テレビの黄金時代

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著者 : 小林信彦
  • 文藝春秋 (2002年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163590202

テレビの黄金時代の感想・レビュー・書評

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  • 2015/04/24:読了
     日本の喜劇人 の後、
     テレビの黄金時代 の 本人の目を通した記録。
     本人があとがきで、回想記でないと繰り返し書いているとおり、あとあと貴重な時代の資料になるんだろうと思われる本。

  • 今年はテレビ放映が開始されてから五十年目にあたるらしく、新聞やテレビの正月特集は、テレビ50年の歴史を扱ったものが目立った。NHKの番組では、「夢で逢いましょう」の司会者で斜めに首を傾げる会釈が印象的だったデザイナーの中嶋弘子が、放送当時の録画について楽屋裏の話を交えて解説していた。今のようにテレビ局や番組数が溢れておらず、大衆は皆同じ番組を楽しみにしていた。「夢で逢いましょう」は、当時のヴァラエティー番組として人気を誇っていた。

    小林信彦はサイレント時代からのアメリカ映画のギャグや、ミュージカル、テレビ・ヴァラエティーの見巧者として知られ、小説も書けば、雑誌の編集もし、エンターテインメント時評も書く。中原弓彦のペンネームでは「日本の喜劇人」のような喜劇論も書くという才人だが、草創期のテレビに深く関わった若き才能の一人でもあった。『テレビの黄金時代』は、著者が関わってきたテレビ界の最も元気のあった頃を描いた所謂バック・ステージ物の小説といってもいいだろう。とはいえ、自分の見てきたことだけを書くという著者のスタイルはここでも採用され、フィクションは皆無だという。

    それでは、面白くないかと言えば、これが、なかなか面白い。著者自身も先にあげた「夢で逢いましょう」などの番組でパイ投げの経験も持つテレビ人の一人で、いわば登場人物の一人である。さりながら、テレビの仕事はしていても、自分のほんとうの仕事は物書きであるという自負心が一歩引いたところから、この新興ゆえのエネルギーに溢れ返る猥雑な業界を眺めさせる。その絶妙のポジショニングが、身の回りで起きている出来事の一部始終を冷静に観察させ、かえって人間臭さを浮かび上がらせることに成功している。

    稀代の名プロデューサー井原高忠をはじめ、永六輔、前田武彦、青島幸男、大橋巨泉という豪華な顔ぶれの織りなす人間ドラマの中に、クレージーキャッツ、ドリフターズ、坂本九、コント55号などの栄枯盛衰振りが点綴されるのだから同時代を生きた者にとって面白くなかろうはずがない。菓子屋の跡取に生まれた著者には、独特の審美眼が備わっていて、人間を見つめる目は時に辛い。大橋巨泉の態度のでかさはおそらく見たままを綴ったものだろうが、容赦のかけらもない。日本テレビとワタナベプロの全面戦争など、当時は全然知らなかった。テレビ界の仕組みというものがよく分かった。

    「黄金時代」には、二つの意味がある。一つは、よく使われる、「最も栄えて華やかな時代・時期。最盛期」の意。『テレビの黄金時代』のような使い方の場合普通はこちらを採る。もう一つは、長くなるが、澁澤龍彦の同名の著書のあとがきを引きたい。

    「ギリシア人は人類の歴史を黄金、銀、青銅、鉄の四時代に分けたという。サトゥルヌスの支配下にあった黄金時代は、無垢と幸福の時代、労働ということを知らない豊饒の時代である。ユピテルの支配する銀時代から、人類の歴史はだんだん悪くなって行く。青銅時代は、不正と掠奪と戦争が世界を覆った時代。鉄時代は、自然の富がいちじるしく減少し、人類がいよいよ邪悪になって行く時代。」

    ヒッチコック・マガジンの名編集長らしく、二つの意味を重ねたダブル・ミーニングの凝った題名のつけ方だが、どちらの色あいが濃いかは読んだ者にしか分からないかもしれない。

  • 読んでいるうちに「どこかで見たな」という部分があって、どうも雑誌連載中に読んでいたらしかった。

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渥美清がいた、クレイジー・キャッツがいた、坂本九がいた、青島幸男がいた、前田武彦がいた。「シャボン玉ホリデー」「九ちゃん!」「ゲバゲバ90分」などヴァラエティ番組を中心にふりかえるメディア現代史。

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