マインド・コントロール

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163760605

作品紹介・あらすじ

理性的な若者をカルトに引き込み、テロリストに変貌させるマインド・コントロール。しかし、その技術は彼ら反社会的集団だけのものではない。心を操る技術は、国家的な規模で研究されてきた長い歴史を持つのだ。パブロフが先鞭をつけ、CIAも追随した、行動を操る技術。人をある種の極限状態に置き、意のままに動かすこの技術は、反体制的な人物をコントロールするため、かつて東側諸国の国家機関が利用した。一方、フロイトに代表される心理療法は、その後、天才催眠療法家ミルトン・エリクソンがその技術を大きく発展させた。心を気づかれないうちにある方向へと誘導する「イエス・セット」や「ダブルバインド」などの技法は、エリクソンが考案したものだ。これらの技術の集大成は今、広告戦略や怪しげな人心誘導術として"民間活用"されている。著者は、パーソナリティ障害や依存症の治療にも通暁した精神科医。本書では古今東西の事例を辿りながら、その正しい原理と解毒法、そして人の心を支配するタイプ、されやすいタイプなどについても分析を試みる。

感想・レビュー・書評

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  • マインド・コントロールの歴史、手法、更には脱却と、このテーマに関してあらゆる側面から記載されていて、この一冊だけでも本テーマに関する知識を沢山仕入れることが出来ました。マインド・コントロールと聞かされると悪いことに使われるイメージが強いですが、使い方によっては仕事の成績を上げることも出来るのではないかと思えるようになりました。
    実際、この本に書いてある技術を使えば本当にマインド・コントロール出来るようになるのではないかとも思われます。それだけ、人の心理を操作するのは簡単なことなのかもしれません。

  • 読書録「マインド・コントロール」3

    著者 岡田尊司
    出版 文藝春秋

    p24より引用
    “ ところが、純粋な理想主義者が抱えやす
    い一つの危うさは、潔癖になり過ぎて、全か
    無かの二分法的な思考に陥りやすいというこ
    とである。二分法的思考においては、完全な
    善か、さもなくば完全な悪かという両極端な
    認知に陥ってしまう。”

    目次から抜粋引用
    “なぜ彼らはテロリストになったのか
     マインド・コントロールは、なぜ可能なのか
     なぜ、あなたは騙されやすいのか
     無意識を操作する技術
     マインド・コントロールと行動心理学”

     精神科医で作家である著者による、人の心
    を思うように操る方法やその事例を記した一
    冊。
     人がテロリストになる背景からマインド・
    コントロールから解き放たれる方法まで、世
    界で起きた悲惨な事件を例に上げて書かれて
    います。

     上記の引用は、実際にあった集団自決を起
    こした団体について書かれた項での一節。
    分かりやすい答えばかり求めるというのは、
    危ないことなのかもしれませんね。
    何となくモヤモヤとした気持ちが続いたとし
    ても、はっきりと答えを出さずに様子を見る
    ことも、時には大切といったところでしょう
    か。
     具体的なマインド・コントロールのやり方
    なども書かれていますが、興味半分で人に試
    したりしないように。
     何となく、ある人にいいように扱われてい
    る、そんな心当たりがある人は、一読の価値
    はあるでしょう。誰よりも自分の味方だと
    思っていた人が、この世の中で、一番自分に
    対して邪悪な存在だったと気付いたとしても、
    落ち着いて行動した方が良いと思います。

    ーーーーー

  • マインドコントロール,洗脳関係といえば苫米地さんが有名ですが,
    彼の本は面白いのだけれども,胡散臭さが半端ない。

    本書は,苫米地さんとは違い,
    ある程度,距離を取った書き方をしているので――
    もちろん,恣意的な部分もある――,好感が持てる。

    内容も面白いし,文章も読みやすい。
    テレビばかり見ている人は,取り合えず,
    本書を読んでみるといいんじゃないのかなぁ…。
    少しは目が覚めると思います。

    やけに文章が上手いなぁ…と思っていたら,
    小笠原慧のペンネームで小説を書いているんですね。
    しかも,『DZ』(角川書店)で第20回横溝正史賞を受賞している。

  • 一貫して語られるのは、主体的な思考の重要性と、それを奪うことがマインドコントロールの本質であること。無意識や行動の心理学の観点から補強される要素の説得力が心に突き刺さる。
    パブロフ、エリクソン、リフトン、メスメルからフロイト、ユングなどをマインドコントロールに絡めているが、一貫性がありなるほどと思わされた。

  • 恐ろしい、の一言である。人間の中に、どうして世にも恐ろしい残虐なことが行えるような人がいるんだろうと言う疑問について、少し理解が深まったように思う。そして、それらに洗脳されてしまう人の特徴、洗脳の流れについてが研究結果とともに綴られている。この本が悪用されないことを願うばかりである。

    単に覚醒剤や情報コントロール、催眠を行うだけでなく、人間の全感覚を一定期間全て遮断することが、すぐに異常状態になってしまうということは興味深くも恐ろしい事実。私たちの生活に適度のノイズがあることは、わたしたちを正常でいさせてくれることの一助となっているようだ。

    カルト集団やテロリストたちが洗脳を駆使するだけでなく、本来治療する側である過去の精神科医たちまでもが、治療と呼ぶには憚られるようなある種虐待とも取れるカルト集団紛いの内容は、残虐極まりない。

