物乞う仏陀

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163677408

感想・レビュー・書評

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  • 世界を知った気になってるだけだ、と作者も本文でちらりと言ってましたね。
    こういう本を読んで、貧困層の暮らしぶりを知って衝撃を受けて、でも私は翌日も普段と同じように出社してご飯を食べてコンビニでおやつ買ったりして帰宅したらお風呂入って温かい布団で寝るわけですよ。身銭を切って何か貢献する訳でなし、身一つでボランティアに向かう訳でなし。「ああ、本で読んで知ってるよ?貧しい国の子供は大変だよね」と神妙な顔で言って、それが一体何だというんだ。
    大人になったら無知も罪だというけれど、なんか遣る瀬無い気持ちでいっぱいです…。

  • アフガニスタンとパキスタンの国境付近にある難民キャンプで、物乞いをする眼球のない少女と出会った石井さん。
    “物乞いして生きる障害者”の存在を目の当たりにし、彼らのことが知りたくなった石井さんは、カンボジア、ベトナム、タイなどの東南アジア諸国に旅に出ます。
    そして、たくさんの障害者の物乞いと出会います。

    戦争や地雷や不発弾で障害を負った人、小児麻痺や知的障害などの先天的な障害を持った人、マフィアに腕や足を切り落とされ物乞いをさせられている人。

    行った先々で石井さんは彼らと友達になり、酒を飲んだり安煙草を吸いながら、自分の中に沸いた素朴な疑問を投げかける、そういう形の取材方法で彼らの今と過去を調べていきます。
    そして、そのときに感じた正直な感想を綴っています。
    だから、身構えた“ルポルタージュ”というよりは、旅の日記に近い印象を受けました。

    憤りを覚える残酷な現実もあります。
    でも、それだけじゃない、ほっとする温かい現実もたくさんありました。
    前に読んだ『地を這う祈り』でも感じたことですが、道行く人に薄汚れた手を差し出して物乞いをする人たちが、逞しく前向きで生きることを諦めない強い人に思えてきます。
    石井さんの文章がそう思わせてくれます。

    一日かけて稼いだ金で、酒を買い、娼婦を買い、明日の分はまた明日稼ぐさと笑う男たち。
    義足の物乞いが冗談を言ってストリートチルドレンを笑わしている。
    そんな姿を見て、「金持ちや裕福な外国人の何倍も生命力にあふれ、活気のある笑い声をだしている」と感じた石井さんの感性。

    「物乞いは生きるための糧を得る正当な手段であり仕事なのだ。いわば物乞いとは仕事に就けない人の仕事だといえるだろう」
    という一文に読み当たったとき、私がこの人の作品に惹かれるのは、この人の感性に魅了されているからだと気づきました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「仕事に就けない人の仕事」
      そう言う当り前のコトを失念してしまう。職業に貴賎なし。。。物乞いは勿論、ヤクザも坊主も、訳の判らない弁護をして普...
      「仕事に就けない人の仕事」
      そう言う当り前のコトを失念してしまう。職業に貴賎なし。。。物乞いは勿論、ヤクザも坊主も、訳の判らない弁護をして普通の人を唖然とさせる弁護士も、役人や政治屋も立派な職業である。
      石井光太の本を読んでみよう、、、
      2013/04/10
    • NAEさん
      石井光太さんはオススメです♪
      石井光太さんはオススメです♪
      2013/04/30
  • 貧困の中で暮らすアジアの障害者に関する本。
    普段の生活に疑問を投げかけてしまうような本。
    世界が違うって言うのはこういうことなんだなと思う。
    戦争で、負傷して生き残った人たちとか、生きるために障害を負わされる人たちとか。
    今の暮らしが贅沢なのか?と考えてしまうけれど、きっと幸せなんだろう。

  • インドの交差点で、窓ガラスに手を当てて車の中の僕の目をじっと見てきた少女のことが忘れられない

  • 知らない方が幸せなことってあるなぁ…と思いました。
    この本が書かれてから13年弱、少しは状況が良くなっているとよいのですが。
    何もできない無力感に襲われます。

  • ベトナム、カンボジア、タイ、スリランカ、インド、ネパールの最貧民層である乞食や、物売りの人々を取材した物。地雷や、先天性のものや、犯罪で物乞いにならざるをえない人々がただ、淡々と描かれる。最後のインドの話が一番悲しくなり、むなしくもなる。

    乞食をする事しかできない人々のために同じ人間である自分は何ができるのか。何をすべきなのか。
    まぁ自分だってホームレスにならない保証はどこにもないんだけど、あまりにもこの本に描かれている人々とは環境が違う。日本は平和だ。今の日本にも暗部はあるんだろうけど、日常生活している限りそんな部分はほとんど出会わないしね。

    やはり世の中は不公平である。もし神がいるのなら何故このような世界にしたのか。
    なにか意味があるのか。あるのは現実だけか。人は何のために生まれてくるのか、
    よくわからなくなりますな。

  • 鎌田實さんの紹介で興味を持って読了。各国の暗部を淡々とルポ。上から目線でもなく、同情の視点でもない。そんな作者にも背けたくなる、一歩踏み出せない事もあった。国や立場が違えば、考え方も常識も変わる事を身を以て伝えてくれた。

  • 日本ではあまり目にしない障害者や底辺に生きる貧困層の人々。アジアを旅すれば、至るところに彼らはいる。
    アジアの闇を描いたこういう本を読んでからでも読む前でもいいから、日本人はまず自分の目で見るべきだと。世界遺産巡りもいいけれど、その遺産の前にうずくまる手足のない目の見えない子どもたちから目を逸らさず、喜捨をする前にもう一度「なぜ?」と考えてみる。
    現実を見れば重いものを抱えて帰って来ることになるけれど、己の無力さを知るだけでも意味があると思う。少なくともアジアに「無関心」ではいられなくなるはずだから。

  • ノンフィクション作家石井光太氏のデビュー作です。アジア諸国の障害者、物乞い、マフィア、娼婦への取材を彼らの生活の中に自ら入り込んで行っています。


    決して、道徳観を説教されるような内容ではありません。目を背けたい、信じがたい事実がただ書かれています。

  • 2012年のネパールで見た少年の姿が記されていた。この本2005年出版なのに…何も変わってないんだな。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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