がん 生と死の謎に挑む

  • 文藝春秋
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163725703

作品紹介・あらすじ

大反響を呼んだNHKスペシャルを単行本化。番組DVD付き。

感想・レビュー・書評

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  • 結論から言えば、ガンを根治させること、完治すること、完全に予防することは現代医療では難しい。今後の見通しでも、がん治療の進展はほぼ期待できない。ガンは生体にとって異常なことが原因で起きるのではなく、人間が多細胞生物でありかつ長寿になったことから起こる必然である。

     ガンの予防という意味で言えば、タバコを止めることが盛んに言われる。しかし、ガンの発生の最大要因は「高齢」であり、また排気ガス、ストレス、化学調味料、紫外線などガンを誘発する材料は日常生活の中にいくらでもある。長生きするという条件下ではガンはほぼ全員が避けることはできない。

     もちろん、ガンといい付き合い方をすることはできる。早期に発見し除去する。モルヒネを打ってガンの激痛をやわらげる。意味がなく金だけが無駄にかかる延命治療をやめ、限られた余命をどう生きるかの死生観を育てるなど。

  •  私の家系も家内の家系も幸いにしてガンの少ない家系ですがそんなのんびりしたことを言ってられないのがガン治療の「今」なのだ、ということがわかりました。
     まずは、「抗がん剤は効かない」。なぜならがんの成長を抑えるとか阻害するというのは間違いなく正常な細胞も傷つけるから。
     がんは遺伝子の異常で起こる、というのはほぼ間違いなさそうですが、同じ遺伝子情報を持っていてもがんになる人とならない人がいる。
     …調べて行くと、同じ乳がんでも原因となる遺伝子情報の異常は、がん患者一人一人ですべて違う、と…
     そしてそもそも論から入ると、「がんとは何か」も「わからない」。
     この20年ほどのがん研究はがんを追い詰めるどころか「却ってがんが何かわからなくなった」というのが正直なところ。
     著者の立花隆さんは、徹底した取材をもとにしたドキュメンタリーを得意にしています。ここではいちいちあげませんが、いろいろな分野について精通しています。
     そしてご自身もぼうこうがんの手術を経験しています。
     その立花隆をして、
     「私が生きている間にがんが制圧されることはありえない」と書かせます。
     生命とは、生きるとは、ということとうらはらの位置にありますが、がんとは何か?今のところ、「わからない」のだそうです。
     
     

  • 1

  • そもそも「がん」というのはどのような存在なのかを知るうえで非常に有益な1冊。NHKスペシャルを見ていることが前提で書かれていると「まえがき」で触れられていたが、本書だけでも十分、勉強になった。
    がんについて、最前線の研究者でも、まだ全然わかっていないということが衝撃だった。がんがいかに多様性をもったものであり、奥深いものなのかを感じた。
    「がんばるつもりがない」という著者のがんに向き合う姿勢にも共感した。

  • 自らが癌に侵されながら、その病を知るために世界的な取材を繰り広げるとは、さすが「知の巨人」である。
    DVDもみたが、「がん」という謎の病の中枢に迫る内容はすごいが、「癌」という巨峰はまだまだ高いようであり、頂上はまだ遥かの思いを持った。
    人類はまだまだやり遂げるべきことがあると言うことがよくわかる本である。

  • 「がんとはいったい何なのですか?」


    自身の膀胱がん手術の後、がんの権威をたずね歩き、2009年12月に「人類はがんを克服できるのか①②③」を制作、放送。がんは自分の外にいる敵ではない。自分の中にいる敵だ。あなたのがんはあなたそのものである。(中略)がんをやっつけることに熱中しすぎると、実は自分をやっつけることになりかねない。そこにがん治療の大きなパラドックスがある。

