ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

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制作 : 梨木 香歩 
  • 文藝春秋 (2010年11月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163733005

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ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯の感想・レビュー・書評

  • 昔からいつも身近にいて、いろいろな昔話にも登場してくるすずめですが、どこで、どのように暮らしているのか、何万羽もの雀がどのように寿命をむかえているのか、実は不思議がいっぱいです。

    本書は著者のクレア・キップスが生まれたばかりで巣から出てしまった小雀クラレンスと、第2次大戦最中のロンドンで共に過ごした12年間の記録です。
    客観的な記録ではあるが、動物行動生理学としての視点ではなく、自分の子供を慈しみ育てるような愛情と、対等なパートナーとして互いに理解し信頼している姿がすばらしい。

    コンラート・ローレンツの説く”刷り込み”と理解しても良いのかもしれませんが、著作のなかで示されたクラレンスの遊び、さえずりの能力、作者とのコミュニケーションは驚くばかりです。雀のクラレンスの”個性”が表れています。

    12年間の日々の中、幼鳥のクラレンスは大人になり、やがて年老いていきます。若い日の堂々とした”小さな鷲”のような誇り高き存在は小さくなり、自由にならない体を知恵で乗り越えていく姿に、作者は知性を感じています。皆に愛されたクラレンスはやがて静かに目を閉じていきます。

    小さな墓碑に刻まれたことば
    CLARENCE: THE FAMOUS AND BELOVED SPARROW

    訳者、梨木果歩の文章も静かで、とてもきれいです。
    原題の"Sold for a Fatering" は Fathingが1/4ペニーですが、”とても小さく愛おしいもの”という想いでしょうか。


    参考:
    ・すずめ、つかずはなれず2千年 三上修
    ・ソロモンの指輪 コンラート・ローレンツ

  • ・「英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリー」と帯にあるが、これはあまりにこの作品の価値をステレオタイプな分類に押込め、貶めていると思う。この作品は、よくある「動物系のお涙頂戴話」とは一線も二線も画している、珠玉の動物観察記だ。
    ・原題は“Sold for a Farthing” このタイトルで、スズメの話とくれば、新約聖書に通じている英米圏の人々はイッパツでピンとくる。「“一銭程度で売られて”いる一羽の雀さえ顧みていてくださる神は、雀以上の存在である人間に、どうしてそれ以上よくして下さらないわけがあろうか」というマタイによる福音書のキリストのたとえ話からとられているタイトル。
    ・でも、悲しいかな、日本人には「?」となってしまう。だから、月並みなタイトルにしたのだろうが、残念でならない。このタイトルこそが、この本の内容を極めて簡潔に凝縮しているというのに。
    ・そのためか、熱帯雨林のレビューも、ヒューマニズムな見地から見て「感動した」との意見が多数であって、それに反対するわけではないが、この作品に流れている思想は、ナチュラリストのそれである同時に、神の創造物として人間と動物を見る、信仰者のそれ(筆者は英国バプテスト教会の牧師の娘でもある)であることを見逃してしまうなら、この本の魅力の半分も理解したことにならないだろう。そうでなければ、筆者が「無知で取るに足りない一羽のスズメが、(無神論・唯物論の教師としての)カール・マルクスよりも偉大な教師」であると言っている文脈を到底理解できまい。
    ・ワーズワース、キップリングなどの引用、アベラールとエロイーズの逸話…随所に散りばめられた筆者の教養(あくまでも、当時の、だが)にも唸らされる。深い教養と感受性と信仰に裏打ちされた、優れた観察録。従って、文学作品にもなっている。梨木香歩が訳したいと思うのも頷ける。そして、訳も、素晴らしい。
    ・時間を置いて、また再読したい。ブラヴォ!

