、人間と自然にまつわる限りなく優しいエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • BSPで写真家の大竹英洋さんが星野道夫さんの見た景色を辿ってアラスカを旅する番組を放映していた
    大竹さんは中学生の頃、星野さんの本に魅せられ写真家を志されたそう

    私もこんな大自然と対峙された星野さんの文章を読んでみたいと図書館で手当たり次第に借りてきた

    何と静かで穏やかで美しい文章なのだろうか
    幾度も幾度も読み返し、一生懸命その文章に忠実に脳にその映像を描いてみるが思うようにはいかなかつた
    「百聞は一見に如かず」なのだろう

    遺稿集ということで、家庭画報や毎日新聞・週刊朝日などに連載されたエッセイ76篇を集めたものとのこと

    もう少し時系列に沿って星野さんの歩まれた足跡を辿って読んでみたいなと思ったが
    星野さんの自然に対する驕ることのない誠実な態度は、ひしひしと伝わってくる
    手元に置いておいて、何度も読み返したい本だった

    文中より
    「夕暮れの空の淡いピンクが海に溶け込み、あたりは不可思議な一色の世界に包まれてきた。その中を一頭のザトウクジラがゆっくりと進んでいる。海は凪ぎ、動くものは他になく、聞こえるのはクジラの呼吸音だけ・・・風景は、この一頭のクジラのために用意された舞台のようだった。
    突然、スローモーションのようにクジラは飛びあがり、その全身が宙に舞った。そして地球の重力に身を任せたまま再び海面に落ちていった。海は爆発し、あたりのしじまは破れた。しかし、クジラは何もなかったように進み続け、風景さえ元の静けさをすぐに取り戻している」

    「アラスカの北極圏の、ある暑い夏の日の午後だった。ツンドラの地平線から白い点がポツポツ現れ始め、やがて一本の線となり、その線もどんどん延びていった。カリブーの大群はまっすぐ僕のベースキャンプにら向かっていた。カリブーの親子がブーブーと互いに呼び合う声が聞こえてくると、もうひとつの不思議な音が耳に響いてきた・・・・カチカチカチカチ・・・それはひづめの音ではなく、カリブーの柔らかな下肢の腱が歩きながらスナップする音だった。数千キロもの旅をするカリブーが備えた、特殊な足の構造なのだ。それは何という
    心地よい響きだったろう。カチカチカチカチ・・・10万頭の群れが奏でる和音に包まれた時、あたりはカリブーの海だった」

    筆舌に尽くしがたい光景、日常の些細な悩みが馬鹿らしく思えてくる
    星野道夫さんの著書に出会えてよかったとしみじみ思った

  • 「地球交響楽」
    第三章 を 見終えて
    もう一度 読み直したくなった

    星野道夫さんを
    語り継ぐことは

    今だからこそ
    こんな時代だからこそ
    余計に
    必要なのである

  • S図書館
    遺稿集、大きく5編
    1 「母の友」等の連載
    2「家庭画報」連載
    全面カラー写真少しと小さめ白黒写真と文章の組み合わせ
    3「毎日新聞」連載
    4「マニア」等の連載
    5「週刊アサヒ」連載

    見開きで1つの文章なので好きな所から読める
    写真が載っていたクマの寝顔はかわいい

    《抜粋》
    137自然はいつも強さの裏側に脆さを秘めている
    そして私が惹かれるのは、生命の持つその脆さの方だ
    アラスカの大地は、忘れていた人間の脆さをそっと呼び覚ませてくれる
    それが、今の私に聞こえ始めた、自然からの微かな声である

  • 一つ一つの物語が大切に思われて読み飛ばすことが出来ません。手元において、じっくり読み返したいです。

  • 純粋さが伝わってくる。

  • 初めての星野さんです。彼が撮られた写真や経歴はもちろん存じ上げていましたが、文章も素敵な方だったんですね。ゆっくりと穏やかに話される声が聞えるような文章で、私もゆっくりと読み進めることができました。アラスカの自然の中に住む自分に、なぜ今ここにいるのだろう?と驚いたり、我が子を優しく見つめながらも「この子は1人で生きていくんだな」と静かに考えたり、冬眠前の熊の観察をしながら以前母熊に襲われ顔半分を失った友人と交わす会話。。。そして、やっぱり写真が素晴らしい!星野さんの撮られた動物たちって、なんであんなに表情や身体の線が活き活きとしているんでしょう。その瞬間、何を考えているのか、あるいは何も考えていないのか、がじわんと伝わってくる気がして。いい本を読みました。

  • 星野道夫さんの感性は、彼を取り巻く全てをドラマティックに包むのだろうと思う。
    彼はアラスカで暮らしその大きな自然に命を捧げたが、本書の言葉が心に染みるのは、その舞台故ではないだろう。
    どんな舞台に立っても、物事の真実を掴む感性を彼は持っているし、
    それがたとえ、道端にある草花のような小さな自然にでさえも、存在の意義を見出そうとする優しさを彼は持っている。

    またひとつ、素晴しい文章に出会えた事を幸せに思う。

  • 星野道夫のやさしい言葉遣いとやさしい写真は、なぜか読んでいて&見ていて心に突き刺さります。それは彼が、本当にやりたいことをやった生涯を送ったからこそ表現できる重みがあるからでしょう。思わず線を引いてしまう名文が溢れています。

    本書は1996年、カムチャッカで熊に襲われて急逝した星野道夫の遺稿集。第?部・第?部を彩る美しいカラー写真が文章に暖かさを添えています。

  • 星野道夫さんは写真家ですが、素敵なエッセイもたくさん書いています。
    その中から亡くなった後、再編集されたものです。

  • 数多くの胸にジーンと来る言葉の数々。書き手としての作者の作品をもっと読みたかった。シンプルで深く鋭いその感受性は、自然のように全てを包み込んでくれる気配に満ちている。

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著者プロフィール

写真家・探検家

「2021年 『星野道夫 約束の川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

星野道夫の作品

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