ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163733005

感想・レビュー・書評

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  • 昔からいつも身近にいて、いろいろな昔話にも登場してくるすずめですが、どこで、どのように暮らしているのか、何万羽もの雀がどのように寿命をむかえているのか、実は不思議がいっぱいです。

    本書は著者のクレア・キップスが生まれたばかりで巣から出てしまった小雀クラレンスと、第2次大戦最中のロンドンで共に過ごした12年間の記録です。
    客観的な記録ではあるが、動物行動生理学としての視点ではなく、自分の子供を慈しみ育てるような愛情と、対等なパートナーとして互いに理解し信頼している姿がすばらしい。

    コンラート・ローレンツの説く”刷り込み”と理解しても良いのかもしれませんが、著作のなかで示されたクラレンスの遊び、さえずりの能力、作者とのコミュニケーションは驚くばかりです。雀のクラレンスの”個性”が表れています。

    12年間の日々の中、幼鳥のクラレンスは大人になり、やがて年老いていきます。若い日の堂々とした”小さな鷲”のような誇り高き存在は小さくなり、自由にならない体を知恵で乗り越えていく姿に、作者は知性を感じています。皆に愛されたクラレンスはやがて静かに目を閉じていきます。

    小さな墓碑に刻まれたことば
    CLARENCE: THE FAMOUS AND BELOVED SPARROW

    訳者、梨木果歩の文章も静かで、とてもきれいです。
    原題の"Sold for a Fatering" は Fathingが1/4ペニーですが、”とても小さく愛おしいもの”という想いでしょうか。


    参考:
    ・すずめ、つかずはなれず2千年 三上修
    ・ソロモンの指輪 コンラート・ローレンツ

    • nejidonさん
      8minaさん、こんにちは♪
      今年もよろしくお願いします。

      この本、数年前に友人から誕生日プレゼントにいただきました。
      あまりにも...
      8minaさん、こんにちは♪
      今年もよろしくお願いします。

      この本、数年前に友人から誕生日プレゼントにいただきました。
      あまりにも、あまりにも大事にしすぎて、いまだに読んでいません(笑)
      梨木さん大好き、小鳥大好きなのに、大切すぎて開けないのです。
      今年は読んでみようかと、レビューを読んで思いました。
      2014/01/07
    • 8minaさん
      nejidonさん
      こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
      コメントありがとうございます。いつも知らない絵本が沢山並んでいる本棚とコメ...
      nejidonさん
      こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
      コメントありがとうございます。いつも知らない絵本が沢山並んでいる本棚とコメント楽しみにしております。
      この本は私も本屋で迷っていたところ、レビューを見て買いに走った次第です。
      2014/01/09
  • 雀が芸をしたというのも驚くことなのだろうけど、クラレンスが人間のように育ったことが私には驚きだ。環境によっては、雀だって人間のような心が持てるということだろうか。
    環境って大事だなってつくづく思う。そして、キップス夫人の愛の深さに感動する。
    これからは生きとし生けるものすべての物の見方が少し変わるのではないかと思う。

  • 人とスズメの友情の物語。

    ある日自宅の玄関前で瀕死の状態のスズメを見つけたクレア。
    そこから12年7週4日の2人の共同生活が始まる。
    クレアにとってスズメのクラレンスはペットでは断じてない。
    クレアの赤ちゃんであり相棒であり恋人であり、かけがえのない友である。
    器用なクラレンスは時にエンターテイナー、時に舞台歌手として鳥とは思えない芸を披露して観客を楽しませる。
    クレアのビアノに合わせて歌うクラレンスの可愛い歌声が聴こえてきそうだ。

    好奇心旺盛でヘアピンが大好きな愛しいクラレンス。
    2人の濃密な年月は永遠にクレアの中に生き続ける。

    鳥が大好きな梨木香歩さんの翻訳からもクレアとクラレンスへの温かな愛情が伝わってきた。

    • nejidonさん
      はじめまして♪
      お気に入りを下さり、ありがとうございます!
      レビューを読ませていただき、私もこの本を読んだのに載せるのを忘れていたのを、...
      はじめまして♪
      お気に入りを下さり、ありがとうございます!
      レビューを読ませていただき、私もこの本を読んだのに載せるのを忘れていたのを、
      思い出しました。素敵な作品でしたよね。
      次々に色々な本に手を出してしまい、しばしばそういうことがあります・笑
      mofuさんの本棚は楽しそうですね。
      フォローさせていただきます。どうぞよろしく。
      2017/08/30
    • mofuさん
      nejidonさん、コメントといいねをありがとうございます!
      私もフォローさせて下さいね♪
      色々な本が本棚にあるので、私も楽しみです。
      ...
      nejidonさん、コメントといいねをありがとうございます!
      私もフォローさせて下さいね♪
      色々な本が本棚にあるので、私も楽しみです。
      どうぞよろしくお願いします(^ー^)
      2017/08/30
  • 初読

    装丁の良さに長らく気になってたこの本(スズメ好きだし)
    かなり良かった!

