ヤクザと原発 福島第一潜入記

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著者 : 鈴木智彦
  • 文藝春秋 (2011年12月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163747705

ヤクザと原発 福島第一潜入記の感想・レビュー・書評

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  • 「原発はタブーの宝庫。だからオレらが儲かる」ある地方の暴力団組長が発した言葉と実際に現場に実を置いた筆者だからこそ書ける衝撃のノンフィクションです。作者のジャーナリストとしての姿勢に敬服します。

    溝口敦氏とともにヤクザ取材の第一人者である筆者が福島第一発電所に作業員として潜入取材しながら『ヤクザと原発』というともに巨大な矛盾を抱えた存在について文字通り『体を張って』紡ぎだされたルポルタージュであるといえます。

    正直なところを申し上げますと、原子力産業にヤクザ、現在で言うところの暴力団、もしくは反社会勢力といわれる存在が根深く介入しているという現実はその半生を『原発における労働者被曝』という問題に捧げた写真家の樋口健二氏の著作やYoutubeにアップされている講演集のいくつかに目を通していたおかげで『存在』そのものに関してはこの本に目を通す前にある程度把握していましたが、「フクシマ」の原発事故で原子炉がメルトダウンしたと同時に『暗黙の了解』として『黙認』もしくは『隠蔽』あるいは見向きもされなかったこの問題に光が当たったのではなかろうか?というのが僕の解釈であります。

    さらにいうと、この本を読む前に筆者が出演していたインターネット上の番組、具体名を言うとニコニコ動画ですとか、外国人向けの記者クラブなどでこの問題を語る筆者の動画や、実際に作業員として現場に入ったときに持ち込んだといわれるカメラで撮影した現場の様子や作業時の様子を見ることができたのはひとえに筆者のジャーナリスト魂、というべきなのかはたまた『無謀』というのか…。とにもかくにも東電社員などに後に脅されたといわれるそれらは貴重な映像であり写真でした。

    少し話しはずれてしまいましたが、筆者が『ヤクザと原発』の関係について自ら作業員として就職して現場に入るまでにページの半分近くが費やされて語られている、ということにこの問題の根の深さや現場の混乱。そして、筆者の覚悟、というものを感じることが出来ました。現場に入ってからの筆者は他のベテラン作業員と違って特別なスキルがないので文字通り『雑工』一般の建築現場で言うところの『手元』として作業をします。その際には防護服の息苦しさと熱さで倒れそうになって全身汗まみれでであったということや作業前に飲んだ飲み物のせいで失禁してしまったこと。やけくそで行きのバスにかかっていたAKB48の『会いたかった』という曲を大声で歌いながら作業して怒られていたときの話がとても印象に残っております。

    さらに筆者は原発作業員から話を聞くために彼らを誘って飲み屋を何件もはしごしたり、『空前のバブル』に沸く近隣のソープランドにいって中で働く『おねいちゃん』に取材を敢行。しかし、彼女たちと『入浴』しないでただ時間いっぱい彼女たちから話を聞くだけ聞いてきちんと料金を払って帰る、ということを繰り返した結果、店の有名人となり、経営者の女主人からサービスで出前を頼まれていたりする場面に、文字通りここが『戦場』なんだということを感じてしまいました。実際の戦場でもこういう『歓楽街』が活況だという話は小耳に挟んだことがありますから。映像で筆者はこの作品を世に問うて完全な赤字だったとおっしゃっていましたが、下世話ことをあえて承知で申し上げるとこういう取材が重なったこともその原因のひとつであるとにらんでおります。

    だからこそ貴重な情報。例えば現場作業員のヒエラルキー。メーカーの『縄張り意識』。実際に働く作業員が放射能などの情報に疎いということ。『フクシマ50』といわれる人間の中にも暴力団がいたという話…。などの話が聞けたのかも知れませんが…。つづられているのは恐ろしいまでに生々しいまでの事実のオンパレードが続き、ページをめくる手が汗でべっとりとにじみました。結局筆者はマスコミの人間だということがバレ、『東京から通っているから』という表向きの理由でお役ごめんとなるのですが、この本はそんな生々しい体験を経ること無しには決して生まれるものではなかったと思っております。

