ユニクロ帝国の光と影

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163737201

作品紹介・あらすじ

「努力します」「考えます」は許されない。総崩れの日本企業のなかで、唯一気を吐く柳井正率いるユニクロ。だが、これまで、独自調査によって柳井経営を精査したメディアはなかった。なぜ、執行役員が次々と辞めていくのか?なぜ、業績を回復させたにもかかわらず、玉塚元一は、追い出されたのか。なぜ、中国の協力工場について秘密にするのか?柳井正の父親による桎梏とは何なのか?誕生の地・宇部から、ユニクロ躍進の秘密を握る中国へ、そしてライバルZARAの心臓部スペインへ。グローバルな取材であぶりだす本当の柳井正とユニクロ。

感想・レビュー・書評

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  • ある種成功は収めていますが、それは全時代的なルール違反を前提とした中で成立している側面も否めません。
    経営者としてプラスとマイナスを感じられる本でした。

  • 横田増生の『ユニクロ帝国の光と影』

    ブラック企業と言われる所以w

    2014年読破

  • ひょんなことから、ユニクロというか、柳井正関連の本を2冊読んだ。
    「柳井正わがドラッカー経営論」と「ユニクロ帝国の光と影」。

    「~経営論」は、NHKの番組が元ネタで、柳井氏がドラッカーからいかに学んで、事業や活動をすすめているかを語ったもの。「~光と影」は、柳井氏の背景となる家庭環境から、中国の下請け工場までを詳細に取材し、ユニクロの実態を暴こうというもの。
    前者がユニクロのいい面を、氏が参考にしたというドラッカーに関連付けてまとめたものであり、後者は、大きな成功の裏にある負の側面について詳しく調査している。

    柳井氏がドラッカーから影響を受けたことは有名ではあるが、ドラッカーファンとしては、ユニクロがブラック企業呼ばわりされるのをよく耳にして、真相について関心を持っていた。
    この点について、「~光と影」の著者の努力で、おぼろげながら真相を垣間見ることができた。
    率直な感想として、柳井氏がドラッカーの考えを反映して多くの成果を生み出しいている反面、ドラッカーの考えとは相いれない弱みを多々もっていると感じた。

    この間のユニクロの成果については、フリースに代表されるヒット商品を世に送り出し、年々事業を大きくしていること。その背景として、SPAという製造小売り方式で、良品質で低価格の商品を可能にし、日本のアパレル業界にイノベーションを起こしたことなど、ことさら言うまでもない。
    また、事業だけではなく、CSRの面でも、商品のリユース・リサイクルで、難民キャンプに古着を送ったり、障がい者雇用を8%まで引き上げたり、「匠プロジェクト」で下請け業者の品質向上に貢献したりなどの数々の成果をあげている。
    これらの成果の部分は申し分がないのだが、光のあるところには影もあるのが世の常である。

    残念だと感じた点は三つ。
    一つ目は、既にグローバル企業として確固たる地位を築いているユニクロが、外部からの指摘がないと社内及びサプライチェーンのコンプライアンス違反を正せないという点。
    実は、「~光と影」は、もともと週刊文春に掲載した記事の取材がベースとなっており、本書でもふれられている「サービス残業の実態」などを巡って、ユニクロは名誉棄損で裁判を起こした。しかし、東京地裁は、記事が事実であると認めることが相当と、訴えを却下している。
    また、ちょうど今週、ユニクロの中国での下請け工場が、長時間労働や残業代の未払いで、人権団体に告発されたという報道があった。これは、既に4年前に本書で指摘されている事柄である。

    二つ目は、柳井氏のワンマンぶりである。
    2002年に、いったん若手に社長職を譲り、自身は会長に退くが、この際も実際決定権を握っていたのは柳井氏だったという。そして、わずか3年後には社長を辞任に追い込み、自身が会長兼社長に復帰する。
    ワンマン社長やカリスマ経営者の失敗事例は、ダイエーの中内功、ヤオハンの和田一夫、マクドナルドの藤田など枚挙にいとまがない。
    ドラッカーは、リーダーにカリスマ性は不要であり、百害あって一利もないことを説いている。
    万が一、カリスマ経営者に不測の事態が発生して、代替わりした後に経営が傾いたとしたら、その責任は先代が問われることとなるだろう。

    三つ目は、およそユニクロでのマネジメントが、人を大切にしているとは思えない点である。
    ユニクロがブラック企業呼ばわりされるのは、離職率の高さだ。
    2013年3月号の東洋経済に出たデータでも、ここ最近の入社3年目での離職率は、50%前後と高確率となっている。
    新入社員に限らず、上層部を含めて人が辞めていく組織について、ドラッカーの「知識労働者」の特性のように語っているところがあったが、それは違うと思う。
    また、休業している職員の88%がうつ病などの精神疾患であることが、部内でも問題になっているという。
    著者が受けた柳井氏の感想として、次のように書かれている。
    「インタビューなどに見られる柳井氏の言葉に、ユニクロに夢を抱いて入社したが、現場の激務の中で夢破れ、去って行った元社員に対する慰労や配慮の気持ちがほとんど感じられない。」