  • 多細胞からできている生物にとって必読の書です。
    がんになることは生きていく上ではある意味さけては通れないことがわかった。

    QOLを下げてまで抗癌剤をうって延命しても意味ないというのは立花隆氏と意見は同じですね。

    立花氏はこの書を編集しながら自身のがんに対する心構えも整理されていったのではないだろうか?
    大変勉強になりました。

  • 義理の母ががんで余命を告げられ、何冊かがんと死についての本を読みあさり、かなり色々読んでたどり着いた。

    立花さん自身が膀胱がんであり、ほぼ再発すること、再発すればほぼ余命宣告になること、手術までの状況を淡々としたいつもの文体で綴っていてスゴイと思った。ただし、それにはかつて結婚していた人が余命宣告され、医師に食ってかかり、立ち会いを求められてなだめたという経緯があってこそ、とも思えそうだ。そういう意味では、元奥さんに関するドラマも立花さんががんに向き合う要素を作ったとも言えるのではないか。

    番組も見ていたが、がんという病気が克服されてしまったら次に心臓が脳が、という話になるので、それはそれで死ぬことはやはり大変な事だ。
    自分も高い確立でがんに罹患するのではないかと思うけれど(長生きしても、それはそれで罹患する率が高くなる)、実際罹患した人の言葉とそれを思いやっても「所詮他人ごと」から抜けられない人とでは異なってくるだろう。立花さんの自身のドキュメンタリーは意味が大きい。

    また、一般報道されているがん「克服」という言い方はやはり誤解を多く招いていると改めて思った。

    個人的な話では、義母は宣告を受けた時点で手術不可、放射線治療も不可、進行の早いタイプのもので、余命宣告どおりの半年余で逝ってしまった。
    しかし、あれこれと非医療的なものに縋る金銭的、時間的余裕もなく、抗癌剤の副作用はあったものの一時期普通に歩けるまでに持ち直し(発覚当初は脱力感が強く、起き上がることも難しかった)、親しい人に別れを告げて家族に囲まれて自宅で最期の時間を持てたのは、よかったと思っている。

  • がんと向き合う気になった

  • がんに関してはあまりにもわからないことが多いらしいのでこの本の内容より確からしいものを紹介。
    通常の細胞は分裂して増殖するが一定以上増えすぎない様に遺伝子にプログラムされている。細胞分裂により遺伝子はコピーされるが徐々にコピーミスが増えると増殖が止まらなくなり、またそれ以外にもウイルスや放射線、化学物質など色々な原因で遺伝子の損傷ががんの原因となる。
    がんの遺伝子と正常遺伝子がどう違うかの研究は始まったばかりだがどれくらいの遺伝子が変化すればがんになるかは個人差が大きく、また健康な人でも細胞のがん化は普通に起こり一方で免疫によってがん化された細胞は退治されて行く。治療に関しても個人差が大きいため基礎的な免疫力を高めるのと明らかな発がんリスクを避けるというのが無難そうな選択で、例えば乳酸菌は人体最大の免役器官である胃腸の細菌叢を整えるので東大の泌尿器科でも希望する人には取り入れているそうだ。理屈抜きにデーター優先らしい。
    がんが進行すると大きくなりある器官から浸潤して違う器官に移ったり、血液やリンパ液を通じてがん細胞が違う場所に転移する。検診で早期発見して手術で治療するのは進行を止めるためだが、微小転移は発見が難しく再発の可能性は残る。完治ではなく数年から数十年症状を抑えればいいと言うのが一つの考え方だ。
    抗がん剤については効くものも有るが、基本的には新陳代謝を抑えることでがんの増殖を止めるため、胃腸や毛根など細胞分裂が活発な部位の正常細胞にも副作用が出やすい。
    長生きをすればいずれはがんが発症するのはどうやら自然なことなので、後はどう上手く折り合うか遺伝子治療が進むのを期待するとしよう。
    ちなみに後半は立花氏が自らの膀胱がん発見から下半身麻酔による手術の様子をドキュメンタリーとして描いており、さらには立教大学の講義の内容に使ったそうだ。さすがに知の巨人は只者じゃない。

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著者プロフィール

評論家、ジャーナリスト、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授

「2012年 『「こころ」とのつきあい方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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