    この本の最後のほうに記されているとある組長の言葉を紹介します。
    「ヤクザもんは社会のヨゴレ。原発は放射性廃棄物というヨゴレを永遠に吐き続ける。似たもの同士なんだよ。俺らは」
    この言葉の中にこの本の全てが集約されていると感じずにはいられません。

    追記として、筆者とともに現場で働いていた同僚の一人が2012年に入って初めのころに心筋梗塞で亡くなられたそうです。この場を借りてご冥福をお祈りします。合掌。

  • 原発という、どこか後ろめたいところがあるものに、やはり表立って活動できないヤクザが食い込んでいる様子を、福島第一原発の作業員として潜入しての取材。
    生臭いというべきか、必要悪というべきか、それでもあんまり関知しない電力会社やプラントメーカーが悪いというべきか。なんとも言えない舞台裏を見せられた感がある。

  • 暴力団専門ライター鈴木智彦氏が体を張って、福島原発事故後に潜入。お金も身も削って実際に現場に働いて得た情報が
    この価格で読めるなんて…。一般の私たちには決して届かない話がてんこ盛りだった。

  • 暴力団専門ジャーナリストの著者が、原発作業員として事故後の福島第一復旧作業に潜入したルポ。
    あくまでも作業員目線でのルポだけに、それは違うだろうとツッコみたくなる箇所もチラホラ。現場にいるからこそわかることもあれば、現場にいるからこそわからないこともあるのだろう。
    なんにしてもフクイチ内部の状況を伝えた数少ないルポとして貴重。

  • 福島第一原発の事故後作業員としてマスコミ関係者として潜入に成功。被曝しながらの命がけのルポである。
    最も衝撃的だったのは最後の最後第二原発の汚染の程度を書いた部分である。第2原発はぎりぎりセーフだったと聞いているが、本当にぎりぎりだったことがわかる。
     本書のタイトルはヤクザとついており、著者も長年ヤクザ関係のルポをしてきただけあり、今回もヤクザルートでの潜入となったのだが、実は本書はヤクザヤクザしていない。むしろ原発原発である。
    原発というものがいかに嫌われ者でかついかにお金を生み、そして他の巨額の公共工事と同じ性格をおびているかがわかる。
    税金がドンッと投入されるところに政治家もヤクザも地元財界も参集するそれだけのことである。
     そして原発は経済的弱者をつくり、経済的弱者により支えられ、メーカーもお国のためにやっているという矜持だけが支えとなり、誰のためにもならない原発がつくられていたのであった。

  • 著者の鈴木智彦はヤクザをシノギとする、というかヤクザ専門ライターとして「潜入ルポ ヤクザの修羅場」や「ヤクザ1000人に会いました」などの著書で興味深いその筋の世界を描いている。その鈴木が今回選んだテーマは原発で、ヤクザやその関連企業がどのように原発村に食い込んでいるのかの実態を探るべく福島原発が事故を起こした直後から原発作業員としての仕事を探し、そして福島第一(通称「1F」)に作業員として入り込むことから始まる。

    昨今の法律で暴力団関連企業との取引を厳しく締め出そうとしているが、取締りの実態は「西高東低」で特に福島を始めとする東北では殆ど手付かずと言う。暴力団関係者が役員に名を連ねる「無防備」な企業でさえもが地元の血縁・地縁をベースに地域の一部となっているので排除はされていないし、非常事態にある福島では作業への影響を考慮すると排除することも叶わない。取材・現場仕事を通じて背中に彫り物のあったり、自ら代紋をちらつかせる人間を多数居ることを指摘しているが、決定的な証拠などは本書のなかでは明かされては居ないのでやや食い足りなさがある。

    但し、ヤクザの関わりそのものよりも本書の一番の読み応え部分は原発作業員と作業環境の実態部分のレポートだ。

    「福島50」と持てはやされている作業員の一人への取材では、「日本を救う」「尊敬する社長のため」死をも厭わず現場作業へ志願した人間の不思議なまでの「高揚感」に戸惑いを覚える一方で、取材のためと言いながら渦中の1Fに飛び込む直前には自らの心に同じような「高揚感」が湧いてきたと告白している。

