笑い三年、泣き三月。

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著者 : 木内昇
  • 文藝春秋 (2011年9月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163808505

笑い三年、泣き三月。の感想・レビュー・書評

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  • 戦争直後の上野浅草界隈の様子が良く描かれている。
    ミリオン座というストリップ劇場とそこで働く男女の人情ドラマ。

  •  図書館より。
     戦後間もない浅草を舞台にした群像劇。

     主な登場人物は東京で一旗揚げるため上京してきた善三、その善三と行動を共にすることになる戦災孤児の武雄、ひねくれ者の復員兵の光秀、彼らは浅草のストリップ小屋で働くことになるのですが、そこの踊り子ふう子と4人で共同生活を送ることになります。

     初めは善三の考えの甘さや光秀の嫌味っぷりが鼻についたりということもあったのですが、読んでいくごとにそれが登場人物たちの魅力に置き換えられていきました。

     戦後すぐの復興期、何かを失った人たちが懸命に生きていく姿や、善三が武雄のことを”坊ちゃん”と呼び続ける姿など、その時代を知らない自分にもどこか懐かしさを感じさせる筆勢でした。どことなく『always 三丁目の夕日』を彷彿とさせる感じです。

     時代描写もやはり上手です。4人の他人の共同生活の様子や闇市や当時の浅草の劇場や観客たち、そして特に卵かけごはんに大喜びする登場人物たちなんかは、その時代を捉えた描写だな、と思います。

     別れの場面は絶対にジーンとくるだろうな、と思い身構えていましたが、やっぱりやられてしまいました(笑)。人間関係が出来上がる過程がしっかりと書き込まれているので、それぞれの成長と別離の切なさがしっかりと伝わってきました。

  • 木内昇(てっきり男性だと思ってたら女性だった)を読むのは初めて。
     
    戦後直後、焼け野原の浅草が舞台。浅草で一旗挙げようと流れてきた万歳芸人のおじさんと、そのおじさんをいいカモだと近づく戦争孤児の男の子。口の悪いみっちゃんに踊り子のふう子さん。4人の奇妙な共同生活が始まる。

    小劇場の支配人に踊り子たち。悪人はひとりもいない。貧しいけれど肩を寄せ合って生きる姿。当時の世相や街の様子の描写も上手い。「東京キッド」が流れるシーンなんて、じーんとしてしまった。

    4人はやがてそれぞれの道を歩む。切ないハッピーエンド。この作家、他の作品も読みたい。

  • ちょっと退屈かなーと思いながら読んでいたが、終盤一気に感動。
    善造、武雄、光秀、ふうこ、みんなと一緒に自分も暮らしているような、離れたくない気持ちになった。

    善造やふうこの素直なストレートな言葉はもちろんだけど、ちょっとひねくれた武雄や光秀の気持ちも、とっても沁みます。

    善造と出身が近いので方言はすんなり入ったけど
    なじみのない人は違った印象を受けるかも。(逆にうさんくささを醸し出して、そっちの方がいいかも?)

  • 初の木内昇さん。
    時代小説で直木賞獲ったイメージから、ちょっと難しめなのかと思いきや、文章もテンポもユーモアと軽さがあって読みやすい。
    時代の空気の描き方も、その場のにおいまで感じさせてくれるくらい。
    ホント見てきたかのような取材力。

    終戦間もない焼野原の浅草。
    小さな見世物小屋「ミリオン座」に集まったのは、古い芸しかできないオジサン芸人、人を信じられない戦災孤児、いい加減な復員兵、自称『元財閥のお嬢様』踊り子・・・。

    芸人の善造が本当に善良で、愛すべきキャラクター。
    孤児の武雄は善造を利用しようとして行動を共にするけど、善造は本気で武雄の親代わりになろうとする。
    善造が武雄のことを「こんな素敵な子はめったにおらんとです!」って全力で肯定してくれて、武雄がどうしようもなく嬉しくなってしまう、という場面があって、なんだかじんと来た。

    踊り子のふう子も、生きようとする生命力は誰より強いけれど、人を押しのけたり出し抜こうとするのではなくて、ひたすらやさしくて強い。

    あたたかさ、とか、やさしさ、とか、笑い、みたいなものが、やっぱり生きていく上では一番必要な糧なんだよね。
    どんな時代であっても。

  • 万歳芸人の善造の「坊ちゃん」への思いやりが篤くて良い。

    やっぱりこの作家さんがつくりだす空気感がいいんだろうね。
    チープなドラマになりやすい舞台のはずなのに、薄っぺらさを感じない。

    完全に自分の主観ですが、文章をにじませてる技術を感じました。

  • 終戦直後の浅草を舞台にストーリーが展開するが、そこには大きな波乱や意外な事の顛末が語られているわけではない。むしろ物語は読者の予想の範囲で淡々と進行するのだが、そこに表現される人情の機微にページを繰る手が止まらない。
    当時の社会情勢や世相、そして舞台の中心となるストリップティーズの様子が興味深く描写される。なかでも、農家への買い出しの様子や、終盤の卵かけご飯の場面が素晴らしい。前を向いて生きていこうという気にさせてくれる作品。
    キャスティングが難しそうだが、ぜひ映画化して欲しい。

  • 終戦直後、旅回りの万歳芸人、撮影所で働いていた復員兵、活字中毒の孤児、三人三様の男達が焼け野原の東京で出会い、六区の実演劇場で働きながら踊り子の部屋で奇妙な同居生活を始めた。
    笑い三年泣き三月、義太夫節で笑う方が泣くよりもずっと難しいことを言い表しています。
    荒廃した東京の街で、食うや食わずの生活を営みながら、涙を堪えてなんとか生きていく人たち。
    その逞しさ、健気さ、笑いとエロには、どこかケロリと乾いた感じが漂っています。

  • 図らずも、3月10日、東京下町に大空襲があった日に読み始めた。今年初めて、92歳の祖母から、明治座裏に住んでいた友達とその家族が東京大空襲で亡くなったという話を聞いたばかりだった。
    終戦直後の東京。大空襲で両親と兄を亡くし、路上で浮浪児として生きていた男の子が、地方から出てきたばかりの芸人のおじさんや、復員兵、その元同僚で今は浅草の劇場の支配人、ストリッパーの女性たち等と出会い、共に生きていく姿が描かれる。
    登場人物がみんな個性的で、状況としては貧しく悲惨で苦しいはずなのに、お互いに支えあったり貶しあったりしながら生きていく様は、明るく温かく面白く、でも切ない。戦争がなければ出会うこともなく、別の場所で、全く違う人生を歩んでいたはずの人たち。万歳芸人のおじさんの優しさ・真っ当さに救われていく男の子に泣かされた。
    映像化しても面白いのではないかと思った。

  • 木内昇、すごい。なんでこんな小説書こうと思ったんだろう。あらすじにしちゃったらなんもない感じなのですが読んでる間ずっと臭くてひもじくて切なくて哀しくてそして温かい雰囲気に浸っていました。そう「人が善い」なんて言葉、ずっと忘れていたな。善造なんて名前、善を造るってベタだけど、本当に神様みたいでした。最後の最後、武雄のカメラにはどんな神様が写っていたのだろう。でもこの小説の映画化やテレビ化を望む声もあるけど、でもこの読後感のまま放っておきたいかも、しれません。

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笑い三年、泣き三月。の作品紹介

戦争を生き延びた男三人。抱える事情は様々なれど安劇場にひろわれて、踊り子のぼろアパートで珍妙な共同生活をはじめる。戦後復興期、焼け跡の浅草でエロに燃えて笑いに悩む。

笑い三年、泣き三月。の文庫

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