ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163733005

感想・レビュー・書評

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  • スズメはかわいい、スズメは。

    ただ、これって鳥を飼っている人ならだれでも思うことだけど、決してこのクラレンスくんが特別なわけではないんだよね。
    雄の鳥の多くは美しい声色で歌を歌うし、トランプを引きずり回したりピンを巣に運んだりする。
    どの鳥も賢く、気高く、愛らしい。
    「うちの坊やだけがどこか特別な生き物だ」と思いたくなってしまう気持ちは分からなくないけど、特別発言の頻度があまりに多い。
    もういいよ、お腹いっぱいだよおばあちゃん。

    「スズメの見た世界」や「スズメによって励まされた人々の姿」をテーマにしていると聞いて読みはじめたんだけど、
    ひたすらにおばあさんのスズメ自慢で終わってしまった印象でした。
    もちろん、おばあさんの生活がスズメによって大きく彩られたということは伝わってきたけど。

    「うちの坊やは特別」関係で一つ驚いたのは、クラレンスが生まれつき持っていた羽の障害がだんだんよくなっていったことに対しておばあさんが残念がっていたこと。
    羽の障害が彼を他のスズメとは違う、気高く特別な存在に見せていたのに残念だ、といった記載があったこと。

    よいか悪いかは別にして、おばあさんは自分が人とつながるための手段としてスズメを利用していた面があると思う。
    他では見れない特別なスズメ。
    美しい歌をさえずり、トランプで芸を見せる羽の曲がった特別なスズメ。私だけになついている特別な特別な生き物。
    スズメがユニークであればあるほど、人々は興味を抱き、結果としておばあさんの周りには人が集まる。
    孤独なおばあさんが注目を集め人とつながるために。坊やは外のスズメが歌わぬ歌を歌い、トランプを運び、羽が曲がっている必要があったのだ。

    …なんて、はじめはものすごいゆがんだ感想を持ったけど
    読み返してみると、カナリアの抱卵や外の鳥との交流からスズメが受けた影響など。この人でしか書けないおもしろい話もたくさんあって、普通に心温まった…

    なんていうか、こんな所で物事の細部を見ずに断定的な評価を下してしまう自分のヤバさを感じてしまった。一面だけで人やものを判断するのは危険です、気をつけよお…
    (でも、おばあさんスズメ利用説も一理あるはず…はず…)

  • ある小さなスズメの生涯のお話
    死にそうなスズメが、ある婦人に拾われた
    そして、みんなに、希望を与えるスズメの感動作
    ぜひぜひみなさんさん、よんでください

  • 実家で犬を飼っている。
    年老いた犬を。
    母が手紙に書いて寄越した。
    「老いていく道筋を彼女に教えてもらっている気がします」と。

    彼女を我が家に迎えたのは、彼女がまだ生まれたばかりで、私と姉が小学生の頃だった。
    彼女はケージのなかで、彼女の姉たちに踏みつけられるようにしていた。
    大人しい仔だった。
    まだ彼女は子どもで、もちろん私も姉も子どもだった。
    それから彼女はあっというまに大人になり、子を産み母となり、子を手放し、そして、年老いた。
    私はまだ大学を出たばかりで、結婚すらしていないのに。

    愛しい。
    でも帰る度に衰えていく彼女を見るのが辛い。
    ごめんなさい、感想ですらないね、これ。
    この本を読んでいるとき、小さくて立派な雀に向けられた著者の愛情深い理知的な目線を通して、私は彼女を見ていた。
    私の愛しい大切なおともだち。
    姉であり、妹である、私の家族。

    著者が彼を送り出したとき、著者の空想は確信になっただろうか。
    きっとそうであったと信じたい。
    彼に勇気を奮い起こさせ、立たそうとしたなにか。
    最後のときを彼に告げ、著者を呼ばわせたなにか。
    どんなスズメも例外でないように、私の愛しいおともだちも例外でありませんように。

    昔読んだ絵本で、飼い犬をなくした男の子が言ってた。
    「皆泣いてた。でも僕は泣かなかった。なぜってちゃんと毎晩いってたから。  愛してるよって。」
    その犬の名前も絵本の題名も忘れてしまった。
    でもそれを読んでから出来るだけ彼女には伝えるようにしてた。
    私が彼女を愛してるってことを。

    長生きしてくれますように。
    健やかに、穏やかに。
    私がどれだけ愛しているか、感謝しているか、伝える時間がありますように。
    もう彼女の耳は聞こえてないけれど。
    帰りたい。

