私の家は山の向こう: テレサ・テン十年目の真実

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163668406

作品紹介・あらすじ

スパイ説、本当の死因、中国政府の罠、天安門事件との繋がり…全ての謎の答えはこの本にある!没後十年、いま明かされる「アジアの歌姫」の真実。

感想・レビュー・書評

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  • 歌にめざめ、歌に生き、台湾、香港で人気が出て、確固たる地位を得たあとに、日本へ進出。新人として扱われ最初は芽が出ないが、「つぐない」「愛人」「時の流れに身をまかせ」とヒット曲にもめぐまれ、紅白にも。その後、"パスポート事件"でアメリカに渡るが、台湾側も折れて不問とされ。そこにはつい最近まで戒厳令を出していた台湾、国の出入りが煩雑だったことへの対処という側面もあり。また中国も激動の時を経て、改革開放へと向かう。退廃音楽と非難されても、庶民の口にテレサ・テンの歌がのぼるのは止められず。ついには中国当局から天安門広場での大コンサートを打診され、テレサも乗り気になっていたが、天安門事件はそんな彼女の気持ちをくじいた。失意の彼女はパリへ向かい。そして最後の恋人と出会い、パリ、日本、香港、台湾と渡り歩き、タイで喘息の悪化、おそらくはのちに過剰投与が問題視された薬の影響もあり、死去…と。死後おもに日本で大々的にスパイ説、謀殺説、エイズ説などが報道されたがすべて根拠薄弱なデマばかりであったことが描かれる。日本の大多数の人は、ヒット曲を何曲か残した演歌歌手のイメージを持つかもしれないが、台湾、香港、中国とアジア各国で幅広く支持を受け、時に民主化に立ち上がる学生たちを大いに応援し、天安門事件後も一時は民主化を支援する姿勢を見せるなど活発に政治的意見を表明してきたが、その後は、こんな時に歌うことが何か悪いような気持ちにとらわれて、政治的な意見表明から身を引いてしまう…と。「パスポート事件」にみられるように台湾が国際社会の中で孤立していく過程とつい最近まで戒厳令が敷かれていた政治体制だったこと。中国の政治体制の変遷により、時に名指しで非難され、時にそれが緩められ、また当局からコンサートの開催計画が具体的にすすめられたり、天安門事件後は一切接触が絶たれたりと、ふりまわされてきた面など、国際政治の流れと無縁な存在ではいられなかったことなども知ることができた。

  • 鵜村殿村立図書館---県立図書館。

    K-POPブーム・・・アジアの歌姫たち・・・を俯瞰する絶好の機会。

  • テレサ・テン。華人世界では?麗君Dèng Lìjūnの名で知られるスーパースターの生き様に触れた作品。台湾軍部のスパイ説や死因を巡る薬物説など、死後もマスコミを賑わせているのは、それだけ熱烈なファンがメチャメチャ多いと言うことだろう。
    有田芳生氏といえば、もともとオウムというイメージしかなかったが、何でもコメントする人だなぁという程度の知識でこの本を手にした。しかし氏は本作で、テレサの心の内に大きく影を残した1989年6月4日の天安門事件と、二つの中国の狭間に置かれた歌姫の苦悩を照らし出していく。また、日本では演歌歌手のイメージばかりが残ってしまっている現状にも問題点を指摘している。もっと多様な、もっと真実に近い、もっと等身大の、スーパースター=テレサ・テンを知って欲しいという情熱が伝わってくる。
    しかし、正直言って決して文章が上手いとは言えず、もっとぐいぐい引っ張るような文章表現を期待している方には不満が残るかも知れない。それでもなお情熱の方が勝っている作品であるのも事実だ。小生のように貧乏でなければ、ぜひとも単行本をお薦めする。それには生涯一度だけ歌った、タイトル曲「私の家は山の向こう」のミニCDが付いているからだ。アジアを代表する歌姫テレサに出会うきっかけになる一冊。

  • パスポート問題と最期のことはずっと引っかかっていて、読んでやっとそういうことか思った。だが淡々と取材内容を連ねながら描かれる悲しき女の一生を読み終えて、結局心に残るのは美しき(悲しき?)歌声という気がする。それでいいんじゃないのだろうか。巻末付録CDに、かの時のライブ歌声と有田氏のインタビュー音声が収められている。

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著者プロフィール

有田芳生 ARITA YOSHIFU
1952年、京都府生まれ。ジャーナリスト。出版社勤務を経て、1986年にフリーランスに転身。『朝日ジャーナル』(朝日新聞社)で霊感商法批判キャンペーンに参加。その後、『週刊文春』(文藝春秋)などで統一教会問題の報道に携わる。都はるみ、阿木燿子、宇崎竜童、テレサ・テンなどの人物ノンフィクションを週刊誌各誌で執筆。2010年、参議院選挙に出馬し初当選。2022年まで2期務め、拉致問題、ヘイトスピーチ問題に取り組む。近著『改訂新版 統一教会とは何か』(大月書店)、『北朝鮮 拉致問題――極秘文書から見える真実』(集英社新書)のほか著書多数。メルマガ「有田芳生の『酔醒漫録』」(まぐまぐ)で統一教会のタブーを精力的に発信する

「2023年 『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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