藝人春秋

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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163759104

作品紹介・あらすじ

北野武、松本人志、爆笑問題…ほか、芸人たちの濃厚な生を描き切る渾身のルポエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • R3.4.10 読了。

     甲本ヒロトさんと石倉三郎さんと草野仁さんと稲川淳二さんの章がとても良かった。
     この本の中で昔あったテレビ番組で目にした「熱湯風呂」について書かれていた部分が衝撃的だった。
    『熱湯風呂なんてのは、全部ヤラセの演出なんで、本当に何十度もある熱湯だったら、みんな大ヤケドしてるぜってね。ぬるいお湯をいかに熱く見せるかという、そのリアクションの芸がお笑いの芸なんだから。熱さを芸で見せるってのがわかってないんだよな。…(中略)今は親までが本気でやっていると勘違いしているから本当にバカなんだよ。』
    当時、テレビの前で笑ってみていたが、その芸にすっかり騙されていたことに、この年齢で気づかされて恥ずかしい。

    ・「楽しいことは楽(ラク)じゃないんだよ。同じ字だけど、よく勘違いしている人がいるんだあ。」
    ・「辛抱ってのは、辛さを抱きしめるってことだからな。」
    ・「学校のいじめは個性を消すが、お笑いのいじりは個性を生かす!」

  • 浅草キッドの水道橋博士が、芸人を主に様々な人について書いたエッセイ。2012年の発行で文自体の初出は2001年や2002年など。その後の状況が変わっている人もいて、興味深い。

    湯浅卓、苫米地英人など辺りは、どのへんにスタンスを置いているかが、ちょっとわからなくなる感じもあるが、話的におもしろい。草野仁の逸話などビックリネタもあればあるほど稲川淳二の話は、考えさせる。

    また、いじめ問題を扱ったところは、お笑いのいじりといじめの関係、石原慎太郎と太田光のやりとり、最後の伊集院光とピエール瀧の会話と読み応えがある。

    そして、引用されている
    「世界は、遊びとはいえない殺し合いのようなキャッチボールなんだ」
    という大槻ケンヂの言葉が、今の状況にしっくりくるように思った。この本で使っている意味とは、ちょっと違い、一般的にもこのようなところが出てきていると感じる。
    なかなかにいい本でした。

  • 芸能人って、異常者。それの集まってくるものは一般の常識なんてクソくらえ、売れる芸人と売れない芸人は紙一重。良い例がこの本にもでてくる堀江貴文さん、億万長者、時代の寵児と言われても監獄暮し。

    この世のものとは思えぬあの世。非日常への限りない渇望。本来平凡で安全な日々とは違う芸能界、それを生業とする芸人は日常とは隔絶されている。

    そんな世界とは、言えなくなった、許さなくなった、糾弾される芸人さん。
    でも時代って恐いですよね、政治家さんにも言えること、価値観のズレ、これを感じないと聞く耳を持つとか言ってる場合ではなく、裸の王様、まさに時代遅れですよね。

  • 有吉弘行氏いわく「ゲス神様」こと水道橋博士。
    その彼が「あの世」の如き芸能界を生きる十五柱もの神将たちを語った、笑いのカーマ・スートラ。

    殿・ビートたけし(北野武)はもちろん、松本人志、太田光、テリー伊藤、そのまんま東、ポール牧、石倉三郎、稲川淳二、草野仁、古館伊知郎、果ては三又又三、湯浅学、苫米地英人、堀江貴文なんて人たちまで。そして甲本ヒロトが二度も登場。
    この分類し難いパンチの効いた人選は、さながら芸能魔界紳士録と言った風情。

    なかでも甲本ヒロトがかっこいいのは当然として、意外にもと言っては失礼だが、いかにも昭和の芸人といった風のポール牧、石倉三郎、両師匠の「芸談」が男前でしびれた。
    目次を見て「なんでラストが稲川淳二?」と思ったが、読んで納得。あまりにも求道的な男の生き様に涙。
    硬軟織り交ぜた語り口で描かれる芸人達の人生に、一つとして同じものはないが、ポール牧さんが色紙に揮毫したといわれる言葉を借りるならば
    『どうらんの下に涙の喜劇人』
    これは誰しもに共通することだろう。

    その他にも立川談志、伊集院光、ピエール瀧らのエピソードもチラリ。ピンと来る人にはグッと来るメンツ。

    グイグイ読めてとても面白かったが、博士一流の愛にあふれた「お下劣」な表現とエピソードも満載なので苦手な方は要注意。

    あとがきに代えて書かれた、本物の紳士、故・児玉清さんとの逸話は貴重。氏の人柄が偲ばれるいい話だった。

  • そのまんま東(東国原英夫)、甲元ヒロト、石倉三郎、草野仁、古舘伊知郎、三又又三、堀江貴文~フジテレビ買います~、湯浅卓~ロックフェラーセンター売ります~、苫米地英人~ロックフェラーセンター買います~、テリー伊藤、ポール牧、甲元ヒロト再び、爆笑“いじめ”問題、北野武と松本人志を巡る30年、稲川淳二

    目次だけでも圧巻。にわかに信じられないようなエピソード満載でハカセの記憶力と記録する力には心底驚かされた。
    2022年4月、維新の松井一郎大阪市長は水道橋ハカセのTwitter投稿を理由に訴えたけれど、記録マニアのハカセ相手にどうなることやら。

  • 「俺のほうがより凶暴で、俺のほうがよりやさしい」
    北野武が松本人志のことに触れて発したのがこのフレーズらしいが、すごく惹かれる言葉だ。
    このフレーズを紹介しているブログを見てこの本を手に取った。