    戦時中のロンドン市民の生活って知らなかったな…
    と思いながらキップ夫人と雀のクラレンス。

    全くウェットにならない文章もとても良い。
    俳優として、歌手としてのクラレンス。
    卒中の後、ティースプーンのシャンパンで英気を養う雀。

    老いるという事が年々身近になってゆくが、
    それへの対処としても彼の姿勢は経緯を評したい。

    プレゼントしたい小鳥好きの友人の顔が何人か浮かぶ。

  • 生まれたばかりのスズメの雛クラレンス。おそらくその持って生まれた障害のために、野生では生き抜くことができないとみなされ(たかどうかは不明だが、その障害ゆえに)親鳥の庇護を受けられなかった。
    それをたまたま拾った著者が、クラレンスの、野鳥としてはおそらくありえないほど長寿である(らしい)12年近い生涯を見届け記録した観察記。

    著者がこの小さな生き物を慈しむさまは非常に叙情的であり、初めのうちは戦火を避けながらの日々であったことも忘れさせるほど。
    最期は老衰により命を閉じたわけだが、解説によれば、それは野鳥はもちろんのこと、飼い鳥でさえほとんど奇跡に近いことらしい。
    それほど、著者がクラレンスに心を砕き愛情を注いで世話をし続けたという証であろうし、また同時にクラレンスも著者の愛情に応えてみせたという証拠でもあろう。

    読みながらローレンツ博士を思い出し、また今、竹田津実氏の本を読んでいることもあり、動物学者(著者は違うけれども)は学者である以前に、動物の生態を明らかにする云々というよりむしろ、ただひたすらに動物が好きで好きでたまらないから眺め、記録し、そして気づく、それが結果として研究になるということなのかもな~としみじみ感じた本書であった。

    蛇足ですが…図書館で借りた本書は濃紺一色の装丁。表紙写真にあるような酒井駒子の装丁画はなく、おそらく表紙カバーを取り外した状態でフィルムを貼ったと思われる。
    う~ん、残念なんだけど~。酒井駒子の表紙絵残しておいてほしかった~。

    • 8minaさん
      bokemaruさん
      ブックオフにまだありました。
      青いハードカバーに金文字のSold for a Farthing 丁寧な装丁の本です...
      bokemaruさん
      ブックオフにまだありました。
      青いハードカバーに金文字のSold for a Farthing 丁寧な装丁の本ですね。
      2013/12/23
    • bokemaruさん
      8minaさん
      お、さっそく購入されたんですね!
      そうなんです!実は本自体の装丁も素敵で、ごくごくシンプルな装丁が逆に図書館で目をひいて...
      8minaさん
      お、さっそく購入されたんですね!
      そうなんです!実は本自体の装丁も素敵で、ごくごくシンプルな装丁が逆に図書館で目をひいて、思わず手に取ったという次第です。
      2013/12/23
    • 8minaさん
      bokemaruさん
      正月休みにゆっくりと読むことができました。梨木果歩さんの翻訳も静かで美しく、確かに自然を愛される他の作品とも同じ雰囲...
      bokemaruさん
      正月休みにゆっくりと読むことができました。梨木果歩さんの翻訳も静かで美しく、確かに自然を愛される他の作品とも同じ雰囲気ですね。
      2014/01/02
  • 感想
    ペットではなく友人。ともすると人間は万物の長であると思い込んでしまう。そんな奢りを捨てることで自然の美しさが目に入る。真摯に向き合う。

  • 買ってから数年積読してしまっていたが、犬を飼うようになった今こそ読むタイミングだったのだとしみじみ思った。
    生き物を飼えることの幸せを噛み締めることができた一冊。
    巻末の、今回は訳者でもある大好きな作家・梨木香歩さんのあとがきにとどめを刺された……

  •  兎に角スズメを愛でたくなる。
     そのまま読んでいたら、盛ってない??と思うような箇所も、前書きでその点に関して触れているので、結構すんなり入ってきた。
     著者の知識量がすごい。野鳥の生態一つとっても、知識豊富過ぎ。スズメを養っていく上で、必要に応じて身に付けたものもあるだろうけれど、何と言うか、昔の人ならではの知識とか、頭の良さのようなものを感じた。

  • 癒される。スズメ、かわいくて賢い!!

  • 生まれつきハンデを持ったスズメを夫人が育てた記録。素敵な本。

クレア・キップスの作品

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