  • 雀が芸をしたというのも驚くことなのだろうけど、クラレンスが人間のように育ったことが私には驚きだ。環境によっては、雀だって人間のような心が持てるということだろうか。
    環境って大事だなってつくづく思う。そして、キップス夫人の愛の深さに感動する。
    これからは生きとし生けるものすべての物の見方が少し変わるのではないかと思う。

  • 淡々と雀との生活を描いています。
    静かで、柔らかくて、とても温かいです。

    文章に品があります、品があるから
    深々としています。

    その静けさから、私たちはこのストーリーの音を
    聴くことができるような気がするのです。

    鳥が好きだから、動物が好きだから
    この本を読む、というよりは

    本を読むことが好きな人に、読んで欲しい作品です。

  • 人とスズメの友情の物語。

    ある日自宅の玄関前で瀕死の状態のスズメを見つけたクレア。
    そこから12年7週4日の2人の共同生活が始まる。
    クレアにとってスズメのクラレンスはペットでは断じてない。
    クレアの赤ちゃんであり相棒であり恋人であり、かけがえのない友である。
    器用なクラレンスは時にエンターテイナー、時に舞台歌手として鳥とは思えない芸を披露して観客を楽しませる。
    クレアのビアノに合わせて歌うクラレンスの可愛い歌声が聴こえてきそうだ。

    好奇心旺盛でヘアピンが大好きな愛しいクラレンス。
    2人の濃密な年月は永遠にクレアの中に生き続ける。

    鳥が大好きな梨木香歩さんの翻訳からもクレアとクラレンスへの温かな愛情が伝わってきた。

  • 生まれたばかりのスズメの雛クラレンス。おそらくその持って生まれた障害のために、野生では生き抜くことができないとみなされ(たかどうかは不明だが、その障害ゆえに)親鳥の庇護を受けられなかった。
    それをたまたま拾った著者が、クラレンスの、野鳥としてはおそらくありえないほど長寿である(らしい)12年近い生涯を見届け記録した観察記。

    著者がこの小さな生き物を慈しむさまは非常に叙情的であり、初めのうちは戦火を避けながらの日々であったことも忘れさせるほど。
    最期は老衰により命を閉じたわけだが、解説によれば、それは野鳥はもちろんのこと、飼い鳥でさえほとんど奇跡に近いことらしい。
    それほど、著者がクラレンスに心を砕き愛情を注いで世話をし続けたという証であろうし、また同時にクラレンスも著者の愛情に応えてみせたという証拠でもあろう。

    読みながらローレンツ博士を思い出し、また今、竹田津実氏の本を読んでいることもあり、動物学者(著者は違うけれども)は学者である以前に、動物の生態を明らかにする云々というよりむしろ、ただひたすらに動物が好きで好きでたまらないから眺め、記録し、そして気づく、それが結果として研究になるということなのかもな~としみじみ感じた本書であった。

    蛇足ですが…図書館で借りた本書は濃紺一色の装丁。表紙写真にあるような酒井駒子の装丁画はなく、おそらく表紙カバーを取り外した状態でフィルムを貼ったと思われる。
    う~ん、残念なんだけど~。酒井駒子の表紙絵残しておいてほしかった~。

  • スズメはかわいい、スズメは。

    ただ、これって鳥を飼っている人ならだれでも思うことだけど、決してこのクラレンスくんが特別なわけではないんだよね。
    雄の鳥の多くは美しい声色で歌を歌うし、トランプを引きずり回したりピンを巣に運んだりする。
    どの鳥も賢く、気高く、愛らしい。
    「うちの坊やだけがどこか特別な生き物だ」と思いたくなってしまう気持ちは分からなくないけど、特別発言の頻度があまりに多い。
    もういいよ、お腹いっぱいだよおばあちゃん。

    「スズメの見た世界」や「スズメによって励まされた人々の姿」をテーマにしていると聞いて読みはじめたんだけど、
    ひたすらにおばあさんのスズメ自慢で終わってしまった印象でした。
    もちろん、おばあさんの生活がスズメによって大きく彩られたということは伝わってきたけど。

    「うちの坊やは特別」関係で一つ驚いたのは、クラレンスが生まれつき持っていた羽の障害がだんだんよくなっていったことに対しておばあさんが残念がっていたこと。
    羽の障害が彼を他のスズメとは違う、気高く特別な存在に見せていたのに残念だ、といった記載があったこと。

