名著講義

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163720203

作品紹介・あらすじ

女子大生vs.藤原教授。『武士道』『福翁自伝』『逝きし世の面影』『きけわだつみのこえ』等を巡り、時に激論!時に人生相談?時に脱線&爆笑。白熱の「読書ゼミ」全公開。

感想・レビュー・書評

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  • 非常に読み応えのある本で、読み終えるのが惜しくてゆっくりゆっくり時間をかけて読んだ。
    藤原先生、ありがとうございます。
    自分のルーツについて再認識させられた、幸せな時間でした。

    これは、お茶の水女子大での、著者による読書ゼミをまとめたもの。
    このゼミの受講条件は、ひとつには毎週一冊の文庫を読む根性があること。
    もうひとつは、毎週一冊の文庫を買う財力があること。
    定員は20名。
    読後レポートを提出し、授業中はディスカッションをする。
    読みどころはその師弟問答。
    もしも自分がその場にいたらどう答えただろうと、しばしば考えさせられる。
    時に教師の側に立ったり学生の立場になったり。笑ったり質問したり反論してみたり。

    課題となった書物は以下11冊。
    ①新渡戸稲造 「武士道」
    ②内村鑑三 「余は如何にして基督信徒となりしか」
    ③福沢諭吉 「学問のすゝめ」
    ④日本戦没学生記念会編 「きけわだつみのこえ」
    ⑤渡辺京二 「逝きし世の面影」
    ⑥山川菊栄 「武家の女性」
    ⑦内村鑑三 「代表的日本人」
    ⑧無着成恭 「山びこ学校」
    ⑨宮本常一 「忘れられた日本人」
    ⑩キャサリン・サンソム「東京に暮らす」
    ⑪福沢諭吉 「福翁自伝」

    ⑤⑥⑦⑩は未読だが、現代においても普遍性のある作品ばかり。
    今の価値観でだけ見ると「こんな古い本は役にも立たないし面白くもない」となりそうだが、それはあまりに浅薄というもの。書かれた時代背景を知ることが何より大切で、それは良書を通じて正しい歴史を学ぶことにもなる。
    更に、このゼミを知ると既読のものさえも、何度でも読み返したくなってくる。
    先達たちの心意気とその強い矜持にふれ、胸がざわつかない人がいるだろうか。
    何をするというわけでもない。
    ただ、元気を出してまっすぐ穏やかに生きようと、心からそう思う。
    著者の後書きまで含めて、全ての方におすすめ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/55815

  • 「国家の品格」の著者。数学者で新田次郎の子息。岩波文庫の名著をもとにしたゼミの様子を本としたもの。このなかの名著では、「余は如何にして基督信徒となりしや」と「武家の女性」と「きけわだつみのこえ」を読んだ事があった。後の名著も読んでみた。

  • 2017年4月17日読了

  • 多治見図書館

  • 夫が尊敬する藤原先生の、大学での読書ゼミについてが収録された本です。夫が図書館で借りたので私も読んでみました。

    このゼミは、藤原先生が明治以降の名著を指定し、学生がその本を読み、内容について討論するというものです。

    指定図書は下記の通り。

    新渡戸稲造 武士道
    内村鑑三 余は如何にして基督信徒となりし乎
    福沢諭吉 学問のすすめ
    日本戦没学生記念会編 新版 きけ わだつみのこえ
    渡辺京二 逝きし世の面影
    山川菊栄 武家の女性
    内村鑑三 代表的日本人
    無着成恭編 山びこ学校
    宮本常一 忘れられた日本人
    キャサリンサンソム 東京に暮らす
    福沢諭吉 福翁自伝
    藤原正彦 若き数学者のアメリカ から 孤愁 へ

    どれも日本人でよかった、と思わせるような名著ばかりで、選択はさすが「国家の品格」の著者です。。

    武士道
    日本における武士は、同じ支配者階層であるヨーロッパの貴族とは全く違う精神性の高い階級だということがわかり、また、武士道=切腹ではなく、「立派に死ねるように、今立派に生きなさい」ということが要するに主題なのです。

    余は如何にして~
    内村は敬虔なキリスト教徒としてアメリカで数年暮らし、帰国後は祖国愛とキリストへの愛を身をもって融合し、その立場から内外に向けた活動を行う一環として本書が出版されました。その情熱のパワフル加減に感銘を受けます。

