戦場から女優へ

  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784163710204

感想・レビュー・書評

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  • 滝川クリステルのモノマネやバラエティー番組での姿しか知らないが、知的な美女のサヘル・ローズが23年間を綴った自伝。イランで空襲を受け生き埋めになった4歳のサヘルを奇跡的に学生ボランティアのフローラが発見し、身寄りをなくした彼女を養子に迎え入れる。これが原因で実家を追い出されたフローラは、恋人を頼りにサヘルと来日する。しかし心変わりした恋人に裏切られ、日本語もわからないまま2人の公園暮しが始まる。中学校でのいじめや、ツナ缶を分け合う極貧生活はひたすら辛い。高校進学からは少し上向き始め、大学進学まで果たすが声優の専門学校へ行くために大学を中退する。極貧生活でやっと大学まで行ったのに退学はもったいないとしか思わないけど、本人にとっては正解だったらしい。タイトルの「戦場から女優へ」の「女優へ」に若干引っかかったが、これから女優を目指していくという決意のようだ。4歳児の記憶力に疑問は残るものの、読み物としては素直に面白い。血縁のない母親の娘に対する愛情と、娘の母親に対する尊敬の念が随所に溢れている。

  • 裕福な家庭の未婚のお嬢さんが親族でもない戦争孤児を引き取るなんて美しい話だとアメリカなら美化され賞賛されるだろう。
    だけどイスラム社会で未婚女性がそんなことするなんて考えられないと思うし両親が反対したのも理解できる。本当にすごい決断だと思う。

    孤児を引き取った事情を知った上で日本で働く婚約者が2人を呼び寄せたのは男義あるなと感心したのに実際に暮らし始めると嫌気がさしたのか言葉もロクにわからない異国で家を追い出すなんて非常すぎる。それなりの事情があったとは思うが婚約破棄させれて義母も母国へ帰るに帰れなくなってしまったんだろう。婚約者に捨てられた未婚の母なんて当時のイスラム社会ではどんな扱いだったろうか。

    個人的にはちょっと書かれていた戦争孤児になる前の生活が興味深かった。産みの親がサヘルを産んだら病院に置いてって引き取りにこないとか。貧しさのあまりとはいえ、当時はそれが珍しいことでもなかったよう。

    なんだかレ・ミゼラブルのフォンティーヌ(母)がコゼットのために身を粉にしているのを連想させられた。それほどに義母は子どものために生きているように思う。

    戦争に巻き込まれて悲惨だけど今のお母さんに引き取られてよかった。

  • 小学生の時に、何となく気になって手に取りました。
    こういう芸能人の書いた本を読むのは初めて。
    普段テレビで観てる人が、
    こんな体験、こんな思いをしていたんだ・・・と驚きました。

  • 美人は貧乏に見えないのがいいな
    お母さんが素晴らしい

  • 表紙の可愛い顔からは想像できないくらい辛い苦しい思いで今まで生きてきたサヘル。
    産まれた時から戦争しか知らない子供達が世界には沢山いる。
    今の学生達は戦争は遠い昔の話、日本史の中でしか知らないだろう。

    サヘルも強いが養母には頭が下がる。 裕福な家のお嬢さんがボランティアで孤児院から彼女を引き取り自分の人生を犠牲にして育て上げるとは・・・

     

  • 内容は深刻だけれども、表現が重くない。明るい語り口のおかげでライトに読める。普段本を読まない人や、小中学生にもおすすめ。
    こんな環境で、よくも真っ直ぐ育ったものだと感心する。お母さんは本当に強い人だと思う。サヘルさんを応援したくなること間違いなし。

  • あなたはイランっていうとどのようなイメージを持つだろうか?

    サヘル・ローズさんはイラン出身のタレントさんですね。

    現在は日本で活躍されています。ザ・サンデーに出演していた「滝川クリサヘル」というアナウンサーの滝川クリステルさんのものまねをしながらニュースを読んでいたというと思い出していただけるかもしれません。

    まだ25歳のサヘルさん。この本を読んでいくと、かなり壮絶な人生を送られていることがわかります。

    4歳の時にイランで空爆を受けて、両親とサヘルさん以外の兄弟10人を一気に亡くしました。

    サヘルさんと養母さんとイラン人の方のつてを頼りに日本へ。しかし、いじめにあったり、日々の生活にも大変苦労したり、内容はとても暗いです。

    しかし、その中で見えてくる、サヘルさんや養母さんの前向きさがとても際立っています。

    きっとどんなことでもしっかり乗り越えられるだろうなと感じました。

    読んでも損をしない一冊になっていると思います。

  • 最近テレビでレポーターとしてお見かけするサヘル・ローズさんが、数奇な出自を語った本です。

    テヘランに住む女子大生が訪れたのは、イラク軍の空爆を受けた田舎の町でした。
    医師、看護師らとともに、ボランティアとして参加した救出活動では、一人の生存者も発見できませんでした。
    撤収命令が下った後も、あきらめきれず、最後にもう一度現場を見回った彼女は、瓦礫に埋もれた小さな手を見つけます。
    握ったその手の持ち主は4歳の少女。まだかすかな息がありました。

