ハチはなぜ大量死したのか

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163710303

感想・レビュー・書評

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  • 請求記号:646.9/ ジ
    資料番号:011103421
    身近な昆虫の謎 ②
     ある年,一人の養蜂家が自分の飼っている蜂の数がとても少ないことに気づきます。それは害虫によるコロニーの消滅ではなく,『失踪』としか言いようのない不可解なものでした。ミツバチの事件によって明らかになった,人と蜂と自然が抱えている問題とは。

  • 純粋に読み物として面白い。養蜂の歴史と重要性が愛情を持って語られ、そこから題材のミツバチ消失現象へ話題は移るが、炭坑のカナリヤの警告が発せられる。グローバル化によるウィルスの移動、農薬・化学物質の複合汚染、技術の発展と資本主義の要請によるストレスの増加。こういった人類の根幹を脅かしかねないリスクに対してミツバチという弱い生き物がいち早く反応した結果、として真摯に受け止めるべき。他の環境関連本と同様、どうしても記述はセンセーショナルになるので、沈黙の春来たり、と鵜呑みにしてあまり悲観的になりすぎてもいけない。

  • 生体や環境を、蜂を通じて平衡の大切さが書かれています。
    蜂が飼いたくなる一冊です。

  • 昆虫の生態学と環境とを関連づけて論じた本。人間の飼育方法一つでハチがこんなに影響を受けるのかと強く感じた。

  • 忽然と巣箱から姿を消したミツバチ。 それは単一の養蜂家を襲った事件ではなく、全米に広がりを見せていた奇怪な症状だった。 なぜ、ミツバチの生態や養蜂家の実態に密着しつつ、ミツバチが消えた謎を追うサイエンスミステリー。

    2007年、北半球に生息するミツバチの4分の1(400億匹)が失踪するという事態が発生。 これまでミツバチを死に至らしめる病気、害虫は居たが、ある朝が巣箱をあけると、そこにいるはずの働きバチがいなくなるという、奇奇怪怪な症状。 謎のその病気は蜂群崩壊症候群(CCD)と名付けられ、専門家の研究の標的となる。 蜂に寄生するダニや、形態の電磁波、ネオニコチノイド系農薬などが疑われているが、まだ真の原因は究明されておらず、仮説に過ぎない。

    本書はこの不可思議な症状を語るために、北米におけるミツバチ産業のこれまでの歴史と現状にもページを割いており、単なるサイエンスミステリーではなく、養蜂ビジネスが現代の社会にもたらしている恩恵など、社会の仕組みの一部としてのミツバチ産業を知ることが出来る。 漠然とは理解していたものの、ミツバチが果たす役割の大きさに今更ながら感銘を受ける。 ただその一方で、恩恵の代償として人間の関与による生態系の崩壊う大きなテーマが際立って浮かびあがる。

    これまで環境破壊、生態系破壊は事あるごとに話題となって出てきていたが、本書はミツバチの病気という新しい切り口で、自然界崩壊への警鐘を鳴らす良書である。

  • -2007年春までに北半球から四分の一のハチが消えた-

    2006年春、フロリダのある養蜂家はミツバチの数が少ないことに気付いた。巣箱を開けてみる。働きバチと呼ばれる外勤蜂がいない。女王蜂の周りに一握りの内勤蜂がいるだけだ。ダニにやられたのだろうか?いや、そうなら巣箱の周りに蜂の屍骸が散乱しているはずだ。ハチは文字通り姿を消してしまった。巣箱に大量の蜂蜜を残して・・・


    蜂が減っている、そのようなニュースを耳にした記憶があります。それが、日本だったかアメリカだったのかは覚えていないんですが。そのときはぼんやりと「ただでさえ蜂蜜高いのになぁ」と思った記憶もあります。しかし、本書を読んで、事態はそんな単純ではないと知りました。果物はもちろんのこと、ナッツ類から野菜類まで実に80パーセントの食物が、何らかの形で花粉媒介者(野生種を含めて)のお世話になっているとは!もちろんこれはアメリカでの話なので、日本では少し事情が異なるとは思いますが、やはり植物の受粉に花粉媒介者の存在が欠かせないことは事実でしょう。

    蜂の失踪について、本書では色々な推察がなされています。昔から養蜂家を悩ましてきたダニ説や、それを退治するために投与される抗生剤の影響、農薬づけにされた食物と大地・・受粉のため長距離を移動させられるストレスなど。ただ、これといった決め手はありません。いくつかの要因が組み合わされているのかもしれません。

    蜂の生態などについても色々と知ることができました。生まれてくる蜂は雌で、たまに未受精卵を生む時がありこれが雄蜂になる。女王蜂は一生に一度外に出た時複数の雄蜂と交尾し精子の入った袋ごと取り込み(雄蜂は死んでしまう)卵を産むときに受精させる等々。また、幼虫が成虫になり、巣の掃除→幼虫の世話→貯密蜂(花蜜をろ過し蜂密にする)→採餌蜂 と見事に出来上がったシステムの素晴らしいこと。あっという間に全体にいきわたるネットワークなど、まさに巣全体が一つの生命体と言っても過言ではないようだ。が、同じレベルの食事を見つけても、冷静に捉える蜂もいれば、興奮しやすい蜂もいるというのが微笑ましかったです。

    それにしても養蜂家の現状は大変ですね。蜂たちもですが。先にあげたようなことに加え、安い中国産に太刀打ちできないし。しかし、蜂蜜に含まれる農薬量や蜂蜜ですらない(混ぜ物)こともあろという・・確かにその差は味にも値段にも歴然と表れていますからね。

    最後にちょっぴり希望の話を。あらかじめ巣板にパターンを刻み込んで画一的な大きさの巣房を作らせているのを止め、蜂に自由に作らせると、下に向かって先細りになる巣を作るらしいです。そのほうがダニも抑えられるし女王蜂も多産で寿命が延びるそうです。自然の生き物にとって、自然な状態がいいのは至極当たり前のことで、人の都合に合わせすぎたのが良くないんでしょうね。

    本書を読んで蜂を飼ってみたくなった方への参考資料もありました。が、蜂蜜は好きでも、蜂は怖いのでお近づきになりたくない私・・せめて純国産蜂蜜の食べ比べでもしますか。

  • 福岡伸一氏の解説。
    「二重写し」=狂牛病禍
    「食物連鎖網、もっとも基本的な動的平衡状態が人為的に組み替えられたことで発生。複数の人災の連鎖によって地球上に広がる」

    経済に組み込まれる。自然界の異変。ハチの大量死へ。

  • 比較試験では、一種類か二種類の要因を研究することしかできない。そのため、科学的な調査では問題を最小単位にまで分類してから、一度に取り上げて、その要因をどうしたら操作できるか探ろうとする。その成果は小さなブロ置くに分けられた細切れの知識だ。

    生態系のようなダイナミクスを理解するには最適なアプローチとは呼べない。

  • ハチがいなくなっちゃいます!大変です!この賢い小さな昆虫の大切さがよ~くわかりました。複合的な要因による現象だけに、解決は困難でしょうけど、まずは問題を認識することから始めましょう!

  • 人間の、自然に対する傲慢さに警鐘を鳴らす、非常に興味深い内容だった。
    そして何より、巻末の福岡伸一氏の解説がすばらしい。
    この解説だけでも読む価値あり。

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