    「~経営論」で語っている、柳井氏がドラッカーに寄せる思いにうそはないと思う。しかし、多くの成果の影にドラッカーの考えとは相いれない過ちがあることを見ると、柳井氏のワンマン体制に問題の根幹があるのではないかと感じた。
    いくら能力があっても、ワンマン経営ではその人間の持つ能力の大きさまでしか、組織は大きくなることはできない。柳井氏=ユニクロであるところが、良くも悪くもユニクロの限界なのかもしれない。
    いずれにせよ、ユニクロ=柳井氏の、成功している面からも、失敗している面からも、われわれが学ぶことは多いと感じた。

  • 本のデザインやタイトルからはユニクロ批判本に思えるかもしれませんが内容は
    そうでもありません。

    ユニクロが世界的企業となった経緯、その中で生まれた歪を綿密な取材を
    通してあくまでも中立的な立場で明らかにしています。

    アパレル産業に限ったことではないと思いますが、先進国の豊かな暮らしは発展途上国の
    安い労働力に支えられていることが本書からよくわかります。

    ただ一点気になったのはユニクロモデルの対比として挙げられたZARAの例

    ZARAも50%の縫製は生産性が低いとして外部に委託していると書いてありましたが
    そこではユニクロと同じ低賃金で過酷な労働を強いられている人々がいるのではないかと感じました。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/55950

  • いい経営者と働きたい経営者は違う

  • フィールドワークの参考本にしようと思って読んだが難しいかもしれない。ユニクロという会社ではなく、柳井本人を取り上げているからである。ZARAとの比較や中国の製造工場の取材はしているが、それは柳井の経営を補うものとしている。個人のワンマン経営のフィールドワークとして考えるのであればいいかもしれない。

  • 2011年に上梓されたこの書籍。 物流業界に長く携わり、業界誌の編集長を務めた著者。フリーランスへ転向してから、物流の面から企業に切りこむスタンスで活動している。

    情報としては多少古めではあるが、ユニクロの創業、父親から受け継ぎユニクロをてこに大きくしていく過程、その中で全量買取を実現していく企業姿勢が描かれている。

    そしてその過程で国内外で繰り広げられる、ユニクロにまつわる様々な軋轢を周辺取材を通して明らかにしている。

    続編がすでに出ているので、早く読みたい。

  • 鉄の統率によって巨大企業となったユニクロ。それを支える不幸な人々がいた
    ★本の概要・感想
     骨太ジャーナリズムが感じられる本。21世紀で日本を代表するグローバル企業となっているユニクロ(ファーストリテイリング)。その偉業の背景には、辛い気持ちで働く人々がいた。柳井氏のマネジメント手法はかなり厳格で厳しい。コーチングよりは厳格なティーチング。誰よりも満足を知らず、完ぺきを追い求め、働き続ける。それを支える現場の店長やアジアの工場従業員。これって、良いことなんでしょうかねぇ?

    ★本の面白かった点、学びになった点
    *ハートあふれる人間開発の玉田氏 VS 鉄の統治の柳井氏
    ・社長就任後すぐに更迭されてしまった玉田氏だが、現場からの評判は良かったという。柳井氏は外面は良いが、社員には非常に厳しかった。一方で、玉田氏は人情にあふれ、社員に接する態度とメディアに出るときの態度は変わらなった
    ・何でも厳しくしかり、統治をする柳井氏を諌めることがおおかった。玉塚氏は「叱られた相手の頭の中が真っ白になるようなことは言わないでください」といった
    ・柳井氏から見ると玉塚氏のマネジメントではスピード感にかけた。大企業病に陥っているように見えたという

    *「ユニクロ」という一つのテーマで綿密な取材を仕上げた横田氏、すごい

    *トップがハードワークだと現場もそれを強制されそうで嫌だな
    ・ユニクロは非常に離職率が高く、店長の仕事量も非常に多かった
    →柳井氏自身が非常にハードワーカー。トップがモーレツ仕事人だと、現場もそれを強制されそうで嫌だな
    →柳井氏の経営観はアマゾンのベゾス氏に似ているように思える

    *「成功」は、そう呼ばれた瞬間から陳腐化していくものである
     柳井氏の名言。これほどの信念でビジネスに臨み続けるトップがいるから、ファーストリテイリングは巨大企業となった

    *原材料を商社を介さず直接発注することで、柔軟な生産に対応できる
     「原材料発注後の企画変更ではあったが、商社などを介さず、東レに直接発注していたことが功を奏して、ユニクロは厚手の原材料をフリースには使わず、ブランケットなどの他の商品を作ることに変えることができた」