  • 20世紀前半の英国。夫を亡くし、1人で生きている音楽家の女性が1羽のスズメを拾う。足と羽に障碍があったために、巣から落とされたと思われる雄の赤ちゃんスズメ。女性と、「クラレンス」と名付けられたスズメとの12年にわたる交流の記録。
    戦時中に人々を慰問するための芸を覚えたり、スズメとは思えないほどの歌の才能を発揮したりした若い頃の姿にもビックリしたけれど、老いて病気をしてからの姿にぐっときた。小さな生き物がみせる、信じられない程の知性と誇り高い行動が感動的だった。
    クレア・キップスとクラレンスの距離感もとてもよく、彼らがいかにお互いを大切に思い合っていたかが伝わってきた。心がじんわりと温かくなるような本だった。

  • スズメってすごい、生き物ってすごい。感動した

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      感動しても★★なんだ、、、私は酒井駒子の絵に惹かれて購入予定(って言うか忘れてた)
      感動しても★★なんだ、、、私は酒井駒子の絵に惹かれて購入予定(って言うか忘れてた)
      2012/03/03
  • 本を読む人、小さきものを愛する人全てに勧めたい。内容もさることながら、訳も素晴らしい。

  • ■書名

    書名:ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
    著者:クレア・キップス
    翻訳:梨木 香歩

    ■概要

    第二次世界大戦中のロンドン郊外ブロムリーで、足と翼に障碍を持
    つ生まれたばかりの小スズメがキップス夫人に拾われる場面からス
    トーリーが始まる。夫人のあふれんばかりの愛情に包まれて育った
    スズメのクラレンスはすくすくと育ち、爆撃機の襲来に怯える人々
    の希望の灯火となっていく――。
    キップス夫人がクラレンスと共に生き最期をみとるまでの12年間を
    綴った実話。

    ■感想

    原書が発行されたのは、かなり前のようです。
    ヨーロッパ、アメリカで空前のベストセラーとなったみたい
    です。

    心が暖かくなる物語です、誰かのためって凄い感動を生み出す
    んだな~というのを再確認しました。
    著者のスズメに対する無償の愛と、スズメの著者に対する愛情
    に感動します。
    この著者だから、スズメも一生懸命生きようとしたのだと
    感じました。

    また、スズメって、こんなに頭が良くて、愛情があって、人間の
    ように歳をとるんだな~と感じさせてくれます。
    (勿論、クレランスが特殊な個体だった可能性も当然あります。)

    唯一惜しむらくは、文体。
    無意味にインテリのようにしようとしていると感じました。
    原書からそうなのか、翻訳だけの問題なのかはわかりませんが、
    十分内容が良いのだから、変に文章に凝るより、もっと素直に
    著者のスズメへの愛情が表現されている文章の方が良かったと
    思いました。
    (事実と感想を1ページの中に混ぜて書いているから、こうなる
    のはしょうがないのかな~とも思いましたけどね。)

    これに音声と動画があったら、全世界を感動させることが
    出来たと思いますね。

    泣ける本、気持ちが温かくなる本としては、間違いなくオススメ
    です。

  • まず本の美しさにほわぁ、と溜め息。
    酒井駒子さんの装画、濃い青色の表紙、そして淡いグリーンに花を散りばめた見返し。
    読み始める前にしばし本を愛でておりました。

    内容も大変興味深いです。
    著者に拾われた足と翼に欠陥を持つスズメ。
    この本は著者とクラレンスと名付けられたスズメの間に育まれた友情の物語であると共に、動物行動学的な見地からも大変貴重な記録なのです。

    クラレンスの"積極的に生きる"姿に思わず胸が熱くなります。
    動物が身体の内に秘める生きる力の偉大さを、1羽の小さなスズメに教えられました。

    著者はあくまで観察者としての立場で記録を綴っていますが、その文章から滲むあたたかみに、12年以上を連れ添ったパートナーへの愛情が感じられます。

  •  心の中がホッカホッカになってきました。 それ以上の言葉が見つかりません。

  • 第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく――。
    久しぶりにじんとくるノンフィクション読みました。そもそもあんまりお涙頂戴的なエッセイ等は好きじゃないのですが、主人公であるクラレンスは自然に前を向いて生きていこうと思える強さを見せてくれました。どんなときも決して諦めないことを、彼は自分の行動を通して人間に示してくれる。命って強いんだなと思わずにはいられない。だからこそ大切に育んで、大事にしなくちゃいけないなと思う。決してペット扱いをしてはならないけれど、自然に生きる者たちとこんな素敵な関係が築けるのは羨ましい。

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