    病院で目を覚ました少女は、はじめて見た女性に思わず、「Mader(お母さん)」と呼びかけました。それが、フローラとサヘルの出会いでした。

    家族を失い孤児となった少女は、孤児院に収容されました。
    でも、いつか、自分を助けてくれたあの女性が迎えにきてくれるに違いないと信じていました。

    「わたしの子どもになる?」

    サヘルを養子にしたことで、裕福な家庭に育った恵まれた大学生だったフローラの人生は、まったく変わったものになりました。
    両親の反対にあい、家を追われ、二人はイランを出国。フローラの婚約者が住む日本に移住します。

    それからの二人の生活は、凄絶なものでした。
    たった一人頼った婚約者の裏切り。
    ホームレスになる。
    学校でのいじめ。
    ツナ缶一つで2日間の食いつなぐ貧乏な暮らし。

    空爆ですべての家族を失い、たまたま一人生きのびてしまっただけなのに、なぜ、こんな辛い思いをしなければならないのか。
    その暮らしの中で、サヘルは自分自身に問いかけます。

      私は生きている理由、生かされている理由を知りたかった。

    自分の存在理由を知りたい。
    そして、たった一人の家族となってくれたフローラに幸せになってほしい。
    それだけが、未来を切り開いていく推進力でした。

    「この子はたいした人間にはならないわよ。貧しい町の生まれで、しかも孤児院にいたような子が特別な人間になれるわけがない。おカネの無駄」
    サヘルを引き取るとき、フローラは周囲の人々にさんざん聞かされました。

      私ががんばってテレビに出られるようになったことで、イランにいる人たちに、誰でもがんばればできることを示すことができた。

    そう、生きてきてよかったと思えるのは、繋いだ家族の絆が、どんな血の繋がりよりも強くかけがえのないものだと確認するときです。

  •  「真実は小説より奇なり」まさにその通りの波乱万丈の実話である。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)ローズ サヘル1985年10月21日生まれ。イラン出身。89年、イラン・イラク戦争での空爆により家族全員が死亡。住んでいた村が全滅。ただ一人、ボランティアの女学生に救出され、孤児院に。やがて、裕福な家庭に育ったその女学生に養女として引き取られる。ところが、養母は両親から勘当されてしまう。そこから二人の苦労が始まった。93年、日本で働く養母の婚約者を頼り、二人で来日するも、今度は「連れ子」の存在が原因で離別。その後、公園でのホームレス生活、クラスメートからのいじめ等を経験。高校在学中よりJ‐WAVE「GOOD MORNING TOKYO」のレポーター等の活動を開始。07年、日本テレビ「The・サンデー」内の「週刊!男前ニュース」に「滝川クリサヘル」として出演し注目される。現在、テレビ、ラジオ、CM、舞台等で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 彼女を知ったのは、通勤中に聴いていたFMラジオで。ジョン・カビラがナビゲーターを務めた、J‐WAVE「GOOD MORNING TOKYO」でのレポーターが彼女、サヘルだった。明るく元気で、視点がちょっと変わっていたので、興味を惹かれた。日本語がペラペラで、当初はイラン人だとは気付いていなかった。やがて、会話の中からイラン人であることや、生い立ちが少しだけわかり、番組のホームページを見たりもした。でも、それだけだったら、本書を読むことはなかったかもしれない。ところが、先日、「徹子の部屋」に出ているのがたまたま目にとまった。そこで彼女が語った、生い立ちから現在までの話が、実に衝撃的なものだった。その時、本書を読んでみたいと思ったのだ。読んでみると、私が彼女に抱いていたイメージが覆された。明るく元気な姿は、仕事に対する賢明な努力によるものだという。自分の夢というだけでなく、苦労をかけた養母に報いるためにも、懸命に頑張る姿勢が、彼女を明るく元気に見せていたことがわかった。心打たれるものだった。彼女を養女として引き取った、その養母だが、言葉では言い表せないくらいに偉い女性だ。崇高さを感じさせる。こんな人が本当にいるのかと、これ以上ないほどに感動した。サヘルは、芸能界という世界を選んだ。大変な世界だと思う。でも、そのピュアな心はいつまでも大切にしてほしい。

  • タレントのサヘル・ローズさんの自伝。

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著者プロフィール

俳優・タレント
1985年イラン生まれ。幼少時代はイランの孤児院で生活し、7歳のときにフローラ・ジャスミンの養女として引き取られる。8歳で養母とともに来日。高校時代に受けたラジオ局J-WAVEのオーディションに合格して芸能活動を始める。レポーター、ナレーター、コメンテーターなど様々なタレント活動のほか、俳優として映画やテレビドラマに出演し舞台にも立つ。
また芸能活動以外で、国際人権NGOの「すべての子どもに家庭を」の活動では親善大使を務めていた。私的にも援助活動を続け、公私にわたる福祉活動が評価され、アメリカで人権活動家賞を受賞。著書には『戦場から女優へ』(文藝春秋)、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏との共著で写真詩集『あなたと、わたし』(日本写真企画)がある。


「2022年 『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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