    *結局柳井氏の後継者たる人物は2020年1月時点まで生まれなかった
     たびたび、後継者を探していることを発言していた柳井氏。本書でも、「もう柳井氏が満足する人物が現れることはないのではないか(柳井氏は満足できない)」と指摘している。本書発行から9年経った。今も柳井氏は会長兼社長という立場を退いていない。柳井氏は会長と社長という立場を兼ねるときになった際には「これは特例措置」と言ったのだが。

    *地元の成功者である父を振り切りユニクロを出店。それが巨大企業を創業する者の資質
     柳井氏の父は地元でもかなりの有力者。複数の事業を運営し、政治家ややくざとのパイプも厚い。そんな父を恐れて柳井氏はずっと生きてきた。その父の助言を初めて無視したのがユニクロの出店だ。この出店を成功させたことで、柳井氏は「地元」の成功者という枠をはるかに超えた。

    *ユニクロの服を作る人たちは不幸? 
     ユニクロの取引先への圧力は大きい。大量の発注を固定的に行う分、大きな要求をする。高い品質の安値の両立をせねばならない。そのしわ寄せを受けるのは現場で働く作業員である。一様にユニクロが悪いとは言えない。そのような働き方を強いているのは工場である。ただ、その背景にはユニクロという大企業の圧力がある。ユニクロの発注によって不幸な働き方が生まれているのだ。その一方で、世界No.1アパレル企業のZARAの生産体制は全く異なる。

    *同じSPA企業でも平和な働き方を実現するZARA
     本書によると、ユニクロとZARAの違いは3つある。「一つは、ゆにくろに比べるとZARAは価格設定が上である点。もう一つは、商品開発のスピードである。ユニクロが商品開発から店舗に並べるまでに平均で一年かかるのに対して、ZARAは最短で同じ工程を二週間で行うことができる。三つ目は、ZARAは少量多品種の品ぞろえをしている。ユニクロが年間1000番目の商品を作るのに対して、ZARAは一万を超える品番を作る」このZARAの特徴を実現する背景には、平和な働き方がある。服のパタンナーや生産工場もできるだけ自社で管理するのである。ファッショナブルな服を超スピードで実現するには、それが一番いいのである。この垂直統合によって、発注先に対して安く買いたたくことはない。工場運営も自らがしているからだ。生産拠点も自国の一か所にまとめることで、ロジスティクス上も効率が良くなる。「ZARAの全商品はいったんアルテイショの物流センターに集まってきます。在庫管理は一か所で行うのがロジスティクス業務の基本であり、われわれはその基本に忠実に行っているのです。」
    ※ZARAもすべての商品を自社工事で作っているわけではない。定番商品については外注をおこなっている

    ●本のイマイチな点、気になった点
    *「『努力します』『考えます』では許されない」こと自体は問題ではないと思う
     本書では、柳井氏の厳しい統率状況を表すフレーズとして「「『努力します』『考えます』では許されない」」が扱われる。ただ、このフレーズ自体はまっとうである。上司への行動プランを説明する際の発言としてはふさわしくない。何も中身が伝わらないからだ。問題は別のとこにある。それは無理難題を目標として課すということであろう。どうあがいても達成できそうにないことをやらせるから、部下の思考は停止する。結果として出てくる言葉は「考えます」になる。これは健康的ではないし、建設的ではない。ユニクロ式マネジメントの不健康さは、この柳井氏が自身のマッチョイムズムを強制することにあるのだ。

    ●学んだことをどうアクションに生かす
    *ハートの人材育成をする人を目指します
    *もし自分が操業するなら、生産から販売まで不幸な人を生まないよう気をつけます

  • 後継者のいないユニクロ
    コストダウンは中国の会社を疲弊されるだけ
    作っても作っても彼らの時給はあがらない仕組み
    ライバル達は中国の安い単価にたよらず服を作る仕組みを構築した

    ブラック企業の取材。店長は残業なして開店前から開店後まで勤務、年収600万円。マニュアルを守らないと本社スタッフからチェック。社長は外から雇った執行役員を次々解雇
    会長から社長に戻り後継者がいない。2020年売上5兆円
    フリースのヒットも、ブームが終わり売上減。回復させた社長も翌年マイナス成長で解雇。ブラジャーヒットの仕掛け人も解雇。メンバーの中に優れた人だいた。なのに成功を独り占めしたから。ユニクロ1号店の出店は父が大反対
    筆者は訴えられた。
    ユニクロは2018年度最高益。ユニクロは種類が少ない
    強豪H&Mは種類豊富。自分の工場で作るので店の売れ筋をすぐに工場に反映可能。ユニクロは工場を持っていあないので材料を安く購入することに特化

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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