    以下メモ
    ・依存性パーソナリティの人は、自分で自分の人生を決断し、切り開いていくのではなく、誰かが何か良い方法を教えてくれるのではないかと期待し、人生のことも人任せであるため、相手の助言に素直に耳を傾け、簡単に誘導されてしまう。

    ・ オキシトシンは、抱っこや愛撫といったスキンシップによって分泌が高まり、抗不安作用や、抗ストレス作用を持ち、また免疫系や、成長ホルモンの働きを活発にする。

  • マインド・コントロールという自発的な心理変化・行動を促すことよりも強制的に心を操る洗脳の話がメイン

    洗脳の歴史や手法が面白くて参考文献も読もうと思った

  • 教育とは、洗脳と同義である、なんていうわかったような言葉がある。似たようなところはあるのかな、なんて思わないでもない。しかし本書を読むに、洗脳、マインドコントロールとは自分の頭では考えられない方向に動くものだ。対して本来教育というのは、自分の頭で考えられる力をつけるように働くものではないのか。であれば、似て非なるものだと思う。

    愛情やつながりを求める気持ちと、自分の存在や価値を認めてもらいたいという思い。つながりと自分の価値に対する欲求が、人間の二大欲求であり、そこをつかれるとマインドコントロールされてしまう。そうしたメカニズムは知っておいた方がいいだろうな。俺も簡単に洗脳されそうだし。

    ヘブの実験とか、教科書で読んだ話とかたくさん出てきた。そうした研究が洗脳という文脈で、どのような働きをしてきたか。面白かったし、いろいろ考えさせられたな。

  • マインドコントロールというとカルト宗教やテロリストを思い浮かべるかもしれないが、それら組織はもちろん国家や民間企業、あらゆる組織が程度の差こそあれマインドコントロールの技術を無意識的なものも含めて取り入れている。本書ではその技術がどのように発展してきたかを紐解きつつ対処法も紹介している。知識の有無はここでも大きな差をうむ。知こそ最大の防御か。

  • ・「トンネル」の仕掛け。外部の世界からの遮断と、視野を小さな一点に集中させるということだ。トンネルの中を潜り抜けている間、そこを進んでいく者は、外部の刺激から遮断されると同時に、出口という一点に向かって進んでいるうちに、いつのまにか視野狭窄に陥る。
    ・後戻りをさせないための仕掛け。その一つは、テロを実行する前から、その人を「英雄」として扱うことである。崇拝されている指導者が一緒に食事をするとか、死後を公開するための遺言をビデオに撮るとか、彼のために記念碑を建てるといったことが行われる。また、家族も「英雄」を生み出した一家として栄誉と経済的優遇を受ける。すでに彼の死は既成事実となり、独り歩きを始めている。いまさら止めるとはいえるはずもない。英雄らしく、家族や仲間のために使命を全うするしかないのだ。
    ・ダブルバインド:何かをやってほしいとき、それをやるかやらないかではなく、やることを前提とした選択肢を用意して、質問するというやり方だ。選択肢が提示されるのだが、どちらを選んでも、結局同じ結果に誘導されることになる。例えば、子供に勉強をさせたいときに、露骨に「勉強しなさい」と言ったところで、あまり効果はない。強要されたと感じると、人は本能的にそれを抵抗しようとする。「国語と算数とどっちからやろうか?」「宿題、ママと一緒にやる?それとも、一人でやる?」と訊ねると、子供は、大抵どちらかを選び、すんなりと勉強に取り掛かれる。
    ・とにかく、「~する」と答えさせることが重要なのだ。自分から「する」と意思表明をすると、行動への抵抗は突破されたも同然なのである。
    ・イエスセット:相手が、イエスと答える質問をしていくことで、信頼性が高まり、最終的な質問にも、イエスと答えるように導くという技法。
    ・こちらの困っている状況を描写して、こちらの立場に視点を切り替えさせ、同情をひきながら、話の糸口を見つけることもできる。どちらも、相手が抵抗していることを、否定的には受け止めず、むしろ経緯を払っているということだ。抵抗は、抵抗すると、さらに強化されるが、そのまま受け入れられ、敬意を払われると、逆に弱まる。こうした揺さぶりをかけると、最初はかたくなに抵抗していた人も、無血開城に至るものだ。
    ・例えば、禅宗の修行でも、導師が弟子に対する接し方は、きわめて理不尽で、ほとんど無意味な虐待に近いという。その理不尽さと虐げることに意味があるのだ。新しい境地にたどり着くには、もっともらしい知識や肩書など何の役にも立たず、赤子のように無力だと感じる極限状況が必要なのだ。宗教的修行と洗脳が、紙一重の行為であり、解脱も洗脳も、そこで起きていることは、既成の価値観の消去だという点では共通するのである。
    ・「愛情爆弾love bomber」と呼ばれる手法では、集中砲火を浴びせるように、信者たちが入信候補者に対して、「愛してます」と言い続ける。照れくさいような気持ちとともに、自分が受け入れられ、大切に扱われているという感情に満たされるようになる。自分をこんなにも愛してくれる存在が、悪い存在であるはずがないと、理性よりも本能がそう思うのだ。
    ・マインドコントロールの問題は、結局は自立と依存の問題に行きつく。そこで問われるのは、我々がどれだけ主体的に生きることができるか、なのである。

  • 時代や文化が変わっても、マインドコントロールの手法は常に似通っている。こわいのが、マインドコントロールを解く方法もマインドコントロールだということ。教育やしつけ、スポーツ選手の育成も、ある意味マインドコントロール。何ごとも、いいことと悪いことがあるんだなぁ。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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