    きけ わだつみのこえ
    学徒兵が軍国主義に騙され、「天皇陛下万歳」と絶叫して死んでいった気の毒な人、という固定観念が崩れ、現代の日本人が足元にも及ばない父母や祖国を思う心の強烈さ、大量の読書によりはぐぐまれたに違いない教養の深さ、戦陣にいて軍部を批判するだけの正義感と洞察力を持っていたことを知り、祖国のために捨てた命の気高い行為に胸を打たれます。そして、断ちがたい学問への思いを断って、祖国や愛する人々の幸せを祈りつつ散華していった学徒たちの思いを胸に、自由と平和と独立を守ろうと覚悟をします。それが現代人の責任なのです。

    逝きし世の面影
    幕末から明治時代、当時の日本を訪れた外国人が日本をどうみたかを描いた作品。外国人から見た日本人は、完全な専制君主制の下で生活しているのに、身分にかかわらず自己の尊厳を主張出来る物怖じしない国民、皆貧しいのに幸せそうだ、という印象でした。一言で言うと、お金と幸福とが無関係であることを示した、欧米人にとっては想像を絶した世界だったのです。

    山びこ学校
    山形県にある中学校の生徒43人が昭和23年からの3年間に書いた作文や詩を、担任の無着成恭先生がまとめたものです。戦後のベストセラー作品。当時の生活の苦しさに驚き、それでも力強く前向きに生きる姿に胸を打たれ、親を思う気持ちに涙します。

    福翁自伝
    福沢諭吉の自伝です。学問のすすめとはトーンが違い、ユーモアに溢れた一冊。諭吉は幕末にアメリカ2度、ヨーロッパと3度洋行しています。諭吉は、それまで日本における洋学と言えば医術・砲術・兵法・航海術・地理などに限定されていたことに疑問を抱き、それを運用するには組織の研究をしなければ、日本にこれらを根付かせ文明開化することはできないと悟ります。だから諭吉は選挙・議会・内閣・徴兵制・税制などのしくみ、病院・銀行・保険・郵便・学校などの組織運営に的を絞って研究していきます。諭吉の偉大さに感服しました。

  • 明治維新前後の日本人の特長を記した本を、
    藤原教授と御茶ノ水女子大の生徒が批評する本。
    日本人であることに自信を持てた。
    文章が上手い。笑えるし、リズム感がある。

  • おすすめ資料 第111回 若者よ、覚醒せよ ―真の国際人をめざして―(2010.5.7)
     
    御茶の水女子大の名物教授、藤原正彦氏による、同大学生を対象とした、文字通り「名著」をめぐる読書ゼミの記録です。
    とりあげられているのは『学問のすゝめ』『武士道』はじめ、岩波文庫に収録されている明治期の大物の著作ばかり。
    しかし、名前を聞くわりに実際に読んだことのない題名がならんでいます。
    いや、むしろ、今学生が読む価値があるのかという疑問の声が聞こえてきそうな著作ばかりです。

    綺羅星のようにならぶ明治期の著作、明治の人の熱い思いに触れたとき、学生たちの考え方、日本への思い、読書、学問への気構えに変化がおこっていくのが本書を通してわかります。
    もちろんそれは藤原先生の分厚い知識と愛情によって導かれたものであるともいえますが、学生と先生の真剣な「読み」と論議、それに十分応える内容の著作であればこそといえるでしょう。

    日本への愛と、日本人ならではの美的感受性という、失ってはならないものを失ってしまっている現代の薄っぺらな日本人ですが、まだ遅くはありません。
    本当の「国際人」を目指すのなら、ぜひ、「名著」の扉をたたいて自分の国のことにもっと関心をもってください。

    本書は大学生にとってのよき「名著案内」であるとともに、自ら読み、考えることへの道標となると思います。

  • ひさびさにすごく手応えのある本を読んだ。
    大学教授が読書ゼミを開き、名だたる名著の文庫本を通して人生指南をする。これぞ哲学の授業であるべき。

    驚いたのは、この著者があの新田次郎のご子息であり、かつ、数学研究者であること。文系の専門家よりもなお、文系の古典についてすばらしい講義をなさる。この先生に教わった学生さんは幸せ者だ。

    奥さんや母親について語ったところが剽軽でずいぶんおかしい。この人の本も読んでみたくなった。

  • 語り文で非常に読みやすい。自分が読んだことのない古典の内容が垣間見れるだけでも価値のある一冊。しかし、藤原先生の語り口調は一度味わったら癖になりますね笑

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著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2020年 『本屋を守れ 読書とは国力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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