    さまざまな人を取り上げていてどの項目も見どころがあるが、特に面白かったのは最後の稲川淳二の項目。「『たけしとひとし』の項目だけでも読むか」と思って読み始めたが、その次のこの稲川淳二の背景に迫った項目がなかなか読ませる。この項目が面白かったから最初から通して読むことにした。
    水道橋博士をちょっと舐めてたんだけど、なかなかいいこと書いてて見直した。

  • 博士が出会った芸人達を描いたエッセイ。
    実は、こんな人だったんだというのもあり、ぶっ飛んだエピソードもありで面白い。でも、なんか自己陶酔っぽい感じが引っ掛かるな・・・

  • 芸人が少ない! というのは置いといて、芸能界の異能力者たちの列伝といった趣があって楽しい。


    水道橋博士さんの番組は、かつて『博士の異常な鼎談』とかを楽しみに観ていて、その「変な人」を活かす手腕には舌を巻いたけれども、今作ではそれが文字情報になっていて、ムチャクチャなエピソードの数々が惜しげもなく披露されていてとても読み応えがあった。


    ちょっと意外だったのは、岡山出身でブルーハーツやハイロウズの甲本ヒロトと同じ中学に通っていたということで、そのエピソードはちょっと読んでて涙腺が刺激されまくりだった。心に師匠を抱えている人の話や、中学の頃は疎遠だったのが、縁によって再開して、最初はスターダムの度合いに差があったけれども、それがどんどんなくなるところとか、時代の流れみたいなところを強く感じさせられた。あと、巻末の『龍馬伝』の児玉清を観た博士の子供が言う言葉とかも、涙がどんどん出てきた。


    個人的に面白かったのは、芸人を採り上げた話よりも、テレビの周辺で蠢く「芸人ではないけれども異能の持ち主」たちの話。草野仁、ホリエモン、湯浅卓、苫米地英人、テリー伊藤のエピソードは最高すぎる。湯浅卓と苫米地英人のシンメトリーな構造とかも上手いし、テリー伊藤の情景が目に浮かぶようなテレビ業界の一人修羅場とか、読んでて笑い転げてしまった。


    湯浅卓はテレビに出ていたのを観て「胡散臭い人が出てきたな~」と思っていたけれども、希有壮大なホラ話かと思いきや、意外にバックボーンがしっかりしている人なんだな~とはじめて知った。でも、あの苫米地英人と同じことを言ってる(というのは博士の文章操作もあるだろうけれど)のを読んで、アメリカでバチバチやりあうにはこういうデカくて希有壮大な山師的発言をしてこそ、あそこでは大きな仕事を任せられるのかなぁ……と、映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』なんかを思い出した。


    でも、やっぱり採り上げられている人数が少ないかな~と思った。もっといろいろな列伝が語れるはずだし、ちょっと(章立てをはじめとして)散漫なところが垣間見られたので、この本の評判を勢いに、本腰を入れて『芸人春秋』の先の『芸人史記』や『芸人三国志』を書いてほしい。

  •  落語が好きということもあり、もともとお笑いには興味があったのですが、この本を読んでさらにこの世界を奥深さを知れた気がします。北野武、松本人志、爆笑問題……、彼ら芸人たちの生き様、価値観、等々が、水道橋博士の味のある文体で綴られている、中身のつまった一冊です。なにより、水道橋博士が「芸」というものにどれだけ人生をささげているのかが、読んでいると伝わってくるんです。すごいなあ、と思いました。芸人ってすごいなあ。

  • 芸人本で、この迫力。
    博士のメルマガでこの本の舞台裏を読んでいたので、本を一冊、丁寧に仕上げるという努力がどれだけ大変なのか、が分かった。
    だから、一つ一つの文章の完成度はとても高い。

    各所で絶賛されている稲川さんや他芸能人の話ももちろんだが、
    やっぱりバブル(お金持ちの意味)の象徴、堀江さんと湯浅さんの話が時代とスケールの大きさと笑いを感じて好き。
    お金持ちこそ、突きぬけたお笑い感覚を持った方が見栄えがいいですね。

    また要所要所で触れられる、芸人の上下関係の厳しさ。鉄拳制裁ありありの中で、上に登りつめるということがいかに厳しく、そのプロの中のプロたちがいかに凄いのか、いうことをアメとーくプロデューサーの著書「たくらむ技術」と合わせて読んで実感。
    芸人って、凄いんだよ!

    「男の星座」よりも格闘ネタが少なくなっているので(これも時代ですね)、博士=格闘技ネタと感じている人にも安心の一冊。

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著者プロフィール

1962年岡山県生まれ。ビートたけしに憧れ上京するも、進学した明治大学を4日で中退。弟子入り後、浅草フランス座での地獄の住み込み生活を経て、1987年に玉袋筋太郎と漫才コンビ・浅草キッドを結成。1990年のテレビ朝日『ザ・テレビ演芸』で10週連続勝ち抜き、1992年テレビ東京『浅草橋ヤング洋品店』で人気を博す。幅広い見識と行動力は芸能界にとどまらず、守備範囲はスポーツ界・政界・財界にまで及ぶ。メールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』編集長。
主な著書に『藝人春秋3 死ぬのは奴らだ』『藝人春秋2 ハカセより愛をこめて』『藝人春秋』(文春文庫)、『はかせのはなし』(KADOKAWA)ほか。
浅草キッドとしても『お笑い 男の星座2 私情最強編』『お笑い 男の星座 芸能私闘編』(文春文庫)などの著書がある。

「2021年 『藝人春秋Diary』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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