    よいか悪いかは別にして、おばあさんは自分が人とつながるための手段としてスズメを利用していた面があると思う。
    他では見れない特別なスズメ。
    美しい歌をさえずり、トランプで芸を見せる羽の曲がった特別なスズメ。私だけになついている特別な特別な生き物。
    スズメがユニークであればあるほど、人々は興味を抱き、結果としておばあさんの周りには人が集まる。
    孤独なおばあさんが注目を集め人とつながるために。坊やは外のスズメが歌わぬ歌を歌い、トランプを運び、羽が曲がっている必要があったのだ。

    …なんて、はじめはものすごいゆがんだ感想を持ったけど
    読み返してみると、カナリアの抱卵や外の鳥との交流からスズメが受けた影響など。この人でしか書けないおもしろい話もたくさんあって、普通に心温まった…

    なんていうか、こんな所で物事の細部を見ずに断定的な評価を下してしまう自分のヤバさを感じてしまった。一面だけで人やものを判断するのは危険です、気をつけよお…
    (でも、おばあさんスズメ利用説も一理あるはず…はず…)

  • ある小さなスズメの生涯のお話
    死にそうなスズメが、ある婦人に拾われた
    そして、みんなに、希望を与えるスズメの感動作
    ぜひぜひみなさんさん、よんでください

  • 実家で犬を飼っている。
    年老いた犬を。
    母が手紙に書いて寄越した。
    「老いていく道筋を彼女に教えてもらっている気がします」と。

    彼女を我が家に迎えたのは、彼女がまだ生まれたばかりで、私と姉が小学生の頃だった。
    彼女はケージのなかで、彼女の姉たちに踏みつけられるようにしていた。
    大人しい仔だった。
    まだ彼女は子どもで、もちろん私も姉も子どもだった。
    それから彼女はあっというまに大人になり、子を産み母となり、子を手放し、そして、年老いた。
    私はまだ大学を出たばかりで、結婚すらしていないのに。

    愛しい。
    でも帰る度に衰えていく彼女を見るのが辛い。
    ごめんなさい、感想ですらないね、これ。
    この本を読んでいるとき、小さくて立派な雀に向けられた著者の愛情深い理知的な目線を通して、私は彼女を見ていた。
    私の愛しい大切なおともだち。
    姉であり、妹である、私の家族。

    著者が彼を送り出したとき、著者の空想は確信になっただろうか。
    きっとそうであったと信じたい。
    彼に勇気を奮い起こさせ、立たそうとしたなにか。
    最後のときを彼に告げ、著者を呼ばわせたなにか。
    どんなスズメも例外でないように、私の愛しいおともだちも例外でありませんように。

    昔読んだ絵本で、飼い犬をなくした男の子が言ってた。
    「皆泣いてた。でも僕は泣かなかった。なぜってちゃんと毎晩いってたから。  愛してるよって。」
    その犬の名前も絵本の題名も忘れてしまった。
    でもそれを読んでから出来るだけ彼女には伝えるようにしてた。
    私が彼女を愛してるってことを。

    長生きしてくれますように。
    健やかに、穏やかに。
    私がどれだけ愛しているか、感謝しているか、伝える時間がありますように。
    もう彼女の耳は聞こえてないけれど。
    帰りたい。

  • 20世紀前半の英国。夫を亡くし、1人で生きている音楽家の女性が1羽のスズメを拾う。足と羽に障碍があったために、巣から落とされたと思われる雄の赤ちゃんスズメ。女性と、「クラレンス」と名付けられたスズメとの12年にわたる交流の記録。
    戦時中に人々を慰問するための芸を覚えたり、スズメとは思えないほどの歌の才能を発揮したりした若い頃の姿にもビックリしたけれど、老いて病気をしてからの姿にぐっときた。小さな生き物がみせる、信じられない程の知性と誇り高い行動が感動的だった。
    クレア・キップスとクラレンスの距離感もとてもよく、彼らがいかにお互いを大切に思い合っていたかが伝わってきた。心がじんわりと温かくなるような本だった。

  • スズメってすごい、生き物ってすごい。感動した

  • 本を読む人、小さきものを愛する人全てに勧めたい。内容もさることながら、訳も素晴らしい。

  • ■書名

    書名:ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
    著者:クレア・キップス
    翻訳:梨木 香歩

