知と熱: 日本ラグビーの変革者・大西鐵之祐

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163579603

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  • スポーツライターでラグビー解説でもお馴染の「藤島大」が、日本ラグビー界屈指の名将で、恩師でもある故「大西鉄之祐」について著したノンフィクション作品『知と熱―日本ラグビーの変革者・大西鐵之祐』を読みました。

    「大西鉄之祐」のラグビー哲学が一冊の本になった… という感じの作品です。

    -----story-------------
    緻密な理論、滾る情熱、そしてそれらを包む深い愛情…。
    「闘争の倫理」を思索しつづけ、日本の、そして早稲田のラグビーを幾度も危地から救った名将「大西鉄之祐」。
    その79年の生涯を達意の文章で描き、2002年度「ナンバーが選ぶスポーツノンフィクション」第1位、「ミズノスポーツライター賞」の二冠に輝いた傑作。
    -----------------------

    早稲田大学の監督としての実績も然ることながら、日本代表の監督として、ジュニアオールブラックス(23歳未満のニュージーランド代表)への勝利(1968年6月3日 ウェリントン アスレチックパーク "23-19")、イングランドXVとの接戦(1971年9月28日 東京 秩父宮 "3-6")等、数々名勝負を演出した不世出の指導者だけに、学ぶところも多かったですね。

    本当に奥の深い作品で、理解できたのは「大西鉄之祐」の考えのほんの極々一部なんでしょうけど、、、

    ひとりのラグビープレイヤーとして、そして、ひとりのラグビー好きな人間として、この一冊を通じて、数多くの気付きがあったと思います。

    また、現在は世界的にも標準的なプレーとなっている、スクラムでのダイレクトフッキングや少人数でラインアウトを行うショートラインアウト、ラインアウトで直接バックスのプレーヤーまでスローイングするロングスロー、フルバックを絡めたライン攻撃カンペイ等の独創的な戦術を編み出した柔軟かつ大胆な思考の裏側には、ルールへの深い理解や、対戦相手の綿密かつ詳細な分析があったことを、初めて知りました。


    忘れてはいけないので、、、

    特に印象に残った言葉や内容を紹介します。


    ≪ラグビーをエンジョイする≫

    ラグビーはもちろん楽しく愉快にやるべきであり、苦しく嫌々やるものではない。
    しかし本当のラグビーは散歩やハイキングの楽しさではない。
    それはエヴェレストを目標として艱難辛苦の末、遂に頂上をきわめる楽しさである。

    ≪コーチの資質≫

    そこにいる人間を愛する能力だ。
    これは天性なんだ。
    ない人間にはないんだよ。
    いくら名選手でも、いくら秀才が大学院でコーチ学を勉強しても、それだけは無理なんだ。

    ≪戦法に応じた基本≫

    世の中に、これが正しいパスとかスクラムというのはない。
    戦法に応じた基本があるだけだ。

    ≪ジャストとフェア≫

    ラグビーをやっていると、なぜあんなきついことをやるんだ、こう言われます。
    あの中でいくらでも悪いことができるんです。
    けれども、それをやらないところに非常な面白さがあると思うんです。

     ~中略~

    実際スポーツをやっている時には、二律背反の、良いことと悪いことの選択を迫られる場に必ずおかれるんです。
    そのときに、自分の意思で良い方を選択していく。
    これがフェアです。
    それを既に決まっているある基準によって決めるのではなく、自分で決めるんです。

    日本ではフェアの説明のときに、ジャスト(just)とフェア(fair)が違っていることがあります。
    ルールに従うのがフェアだという人がありますが、そんなもんフェアじゃありません。
    ルールは人間がつくったものでありますから、だからそれによって善悪を決めるのはジャスティスのジャストであります。
    こうやったらいかん、こうやっても良いということは決まっている、それを決めるのはジャストなんです。

    しかし、予め決まっていない場合があります。
    人間の行動にはそういうものはいくらでもあります。
    それに当たったときに、自分の人間性によって、これは良いことだ、これは悪いことだということを、私はこれを「汚いか、きれいか」と言ってるんですが、決めなければならないんです。



    これからも、ずっとずっとラグビーと付き合って行きたくなった。

    そんな一冊でした。

  • 著者にはお会いしたことがありますが、ラグビーへの情熱が行間からにじみ出ています。大西監督の生き様もよくわかりました

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著者プロフィール

ふじしま だい スポーツライター、ラグビー解説者。
1961年東京都生まれ。都立秋川高校、早稲田大学でラグビー部に所属。卒業後はスポーツニッポン新聞社を経て92年に独立。著述業のかたわら都立国立高校、早稲田大学ラグビー部のコーチを務めた。2002年『知と熱 日本ラグビーの変革者・大西鐵之祐』(文藝春秋)でミズノスポーツライター賞を受賞。著書に『楕円の流儀』(論創社)、『ラグビーの情景』(ベースボール・マガジン社)、『人類のためだ。 ラグビーエッセー選集』(鉄筆)、『知と熱』(鉄筆文庫)、『北風 小説 早稲田大学ラグビー部』(集英社文庫)、『友情と尊敬』(スズキスポーツ)、『序列を超えて。ラグビーワールドカップ全史1987-2015』(鉄筆文庫)などがある。

「2020年 『ラグビーって、いいもんだね。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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