戦時下の球児たち 昭和十七年の夏 幻の甲子園

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163727806

作品紹介・あらすじ

昭和十七年六月五日に始まったミッドウェー海戦大敗直後の六月二十四日、文部省が前年中止になっていた甲子園大会の開催を知らせる通達を出した。だが、大会の主催者は大阪朝日新聞社ではなく文部省だった。「一片の通牒のほか何等委曲を盡すことなかりし当局の態度に対しては、遺憾を禁ぜざるものがある」(「朝日新聞」七月十二日付社告)。今も朝日新聞社の記録では「昭和十六年〜二十年戦争で中止」となっている甲子園大会が、なぜ昭和十七年夏だけ文部省によって開催されたのか?戦意高揚のため特異な戦時ルールが適用され、「選手」としてではなく「選士」として出場し選手交代も認められず、大会後は「兵士」として戦場へ向かった多くの球児たちの数奇な運命を辿る傑作ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 戦時下であっても、いや戦時下だからこそ、ますます純粋に野球を愛する人たち。当時の過酷な試合に驚愕し、戦争の理不尽さに泣いた。

  • 夏休みに読もうと思った本。真珠湾攻撃の翌年。まさに戦時中。記録では中止とされている全国高等学校野球選手権大会ではない夏の甲子園。主催は文部省。目的は「戦意高揚」。その大会の選手や関係者の話、スコアブックや新聞、雑誌、戦争の記録から大会およびそのその選手のその後を再現したノンフィクション。リアル。「どうせ戦争でいずれ死ぬんですから。」というある選手の言葉が心に突き刺さった。そして、少なくない選手やその家族、恋人がその通りの運命をたどる。爽やかさは微塵も感じない。感じるのは悲壮感、苦しさ、懸命さ。改めて何も考えずに野球を楽しめる今の平和を思う。

  • 戦争中なのにスポーツをやっている場合か、しかも敵国のスポーツなんてと揶揄さるた。そんな中甲子園が中止。主催者が違う大会が行われた。公式記録としては残らない幻の甲子園。

  •  読んで本当に良かったです。
     テーマを一つに絞る事によって、大括りでは捉える事が出来なかった細かい事柄を知る事が出来ますね。本当に、戦争の事についても当時の野球の事についても、知らない事だらけで……。
     試合中に召集令状が届いたので自宅に至急帰るようにという場内アナウンスが流れたり、監督が招集されてしまった為、監督抜きで出場した学校があったりとか……胸が詰まりました。
     私は野球には詳しくないのですが、一試合一試合の模様が詳しく書かれており、私は戦争についての著作物として購入したのですが、スポーツの著作としてもとても興味深い本ではないかと思いました。
     この本を読む前にNHKのドキュメンタリーも観たのですが、この本でインタビューされている方々のお姿を実際に拝見する事が出来ていたので、本を読んだ時にその方の声で聞こえているような気がしました。録画しなかったのが悔やまれます……再放送して欲しいなぁ。

  • 今年の高校野球は
    大阪桐蔭高校が春夏連覇を成し遂げて幕を閉じました。
    春夏連覇ってスゴイ。
    この偉業を成し遂げたのは、史上7校目といいます。
    それは、戦後に高校野球が復活してからの記録なのでしょう。
    戦前にも日本人は野球が好きで「ベースボール」を楽しんでいます。
    この本は、戦前の球児たちの戦いを記録したものでした。

    戦争があっても平和な時と同じように野球を愛した球児たち。高校野球史の正記録には残らないけれど、戦時中の昭和17年にも高校野球大会が行われました。この本は、その試合結果と活躍選手のその後を取材したノンフィクションです。内容紹介にも書かれていますが、戦意高揚のため特異な例として大会が認められたようです。「選手」ではなく「戦士」として。そして、大会後は「戦士」たちは「兵士」となって戦場へ向かったのです。

    野球をやりたくても敵国の遊びだと言われ、禁止の状況にまで追い詰められたりもしました。敵国語も使用禁止。「ストライク」を「よし」、「アウト」を「ダメ」などと、スポーツ用語を日本語におきかえ、球児たちはそれでも野球を続けていました。

    戦前も戦後も白球を追う球児たちの姿に変わりはありません。
    一途に白球に打ち込む姿は
    時代が変わってもあい変わらず多くの人の感動を呼びます。
    のびのびと隠れることなく野球ができる時代ですから、
    現役の選手たちは、野球ができる幸せを噛みしめてプレイして欲しい。
    それが「兵士」となって帰らぬ人となった戦前の球児たちへの
    最高の華向けになると思います。

  • 昭和十六年朝日新聞主催の夏の甲子園は中止となった。
    以後昭和二十一年まで開催されることはなかった。
    現在の甲子園史ではそう記される。

    しかし、昭和十七年突如甲子園が復活する。
    主催は朝日新聞ではなく、文部省。
    戦時下の中復活した甲子園。
    国にどのような意図があったかはイマイチはっきりとしない。
    意図がどうあれ球児達にとっては甲子園は甲子園だった。

    かつての戦時下の球児達は如何にして、甲子園にたどり着き、如何なるその後を歩んだのか。

    好きなことができるこの今の世はきっと幸せなのだ。

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著者プロフィール

早坂隆
1973年、愛知県生まれ。ノンフィクション作家。『世界の日本人ジョーク集』(中公新書ラクレ)をはじめとするジョーク集シリーズは、累計100万部を突破。『昭和十七年の夏 幻の甲子園』(文藝春秋)でミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。他の著作に『指揮官の決断 満州とアッツの将軍 樋口季一郎』(文春新書)等。主なテレビ出演に「世界一受けたい授業」「王様のブランチ」「深層NEWS」等。Twitterアカウント:@dig_nonfiction

「2023年 『世界のマネージョーク集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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