笑い三年、泣き三月。

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163808505

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  • 戦後間もない浅草に、不思議な縁で結ばれた寄る辺のない人々が集まり、共に仕事を見つけて暮らし始めた。

    地方巡業の万歳一座を抜け出して、笑いの芸で一旗あげに上京してきた岡部善造は45歳。名は体を表すがごとく博多弁の抜けきらない田舎者丸出しの善良なおっさん。その善造をカモと見込んで上野駅で引っかけたのが、11歳の戦災孤児・タケオこと田川武雄だ。

    大衆娯楽のメッカ浅草は焼け野原。そこで出会ったのが南方戦線からの復員兵・みっちゃんこと鹿内光秀。仕事もなく屑拾いの彼を拾ってくれたのが、元カツドウ屋時代の同僚・杉浦保だ。杉浦が口八丁手八丁で開いた小さなバラック小屋が「ミリオン座」。そこを根城にエロと笑いの実験劇場がスタートする。

    作中に引用される流行歌や新聞記事に、当時の世相が表れ、否応なしにノスタルジックな気分になるのは、場所がらだけのせいではないかもしれない。

    日本人の記憶を呼び覚ます何ものかが描かれているような気がする。実に丹念に調べ上げた当時の資料を元に構築された、浅草再生の記録。
    荒んだ心が癒され、食欲、性欲、物欲の順に満ち足りていく人間の原点が書き込まれている。

著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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