    酷暑のなかで現場作業は熱射病の初期症状が出たり辛かった一方で、心配した被曝のほうは約一カ月間で放射線管理手帳上では2ミリシーベルト、自身が持ちこんでいた線量計では0.76ミリシーベルトだったと。しかしながら後日取材を続けると問題は空間線量ではなく「汚染」だというのだ。一旦地面に落ちた放射性物質は風が吹いたり車が通るたびに舞上がりそれを吸うことで大量の内部被曝をしてしまうと言うのだ。事故前の1Fでは汚染リミットは最大で180カウント(180cpm=3bq)だったが、実際の作業環境では平時の100倍強である数万カウントまで上がっているという。従って放射線のプロは怖がって誰も行かないので、現場の放射線管理者は素人をにわか教育で送り出しているのだと。

    そして福島第二の建屋内の汚染が異常なまでに高い、原子炉を設置する台座部に水が溜まっているとの情報もあるようだ。取材に対して東電は口をつぐんでいるようだが、ひょっとすると第二までもが地震により配管や原子炉に損傷があるのかも知れない。

    図らずもヤクザの取材に行って原発の言うに言われ得ぬ深い闇を覗いてしまったようだ。

  • 大小問わず、利権のあるところヤクザあり。なので、事故後の
    福島第一原発の現場の作業員集めに、その筋の方々が絡ん
    でいるとの報道があった時、別段驚きはしなかった。

    まぁ、あるだろうねぇ。くらいの感覚だった。勿論、事故以前にも
    用地買収等に関係しているんだろうなぁ…と。

    本書は「福島第一原発の事故収束現場にヤクザがいるぞ」と
    聞き及んだ著者が、作業員として潜入を試みたルポルタージュ。

    なんだけどさ。潜入するまでが長いよ。しかも、潜入記の部分は
    100ページあるかないか。おまけに途中で正体を怪しまれてる。
    大失敗の潜入記である。

    そもそも、原発マネーとヤクザの関係を追うのにわざわざ潜入
    するという手段を取らなくてもよかったんじゃないの?

    何をルポしたかったんだろうなぁ。事故収束現場の現状?
    旧知のヤクザとのやり取り?焦点はなんなのよ~~~~。

    あの原発事故関係の作品は数多出版され、そのうちの何作
    かは読んでいる。そのなかでも本書は駄作の部類かも。

    『原発ジプシー』も『原発列島を行く』も読まずに現場へ行った
    のかな。

    潜入記部分も物足りなかったけど、そこへ辿り着くまでの長い
    長い部分が読んでいてイライラした。多分、この人、文章が
    下手なんじゃないか。暴力団専門ライターらしいけどさ。

    このタイトルをつけるのであれば、もっと違ったアプローチが
    あったはずだけどな。あ~あ、勿体ない。読んだ時間が。

  • ○ルポライターの鈴木智彦氏の著作。
    ○暴力団関係のルポを得意とする著者による、福島第一原子力発電所事故処理に関わる暴力団組織の役割について、自ら潜入調査をすることでルポにまとめたもの。
    ○徹底した取材で、原発に関わる人々の裏も表詳細に描いている。
    ○時系列で記載されているため、潜入前の下りなど、やや冗長な部分も多いが、原発を取り巻く状況について知るには大変面白い。

  • 実際に原発作業員として潜入し、あくまで作業を第一に考えつつも
    同時に取材をしていく。

    当然に被ばくすることになるため命がけの取材であり、その点に感服せざるを得ない。

    考えさせられることは、原発に関係する人々はそれぞれの事情(正義)を持っている、ということである。それが東電だろうが下請けだろうがヤクザだろうが。

    原発廃止~やら原発推進~を議論するには表面だけ考えるだけでなく、現実問題に対してどう落とし所を見つけなければいけない。

  • 結局はあらゆる利権にヤクザが群がってるんだなという印象。
    原発作業員にヤクザがいるという噂のウラを取りに行ったけど、あらゆる縛りで、わかったことを全部書くことが出来ないというジレンマが感じられる文章。

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「原発はタブーの宝庫。だからオレらが儲かる」某地方の暴力団組長。暴力団専門ライターが実際に働いたからこそ書ける原発という巨大なシノギ。命懸けの衝撃ノンフィクション。

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