    ■概要

    第二次世界大戦中のロンドン郊外ブロムリーで、足と翼に障碍を持
    つ生まれたばかりの小スズメがキップス夫人に拾われる場面からス
    トーリーが始まる。夫人のあふれんばかりの愛情に包まれて育った
    スズメのクラレンスはすくすくと育ち、爆撃機の襲来に怯える人々
    の希望の灯火となっていく――。
    キップス夫人がクラレンスと共に生き最期をみとるまでの12年間を
    綴った実話。

    ■感想

    原書が発行されたのは、かなり前のようです。
    ヨーロッパ、アメリカで空前のベストセラーとなったみたい
    です。

    心が暖かくなる物語です、誰かのためって凄い感動を生み出す
    んだな~というのを再確認しました。
    著者のスズメに対する無償の愛と、スズメの著者に対する愛情
    に感動します。
    この著者だから、スズメも一生懸命生きようとしたのだと
    感じました。

    また、スズメって、こんなに頭が良くて、愛情があって、人間の
    ように歳をとるんだな~と感じさせてくれます。
    (勿論、クレランスが特殊な個体だった可能性も当然あります。)

    唯一惜しむらくは、文体。
    無意味にインテリのようにしようとしていると感じました。
    原書からそうなのか、翻訳だけの問題なのかはわかりませんが、
    十分内容が良いのだから、変に文章に凝るより、もっと素直に
    著者のスズメへの愛情が表現されている文章の方が良かったと
    思いました。
    (事実と感想を1ページの中に混ぜて書いているから、こうなる
    のはしょうがないのかな~とも思いましたけどね。)

    これに音声と動画があったら、全世界を感動させることが
    出来たと思いますね。

    泣ける本、気持ちが温かくなる本としては、間違いなくオススメ
    です。

  • クラレンスかわいい。

    こんなすばらしいパートナーを持って作者も幸せだろうな。

  • 表紙の可愛いスズメに惹かれて購入。
    写真を見て何か違うと思っていたら、日本のスズメとはまた違う、イエスズメという種類だと巻末で知りました。
    障碍を持って生まれ、自然淘汰されようとしたスズメのクレランスを、キップス婦人が助けて育てた12年と7ヶ月の記録です。
    写真が少なく、音声があるわけでもないので、意地悪なようですが、ペットに対する親ばかなのではないかと感じてしまいました。

  • 題名の通り。
    12年もの長きを生きたズズメの話。
    ただちょっと、他の鳥とは違う知性をもっていたよう。

  • 生まれつきハンデを持ったスズメを夫人が育てた記録。素敵な本。

  • 本当に素敵なことは誇張しなくても伝わるんだなと、改めて思った

  • 小鳥好きにはたまらない1冊。

  • 戦時下であること、障害を持ったこと、親鳥から見捨てられたこと、筆者の愛情を一身に受けたことなどの、スズメのクラレンスを取り巻く環境が、小さなスズメの才能を開花させたのではないだろうかと思った。
    クラレンスはハンディキャップを負いながらも、生を謳歌した。
    筆者との幸福に包まれた生活が、単なる飼い主とペットという関係以上のものを生み出したのだと思う。
    クラレンスの体温が伝わってくるような物語。

  • 最後にほろっと涙……。

  • 小さなスズメの小さな物語には、大きな幸福が満ちている。ところで、訳者あとがきを読み、梨木香歩さんの小説が読んでみたくなった。

  • みなしごのスズメとの10年以上のつきあいを淡々と。スズメがそんなに長く生きるとは知らなかったし、スズメとこんなに深い関係を作れるのだとも知らなかった。動物との付き合いはたぶんに人間側の一方的な思い込みなのだろうとは思いながらも、いきもの同士の間に流れるものについて、ふと考えた一冊。

  • ペット、愛玩動物としての枠を超えている。
    著者がスズメをそう扱わなかったから、というのも大変大きいが。
    ピアノをきかせることで歌を覚え、自分で練習し、また芸を覚え、さらに老いるにあたっては、自分は苦しくとも、相手の人間が自分のためを思い施すことを受け入れる、そんなことがスズメに考えられるのか、本当に不思議です。
    生きるとはどういういことか。このような生物の観察に、我々は深く考えさせられます。

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ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯の作品紹介

第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく-。ヨーロッパやアメリカで空前の大ベストセラーとなった英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリーを、梨木香歩が完訳。

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